【返還13周年、民主派の今】*旧ブログ

早いもんで、明日7月1日で香港の祖国回帰から13年となります。

自分としては、97年の回帰、02年の回帰5周年、07年の10周年を香港で過ごせたことは、非常に素晴らしい経験であり、財産であると思っています。
手元に、5周年となった02年7月1日の『朝日新聞国際衛星版』(香港で印刷販売されている)があります。
1面トップは日韓合同開催となったワールドカップでブラジルが優勝という記事。
そしてセンター4ページで、現地広告特集としての「返還5周年特集」。
当時の政府4役のひとり、梁愛詩(エルシー・リョン)司法官の挨拶文が。
徹頭徹尾、これぞ親中派という梁女史が8年後の今日、まさかまさか、正反対に位置する民主党から提出された選挙制度改革案を評価するとは…。
そしてその民主党が、水と油だった中央人民政府駐香港特区連絡弁公室(中連弁)と会合を持ち、その結果が梁女史の評価につながってゆくとは…。
返還から13年の歳月を思い知らされます。

回帰翌日の97年7月2日から、必ず聞かれます、

「返還で香港は変わりましたか?」

と。
ざっくりと言えば、何も変わっていません。
「50年不変」が約束された香港返還ですから、少なくとも50年間は劇的な変化はあり得ません。
冗談半分で、返還後は道路の名前も「中山北路」とか「人民大道」に変わるとか言われてましたが、Queens’ RoadもVictoria Harbourもそのまんまですし、通貨も香港ドルのままです。
英語もそのまま使われており、小生のような英語が不得手な日本人を悩ませています(苦笑)。

細かく言えば、すさまじい勢いで変化していると言えるかもわかりません。
・SARSを機に、市民生活の衛生観念が目覚ましく向上しました。
・九龍半島や新界地区を中心に鉄道網が発達しました。
・政府への不満を市民が大規模デモで堂々と訴えることが増えました。
・大陸観光客が香港経済の一端を支えるようになりました。
・人民元が香港ドルより強くなりました。
・午後6時台のテレビニュースの前に『義勇軍進行曲』(中国国歌)が流れるようになりました。
・日本経済の疲弊及び、上海・華東へのシフトチェンジが進み、在住邦人がめちゃくちゃ減りました。
・民主派の勢力図が大きく変化しました。

まだまだありますが、この13年の変化は、結構、スピード感ありましたね~。
中でも、民主派、ここのところは「汎民主派」と言われていますが、その勢力図の変化は特にスピードを感じます。
この速さには中央も少々戸惑い気味か?というほどの展開。
これは市民が政治的に成熟していったということかもわかりません。
「何でも反対していりゃ、それが民主」という短絡的な考え方から、何が香港にとって有利なのか、将来を託せる選択は何か、など、様々な角度から香港を見るようになったんだろうな~と感心します。

その結果として、これまで民主活動の中心的存在であった民主党が、民主派としては議会最大議席数の9議席を持ちながらも、まったくその存在感を感じさせなくなるという凋落ぶりとなってしまいました。
いたしかたない結果でしょう。
返還後、いや返還前から民主党は、ことごとく中央や特区政府の政策に「反対」の路線を貫き、市民に「民主」を説いてきたわけですが、一方で結果を出せずにいた。いくら「民主」的な香港を期待する市民も、愛想が尽きるというもの。
こうした流れの中で、より現実に即した政策を掲げた切れ者集団としての「公民党」が急速に株を上げてきます。
いつの間にか、民主派の中核は、民主党から公民党に代わっていました。

当初、「汎民主派」は一枚岩のような感じでしたが、一枚岩なら何もいくつものグループに分かれる必要はなく、当然、早い段階でそれぞれの政策方針にズレが生じます。
そんなもん、うまくいくはずがありませんわな。市民もいつの間にか「公民党、スゲー」みたいな感じです。

起死回生とばかりに、民主党は中央との歩み寄り案とも言うべき「1人2票」という選挙制度改革案を提案し、これが議会を通過するということに。
民主党が歩み寄ったのか、中央が民主党を懐柔したのか。
いずれにしろ、香港の民主活動が大きく動いたわけです。

「1人2票」という民主党による選挙制度改革案については、次回(?)触れることとして、

「返還後、香港は変わりましたか?」

と聞かれて、

「何が変わったかってアナタ、民主派の勢力図がエライ変わりましたで!」

と答えることとします。
が、「民主派がどーたらこーたら」言ったところで、日本人にはさてなんのこっちゃというところでしょう。日本の民主党でさえ、なんかややこしいのに、香港のこと言われてもねぇ…。
で、結局は、

「何も変わってませんよ、ご期待に添えず、すんません」

ってことになるんですね。
にしても。
「変わりましたか?」
とうれしそうに聞いてくる人達、香港が変わることがそんなにうれしいんでしょうかね?
きっと
「もう、中共の思うがままですわ」
みたいな答え期待してるんでしょうけど…。
香港がそんな不幸なことになるのが、そんなに愉快なんですか?
逆に返還13周年、聞いてみたいですな(笑)。


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