【睇戲】我家的事 <ワールドプレミア上映>


今年は家庭の重大事により、本数を観ることができなかった。今後も同じような理由で、自在に動くことができない事態が起きるのは、容易に想像できる。老いていくのは自分だけではない。家族みんなが等しく年を重ねていくのだ。

そんなことをあれこれ考えているときに、この映画。『我家的事』とはまた、直截的なタイトルである。よそ様の家のことながら、「どんな家族なんだろう、どんなヒミツがあるんやろう」などなど、興味津々である。さてさて…。

「睇戲」と書いて「たいへい」。広東語で、映画を見ること。

コンペティション部門 特集企画<台湾:電影ルネッサンス2025>
我家的事 邦題:我が家の事 <ワールドプレミア上映>

台題『我家的事』 英題『Family Matters』
邦題『我が家の事』
公開年
:2025年 製作地:台湾
言語:閩南語、普通話 上映時間:95分
評価 ★★★★(★5つで満点 ☆は0.5点)

導演(監督):潘客印(パン・カーイン)
監製(製作):鄭有傑(チェン・ユーチェ)、蔡宗翰(ヘンリー・ツァイ)、謝君堯(シェ・チュンヤオ)
編劇(脚本):潘客印
攝影(撮影):趙冠衡(エリック・チャオ)
原創音樂(オリジナル楽曲):李英宏 aka DJ Didilong
剪接(編集):潘客印

主演(出演):藍葦華(ラン・ウェイホア)、 高伊玲(カオ・イーリン)、曾敬驊(ツェン・ジンホア)、黃珮琪(ホアン・ペイチー)、姚淳耀(ヤオ・ジュンヤオ)、朱羿銘(チュー・イーミン)

《作品概要》

ごく普通の家族の歴史に脈々と引き継がれる秘密。その秘密によって苦しみ、引き裂かれ、再び結ばれる姿を、家族それぞれの視点から丁寧かつ滑稽に描く。<引用:第20回大阪アジアン映画祭公式サイト

世界初上映、すなわち出来たてのホヤホヤということで、画像を含めて詳細情報の少ない作品だが、こういう作品こそ、ブログのしがいがあるというもんだ! と意気込んでみたものの、小生ごときの感ずるところをそのままブログにしても、なんにも面白いことはないので、決して期待はしないでくださいね(笑)。そんなわけで、ChatGPTさんの手助けも借りながら、書いていきましょうかね(笑)。

というわけで本作『我家的事』。英題も邦題もそのまんま直訳(笑)。これでいいと思います。文字通り、家庭のこと、家族のことを綴った作品。

第17回大阪アジアン映画祭で上映された短編『姊姊(邦:姉ちゃん)』が母体だとの記事を現地メディアで散見する。なるほど、本作の出演者の多くが『姊姊』にも出演している。「続編」なのかどうかは、『姊姊』を見逃している小生は何とも言えない。本作は家族の「秘密」と「絆」を四つのエピソードで描き出す。シリアスなエピソードの中に、ちょっとした笑いの場も設けられていて、緩衝材の役目を果たしていた。監督の故郷、彰化県社頭郷ののどかな風景が印象的。四季折々のトーンを柔らかく描き、家族4人の心情に寄り添うかのようだった。

で、その四季折々だが、台湾の映画紹介サイト「開眼電影網」を見て「はっ!」と思ったのは、家族4人の名前がまさに「四季折々」なのだ。どうやらこれは『姊姊』から連続しているようだ。

父(演:藍葦華/ラン・ウェイホア)……阿冬
母(演:高伊玲/カオ・イーリン)……阿秋
姉(演:黃珮琪/ホアン・ペイチー)……小春
弟(演:曾敬驊/ツェン・ジンホア 子ども時代:朱羿銘/チュー・イーミン)……夏仔

監督の潘客印(パン・カーイン)は、小生の大のお気に入り作品『有了?!(邦:できちゃった?!)』で「ただモノじゃないね、この監督」と思った。そんな潘客印の長編デビュー作。気のせいか、そうなのか、「こういうのを質問しなさいよ!」ってところなんだけど(笑)、ワイドショットが多用されていたことで、人物がうまいこと風景の中に溶け込んでいたなあと。それが逆に孤独感を表現しているように見えた。そうよ、そうなのよ、家族って実は孤独で脆いのよ…。

自分が養女だと知った姉に母親は「産んでないだけで、ずっと育ててきた。それでも母親になれないの?」と言い放つ場面が、きっついわ~

ちなみに、社頭は靴下製造が盛んだとのこと。お父さんの阿冬(演:藍葦華/ラン・ウェイホア)は、靴下乾燥工場に勤めてたような記憶があるが…。でしたよね??

高校の送り迎えをする父だが、次第に二人の関係は対立してゆく

で、この父親と息子の関係ってのが、胸が張り裂けるような関係というか、二人の対立はやたらと感情的で、ピリピリとした緊張に満ちていて、ハラハラする。まあねぇ、実は血がつながっていないからねぇ、そこは仕方ないかもしれない。父には負い目のようなものもあったんだろうし。

曾敬驊(ツェン・ジンホア)演じる夏仔は、水不足の夏、ひょんなきっかけで、ホテルでアルバイトすることになったんだが、人生のいたずらか、経営者はかつて精子を提供した父親の友人(演:姚淳耀/ヤオ・ジュンヤオ)、すなわち「実の父」だったわけで…。この展開がめっちゃドキドキする。「うわぁ~~!」って感じで。

どんどん接近してゆく「DNA上の父と息子」。ちょっとクスッとするシーンでもあった。姚淳耀(ヤオ・ジュンヤオ)と曾敬驊(ツェン・ジンホア)って、これがまた似てるのよw

この父と息子の緊張するパートが、4人の家族のエピソードで一番長かったんだが、それだけに見応えもあった。何と言うか…。実際に血がつながっていても、父親と息子って、やたらと衝突するもんだよな。特に思春期は。

でも、お父さん弱い人だったなぁ…。博打に走ってしまい、挙句は命を絶ってしまうのはなぁ。壁に描きかけの絵が切なかった。「あの絵は何を描きたかったんですか?」と上映後の質疑応答で質問した人いたけど、最初からちゃんと観てたんかい?って、逆に聞きたかったよ(笑)。あの頃に戻りたかったんだろうよ、きっと。ならばなぜ、わざわざ家族から離れて博打に走ったのだと、父親に問いたい気持ちになった。

息子役の曾敬驊と父親役の藍葦華はともに宜蘭の出身ということで、随所で宜蘭なまりの台湾語を織り交ぜたとのこと

子宝に恵まれない夫婦。養女をもらうも、古い考えの姑は男子を強く望む。不妊の原因が息子にあるにもかかわらず…。そこで選択したのは「人工授精」。精子提供に選んだのは、夫の友人。なかなかうまくいかず、何度目かでようやく「成功」。そしてこの男子は、この父は…。家族って、難しいよなと、今、父が倒れて緊急入院した現状だから、余計にそう感じさせられた秀作だった。監督には、また「家族もの」を撮ってもらいたいな。

席が遠かったのでボケボケの写真しか撮れなかったのは残念

さて、この上映回は完売だった様子。そこで作品のFacebookには、こんな投稿があったよ! 監督の中学時代のご学友たちが、応援の横断幕を掲げていた。台湾からこの日のために飛んできたとかで、いいお友達である。

上映後の質疑応答。いや~、小生的には『刻在你心底的名字(邦:君の心に刻んだ名前)』を観て、その眼に一目ぼれした曾敬驊には大阪アジアン映画祭のゲストにいつか来てほしいなと思っていたので、会えて大満足。しかしよくしゃべってたなぁ。例により、内容はほとんど覚えていないので、「アジアンパラダイス」さんをご覧ください(笑)。

監督は一副の絵を持ってきて披露してくれた。姉が幼いころに描いた絵、父が命を絶つ前に壁に描きかけた絵…。それにしても曾敬驊のズボン、ベルボトムにもほどがあるってくらい裾広がってるなw

■ 受賞など ━━━━━━━━━━━━━━・・・・・

○第20回大阪アジアン映画祭
・薬師真珠賞:高伊玲、藍葦華、曾敬驊、黃珮琪

(令和7年3月22日 ABCホール)


コメントを残す