【上方芸能な日々 文楽】仮名手本忠臣蔵~その3*旧ブログ

人形浄瑠璃文楽
平成二十四年十一月公演
通し狂言 仮名手本忠臣蔵 <第二部>

「文楽行ってきました!」

と、一言で言ってしまうのだけど、人形を見るのが精一杯だった10代、人形に目もくれず、床本の文字を追っかけるのに精一杯だった20代、その両方を欲張って、結局のところ筋がよく呑みこめずにフラストレーションがたまる一方だった30代…。

その年代年代で、色んな自分がいます。

そしてこの頃、「浄瑠璃を聴く」ことがようやく出来るようになった(かもしれない)自分がいます。文楽に魅せられてから30年経過して、やっとのことです。

呑みこみの早い人なら、そんなのはとっくの昔に達している地点なのかもしれませんが、なんか今、そういう境地にようやくたどりついた自分が、ちょっとうれしく感じたりもするのです…。

今回の「仮名手本忠臣蔵」、まさしく「浄瑠璃を聴く」ことを堪能しています。

もちろん、人形もしっかり見てはいますが、浄瑠璃を聴くことで、人形も今までとはちょっと違った感じに見えてくるのです。その「ちょっと違った」を具体的に説明するところまではまだたどり着いていませんが、多分、50代になれば、「これこれこういうことですよ」と説明できるようになっているかもしれません。あるいは、そんなの、別に説明できなくてもよいのかもわかりませんが…。

では、11月7日に観劇した忠臣蔵第二部の様子を。

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七段目
「祇園一力茶屋の段」

咲さんの由良助良い。平右衛門の英大夫、下手に独り語りの床、床本無しの語り。掛け合いの「間」が素晴らしい。おかるの呂勢大夫も良し。

平右衛門、おかるの再会~おかる「気絶」~平右衛門斬りかかる、、、この流れに引き込まれる。燕三の三味線、冴えてる。

「赤膏薬」「船玉様」「洞庭の秋の月」「逆縁」と、なかなか上質なエロティシズム…。こういうのん、大好き(笑)。

人形。簑助のおかる、何もかもが秀逸。平右衛門の勘十郎もキビキビしている。「水雑炊を食らはせい」で、平右衛門が斧九太夫をひょいと担ぎあげる様がカッコイイ!胸のすく思いがした観客は、万雷の拍手。

チャラい男、鷺坂伴内が、九太夫との「謎かけ仕合」で、なんたら維新の会にチクリひと刺し、これまた拍手喝采―一瞬だけ伴内、男上げる(笑)。

八段目
「道行旅路の嫁入り」
一輔が遣う小浪の舞に、一輔の父・故一暢の姿が思い浮かぶ…。和生はん、オーバーワーク気味? でも陣容も手薄だし…。

九段目
「雪転しの段」

芳穂大夫。聞き取りやすく良い語りだったが、もうひとつ「何か」ほしい…。もっと場を与えられてもよいかと思うけど。もったいない。

「山科閑居の段」
嶋さん、貫禄、熱演、客ひきつける力絶大なり。今公演も嶋さんたっぷり聴けて幸せ(だがしかし。嶋さんはここでよかったのか?とも思う)。負けじと呂勢も奮闘。千歳大夫休演につき代演だが、大きな糧になったと見るが。(と、言いつつ、ここは千歳で聴いてみたい場でもある)。

お石と戸無瀬の火花散るシーンは、床も聞かせりゃ、人形も見せる、息のむ迫力…、ここはやっぱり浄瑠璃の力か。力弥の文昇が凛々しい。

加古川本蔵(勘十郎)と由良助(玉女)がバッチリ。

大詰
「花水橋引揚の段」

桃井若狭助、ここで出てきてエエカッコ言うなよ~、と思いつつも、「はや疾く行かれよ方々」の言に、胸のつかえがす~~~っとして、泣いてしまう。そうやって、最後にお客にす~っとした気持ちで帰ってもらうためのシーンかもね、ここは。

客入りは、夜の部はちょいと苦しいか? 7割程度。それでも昔の朝日座のことを思えば…、なんて言ってたら、何某の市長にいちゃもん付けられるか(笑)。

昼の部で前半見た人で、「これは続きも見なけりゃ」と思う人は必ずいるはず。そういう人を呼び戻すためのPRも欲しいところですな。

まあ、小生は、これはもう1回、いや2回は見ておきたいなと。今度見たら、また違う感想になってるかもわかりません、当然ながら、舞台は「ナマもん」ですからね。

2等席なら2300円で見れます。なんば花月より安いです。
ぜひ、お見逃しなきように!11月25日までやってます!


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