【睇戲】长空之王 / 長空之王


先日観た『無名』で、その存在感を全世界に知らしめた王一博(ワン・イーボー)。小生はなんとなく「おう・かずひろ」と呼んでしまう(笑)。その「かずひろ」君の二作目がさっそく公開となっている。戦中の諜報員から一転、今作では最新のステルス戦闘機のテスト飛行パイロットを演じる。まあストーリーは大方想像できるので、スルーしてもよかったんだが、根が「解放軍おたく」なもんで、観てみんとす。超久し振りとなるHEP NAVIOの東宝シネマ梅田へ。こういう大型シネコンで中国映画が公開されるのも珍しい。王一博効果かな?

「睇戲」と書いて「たいへい」。広東語で、映画を見ること。

长空之王 邦題:ボーン・トゥ・フライ

中題(簡体)『长空之王』(繁体)『長空之王』
英題『Born to Fly』 邦題『ボーン・トゥ・フライ』
公開年:2023年 製作地 中国
言語:普通話
上映時間:128分
評価 ★★★(★5つで満点 ☆は0.5点)

導演(監督):劉曉世(リウ・シャオシー)
監製(製作):韓寒(ハン・ハン)
編劇(脚本):桂冠(グイ・グァン)、劉曉世
攝影(撮影):白玉俠(バイ・ユーシア)
剪接(編集):肖洋(シァオ・ヤン)、魏永(ウィル・ウェイ)、李瑞亮(リ・ルイリャン)
配樂(音楽):郭思達(グオ・シーダ)

領銜主演(主演):王一博(ワン・イーボー)、胡軍(フージュン)、于適(ユー・シー)
特別主演(特別出演):周冬雨(チョウ・ドンユィ)
主演(出演):卜鈺(ブ・ユウ)、翟宇佳(ジャイ・ユージア)、王子宸(ワン・ズーチェン)、蘆鑫(ルー・シン)、趙子琪(チャオ・ツーチー)、曲哲明(ジェレミー・チウ)、金靖(ジョリーン・ジン)、田壮壮(ティエン・チュアンチュアン)、鄭曉寧(ジェン・シャオニン)、王慶祥(ワン・チンシアン)、洪烈(ホン・リエ)

81名のテスト飛行士の中から選ばれたステルス戦闘機開発にかかわる飛行士、ということだが、81名というのは解放軍の略称「八一」にちなんでいるのか?などとおたく的に想像する(笑)

《作品概要》

空軍のパイロットであるレイ・ユー(ワン・イーボー)は、操縦に長けているが訓練中にトラブルを起こし能力を活かしきれずにいた。ある時、戦闘機のテストパイロットチーム隊長のチャン・ティン(フー・ジュン)が彼の才能に気付き、チームへと誘う。レイは厳正な選考を経て、ドン・ファン(ユー・シー)を始めとする優秀な飛行士6人と共に、テストパイロットに選ばれる。彼らは、新世代ステルス戦闘機のテスト飛行任務に就くが、高度1万メートル以上の世界で、繰り返される厳しいテストは、想像を絶する過酷さだった。……<引用:映画『ボーン・トゥ・フライ』オフィシャルサイト

想像通りの作品。中国空軍が新世代ステルス戦闘機を完成させるストーリーではあるけど、それではドキュメントになってしまうんで、今一番人気の王一博(ワン・イーボー)に胡軍(フージュン)、于適(ユー・シー)、周冬雨(チョウ・ドンユィ)らを配して、青春と国威発揚と割と涙もありの物語にしたら、こうなりましたみたいな。

こういう訓練のシーンは、この手の作品には欠かせない
テストパイロットは座学も重要!右端が王一博が演じた雷宇(=レイ・ユー)

そんな雰囲気が観る前から漂っていたので、斜に構えて観ていたんだが、いつの間にか引き込まれてしまっていたという始末。特に、胡軍が演じるテストパイロットチーム隊長の張挺(=チャン・ティン)の最期を描いたあたりは、かなり鼻水をじゅるじゅるさせながら観ていた。隣席の女性(あ、全く赤の他人ですw)などは、ハンカチで涙拭きまくっていたね。あれは泣くわな、って感じで、それは胡軍の演技のうまさもあるし、監督の劉曉世(リウ・シャオシー)の巧みさもある。

張挺の息子を演じた子役君、洪烈(ホン・リエ)が、なかなかの演技派だった。最近の子役はみんなすごいね~!
ええおっちゃんでした

テスト飛行で命を落とす張挺。その葬儀で、ここに至るまで夫の遺体と対面できていない奥さんが、遺体にかけられた国旗をめくると、そこにあったのは人型だった…。墜落炎上で、張挺は完全に「消失」してしまい、遺体が見つからなかったのだ。ここでこの子役君演じる息子の「爸!」と言う叫びは、涙無くして観れない。いついかなる時も、自己犠牲の塊だった張挺。最新の戦闘機は、こうした人々の尊い命の上に開発されるのである!という国家からのメッセージ…。中国映画、とりわけ解放軍が舞台となると、ありがちなシーンの一つで、人によっては「ふん!」ってなところだが、解放軍おたくな小生にはたまらんシーンではある。

監督の劉曉世は、本作が商業映画初監督。北京電影学院の美術の監督科で学んだ後、航空業界へ就職、中国初の空母・遼寧のプロモーション映像や、パキスタン、エジプト空軍の映像を制作し。また、様々な映画の助監督も務めたという経歴の持ち主。このリアリティの追求具合は、この経歴あればこそというわけだな。

オープニングから海洋開発現場を威嚇する国籍不明の戦闘機。石油掘削してるのかなんか知らんが、南シナ海で勝手に「中国領」とする南沙諸島あたりを想起させる。攻撃する戦闘機のパイロットたちは、欧米系の様子。映画ではあくまで自由に空を飛び回る集団として描かれているが、まあ米国のことなんだろうなと、いきなり政治臭漂うので、どうなることかと、ちょっとうんざりしたが…。

で、肝心の王一博だが、『無名』とは違って、色んな表情を見せてくれる。怒ったり、イラついたり、泣いたり、ちょっと笑ったり…。それはそれで「かずひろ」のファンにはたまらないんだろうけど、まだ『無名』を観てからさほど時間が経過していないこともあって、「な~んか違うんちゃう?」なんて小生は感じてしまった。もしかしたら、こういう青春群像劇には向いてないのかな、とさえ思う。ただまあ、彼も本格的な映画俳優人生が始まったばかりなんで、2作であれこれ評価するのはかわいそう。その点を差し引くと「ようやっとる」というところ。

飛行中に農家に落っこちて、「ありゃ、兵隊さんが空から降ってきた」(笑)。ほのぼのした王一博が観られるシーン
パラシュートって使い回すもんだったんだ!

張挺が命を落としたテスト飛行中の事故で、自身も大けがを負い、失意の果てにパイロットの道を諦めるのだが、そうは言っても未練は残る…。部隊を離れる前の任務としてパラシュートの整理を学ぶ王一博演じる雷宇。そこで大きなヒントを得ることになるのだから、案外と技術者肌なのかね。

そう言えば、こんなことを映画の中で誰かが言っていた。テスト飛行士のタイプの変遷について、「初代は勇敢型」、「第二世代は操縦スキルで結果を出す技術型」「次世代は高い技量と航空力学の知識を持ち、新型機の開発設計もできる専門家型」と。雷宇は、まさしく次世代のタイプと言えるだろう。

で、結局、彼は部隊に残って、開発に軸足を置いた活動を始めることになる。そして再び、空を飛ぶ日が来る。ライバルでもあり盟友でもある鄧放(=ドン・ファン 演:于適/ユー・シー)とともに、最新機に乗り込み試験飛行を行う。順調な飛行のさ中、「ぎょえ!」ってアクシデントに襲われる。もうねえ「鳥恐怖症」の小生には最悪のシーン。あれ、もし小生だったら、けがの苦しみよりも散乱する鳥の羽や血に卒倒してしまう…。「バードストライク」というんやそうだけど、鳥の群れが飛行機にぶつかるってことあるんや…。その画がまた凄惨極まりない! しかしドン・ファンって(笑)。

于適は初めて見る顔。ドン・ファンって役名だけあって、かなり鼻につくところもある役どころ。でもまあ、根はすごくイイ奴ですよ(笑)。『封神第一部:朝歌風雲(邦:封神~嵐のキングダム~』でデビューしたが、諸般の事情で本作の方が先に公開されたため、実質、こちらがスクリーンデビュー作となった。「諸般の事情」……、さあ、何だったんでしょうねぇ。まあ、大作にはありがちです。ということで、王一博ともども、これからの俳優さん。末永く見守っていきましょう。

右から、于適、王一博、胡軍。位置の関係もあるかもしれんが、于適、顔ちっちゃ!

もちろん、最後はうまくいくわけで、そこの落としどころについて、ここであーだこーだ言う必要もないだろう。要は、いくつもの犠牲の上に、そして失敗を繰り返しながらも、世界に誇る空軍の最新鋭機は開発される!というところを押し出した作品なのは、言うまでもないし、さらには『無名』で大ブレイクした王一博推し作品であるのも、説明するまでもないこと。なので、総体的には「まあ、こんなもんかな」という作品。

ではあるけど、この作品の水準を底上げした3人のベテランの存在は、見逃せない。一人は、上述の胡軍。さらには田壮壮(ティエン・チュアンチュアン)と王慶祥(ワン・チンシアン)の二人。

髪型がユニークな役を演じた田壮壮。この髪型について語られるシーンもある

技師長の魏を演じた田壮壮は、『藍風箏(邦:青い凧)』の監督として有名だが、内容がよろしくないとのことで、中国では上映禁止となり、10年間、映画撮影を禁じられた人。解禁後は監督、製作、時には俳優として、精力的に映画に取り組んでいる。もう一人、王副司令を演じた王慶祥。『赤壁(邦:レッドクリフ)』にも出演しているけど、あれだけ出演者が多いと、わからんよな(笑)。

常にテスト飛行士の無事を祈りながら指揮にあたる姿が熱い王副司令

一方で、特別出演の周冬雨(チョウ・ドンユィ)。部隊の医務官、沈天然を演じたが、彼女と雷宇が恋愛に発展するという展開は必要だったのかな?と思う。普通に医務官としてテスト飛行の無事を祈る、という設定だけでもよかたんじゃないか、とは思う。まあ、男臭い映画なんで、そういうのも入れておきたかったかのかもしれないけど…。

医務官役の周冬雨(チョウ・ドンユィ)

「中国版トップガン」と呼ぶ声も多いが、そりゃ本家に失礼と言うもんですぜ(笑)。そこまでのものではないし、それを期待して観たら、失望感しか残らないだろう。昨年の労働節(メーデー)の大型連休に公開された娯楽作品、として観たら、「まあえんちゃう」と思う作品だ。

《长空之王》 Singapore Official Trailer

《受賞など》==================================

■第18屆中國長春電影節金鹿獎
1部門にノミネート

■第20屆電影頻道傳媒大獎
・最もメディアで注目された主演男優:王一博

■第36屆中國電影金雞獎
・最優秀監督デビュー作賞:劉曉世
他4部門にノミネート

■ 第一屆中國「電影金數字榮譽」
・傑出した視覚効果賞:『長空之王』

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(令和6年7月5日 東宝シネマ梅田)

発売と同時に、えらい勢いで売れてるみたいですよ。王一博のことをもっと知りたい人は是非!


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