【上方芸能な日々 文楽】夏休み文楽特別公演*旧ブログ

暑いね。
暑いね。


暑いね~。

気象庁のHP見たら、8月4日22時時点で大阪市内はまだ30度越え。
ちなみに香港天文台のHP見たら、同時刻で31度。
ほとんど一緒。
さらに去年まで住んでた香港仔(Aberdeen)は27度…。
いやはや。
多分、この暑さで寿命が10年くらい縮まったんじゃないかな。

香港では気象警報のひとつとして「酷熱警告」ってのあります。

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朝、テレビのニュース画面にこのマークが出ると、うんざります。
特に何度以上という規定はないようですが、経験的には30度を超えると、出る確率がぐっと高まりますね。32度以上で晴天なら間違いない。

日本もそろそろこういう気象警報を制定した方がいいんじゃないですかね。
危険ですよ、暑さと言い、紫外線と言い、何もかも。

さてさて。
暑い暑いとぐうたら申してますうちに、千秋楽(3日)となってしまった夏休みの文楽公演、ギリギリ滑り込みセーフで千秋楽を観てまいりました。

第119回=夏休み文楽特別公演
平成22年8月3日(千秋楽)
国立文楽劇場
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朝の部というか、第1部はお子様向けなんでご遠慮して、午後の第2部とサマーレイトショーと銘打った第3部を鑑賞。

第2部『夏祭浪花鑑』
大阪の夏に欠かせない音。地車囃子。
この夏狂言の代表『夏祭浪花鑑』においても、ここという場面で地車囃子が効果的に取り入れられ、観る者の気持ちを高ぶらせます。

刺青姿の団七が舅の義平次を殺すシーンは圧巻。
団七の千歳大夫、義平次の松香大夫の掛け合いはすさまじく、人形は団七に勘十郎、義平次に玉女でしのぎ合いまして、耳は床に目は舞台に釘付けとなりまする。これぞ文楽の醍醐味でありまして、
「俺、今、凄いもの観てるかも!」
って気分で、感動して涙出ました。
さらに贅沢な要求をするなら、松香さんにもっともっと、観客の憎悪を一身に集めるくらいの憎らしさがあれば、とも今にして思うけど、そうなると感動の涙どころか、号泣してしまうかも…。

「悪い人でも親は親…」。親殺しを犯した団七が祭りのにぎわいにまぎれて行く光景。
そのとき舞台の背景に提灯をいっぱいつけた「だいがく」が通り過ぎてゆきます。
大阪人のバイブル、牧村史陽の『大阪ことば辞典』によりますれば、「だいがく」とは、
「夏祭に大阪南方の近在に限って飾り立てる特殊な立て物の一種。台舁の文字を当てているが、……。『夏祭浪花鑑』の長町裏の団七九郎兵衛が舅殺しの場で、……幾つかの祭りの立て物が通ってゆく情景が見られる。あれがダイガクである。…」
とあり、かつては難波・木津・勝間・田辺などの夏祭に出ていたが、現存は西成区の生根神社のみと。
我が町・田辺にもあったということは、すなわちは田辺郷山阪神社にあったということで、現在の同神社の夏祭りがいかに寂れてしまっているか、ということであろう。

現存する生根神社の「だいがく」がYouTubeにありましたので、ご参照を。
http://www.youtube.com/watch?v=tHJmudRiAeo&feature=related

今回は、珍しく「田島町団七内之段」も上演されました。
こちらは屋根の上での捕り物の場面もあり、これまた団七の豪快な動きが目を引きました。
また、徳兵衛女房のお辰の蓑助さんが素晴らしかった。
前にもどっかで書きましたが、子供の頃、文楽の人形が怖くて嫌いでした。表情もさることながら、きっとこういういかにも命を吹き込まれたかのような動きをするから怖かったのかもしれません。

団七を遣った勘十郎師ですが、2階ロビー正面に等身大(?)の先代勘十郎師匠がダイナミックに団七を遣う絵が飾られており、受け継がれてゆく芸の流れを20数年間観てきたことの喜びを感じるのであります。
また、切場で咲大夫師匠が語られるのを、白湯番として舞台袖に座り、一点を見つめて師匠の芸を学んでいた咲寿大夫くんの姿にも、同じことを感じたのであります。

第2部だけ見て、あとはミナミの町に消え去ろうかと考えていたんだけど、千秋楽やし、好きな「寺子屋」もかかるし、夏公演は2等席なしの均一4600円ってのもちょっと痛いし…と散々逡巡し、日本橋駅まで歩きかけていたけど、結局踵を返して観ることにした第3部は、やっぱり観て正解。
第3部『菅原伝授手習鑑』寺入り~寺子屋
おなじみの狂言(演目)で、特に「サマーレイトショー」ということで、人気の「寺入り」から「寺子屋」を上演。
まあね、「レイトショー」と言っても、18時30分開演ですから、勤め人にはとても厳しい開演時間。アタシのような遊び人にしか無理ですね。もったいないことです。「国立」の「公務員」だから9時までに終わらせなければならないんでしょうね、劇場は…。せめて10時閉幕くらいなら、もっと勤め人を呼び込むことができるのになあ。

小生の文楽初体験が『菅原伝授~』だったこともあり、これまでに何度も観ていますが、初めて文楽を観た人にはここに至るまでの筋が、やっぱり不明なんじゃないかと心配してあげたりしますが…。
まあ、そういうのを抜きにして、泣けますね。
他の人がどの部分で感動したりするのかわかりませんが、アタシの場合は、小太郎が潔く分別弁え管秀才の身代わりに首を差し出したと聞き、「でかした、立派だ」と松王丸がムハハハと笑う場面…。
なんとも言いようがありませんな。
そして母親である千代の「いろは送り」と。

昨今の大阪では、連日のように子供の虐待死が起きています。
なんなんでしょう、あいつら。
この日は『夏祭~」と『菅原~』と二つの「親と子の死にまつわる関係」を観たわけですが、時代背景も今とは全く異なり、そのまんま当てはめるわけにはいきませんが、「情」というもののかけらを微塵も感じさせない痛ましい事件の数々。それだけに余計に感動してしまったのかもわかりません。

第3部はもう一つ
『日本振袖始』(大蛇退治の段)

明治16年を最後に本公演での上演は絶え、以降は実験的な公演で採り上げられていたものを、今回は鶴澤清治の補綴・補曲、藤間勘吉郎の振り付けにより新演出されたものを。
これはストーリーがどうこうより、素戔鳴尊と大蛇の立ち回りと三味線・鼓の掛け合いでしょう。「一見さん」が多いであろうレイトショーにはうってつけの出し物かもしれません。
こういう実験的な舞台をもっと見たいですね。
文楽の間口を広げる絶好の演目ですね。

今回も2部も3部もできるだけ床に近い席で観ました。
特に3部は床のまん前でした。
ふっと右側を見上げると、人間国宝の綱大夫さんがいる、同じく人間国宝の清治さんがいる、寛治さんがいる…。汗びっしょりで熱演する津駒さんの迫力…。
未来の文楽を支えるであろう、呂勢さん、咲甫さん、龍爾くん…すごい贅沢な「特等席」です。
そばに座って笑ったり泣いたりしてるのが恐縮するほどのメンバーがそこにいてはるんですよ!なんと恐れ多いことでしょうか!
こんな贅沢をその日に行ってチケット買って手に入れることができるわけで、それはいいのか悪いのか…。
これもいつも言いますが、東京公演ではこうはいきません。早くから取り合いになります。関係者ですらこんな特等席なかなか押さえることができないと聞きます。
大阪で生まれ育った文楽なのに、淋しいじゃないですか、こういうのん。

大阪人よ、もっと文楽を!

と言いたいですな。
あ、落語家の「春さん」こと春之輔師匠が2部、3部ともに観てはったわ。

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COMMENT:
AUTHOR: shimu
DATE: 08/06/2010 01:42:14
こーゆー筋金入りの大阪もんはホントにやだねー。はやく香港にかえっておいで!
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COMMENT:
AUTHOR: leslieyoshi
DATE: 08/06/2010 02:22:08
To shimuさん
こんちわ!
>こーゆー筋金入りの大阪もんはホントにやだねー。はやく香港にかえっておいで!
なにせ当方も筋金入りの大阪もんなもんで(笑)…。
香港も久々に行きたいんですが、行く理由がなくって…。
最近はどうなんでしょう?また教えていただければ嬉しいです。


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