【回帰27周年】


香港の主権が英国から中国に移行して27年が経過した。あの日を一人の香港市民として現地で迎えた小生も、帰国して14年にもなる。とは言え、未だ日本社会への適応のリハビリ真っただ中である(笑)。一方の香港は、着実に中国の香港としての道を歩む。まあ、27年前に中国になったのだから、当たり前のことなんだけど。

特区政府は午前8時、灣仔(Wan Chai)の金紫荊廣場(Golden Bauhinia Square)で、国旗と特区旗の掲揚式典を開催した。李家超(ジョン・リー)行政長官をはじめとする政府高官や行政会議メンバー、立法会議員が参加したほか、中央人民政府駐香港特別行政區聯絡辦公室(中連弁)主任の鄭雁雄、元行政長官の曾蔭權(ドナルド・ツァン)、梁振英(C.Y.リョン)、林鄭月娥(キャリー・ラム)の出席した。

みんな喜べ!パンダが来るよ!

現在、海洋公園に居るのは、2007年にやって来た「樂樂」(写真)と「盈盈」のカップル

掲揚式典の後、會議展覽中心(コンベンション&エキシビションセンター)で祝賀レセプションを開催した。李長官はスピーチで、中央政府からジャイアントパンダのつがいが香港に贈呈され、数カ月以内に香港に到着する予定だと発表。中央政府の香港への配慮と支援の表れだと述べた。今年は中華人民共和国建国75周年にあたり、中央政府が香港特区にジャイアントパンダを寄贈することは特に意義があると指摘した。返還後に中央政府から香港へパンダが寄贈されるのは、これで3つがい目となり、過去に中央政府から寄贈された2組のジャイアントパンダは、何世代もの香港人の成長とともにあり、香港市民の「集體回憶(共通の記憶)」であるとし、今度やって来るつがいも香港の人々の「家族」となり、笑いと喜びをもたらすだろうと述べた。しかし、なんかあったらパンダやね。たまには市民一人に10万香港ドル(約190万円!)とかくれたらええのに(笑)。ないか…(笑)。

スピーチする李家超行政長官

さらに李長官は、就任以来2年間の成果に触れ、香港が「結果重視の実践チーム」を設立し、「感染症を完全に制圧」し、基本条例第23条に定める憲法上の責任を果たしたと述べた。三分の一くらいは、前行政長官・林鄭月娥(キャリー・ラム)の手柄やとは思うけど(笑)。

「経済は、あーします」「不動産は、こーします」「少子化対策は、ちゃんとします」等など、どれこれもあーした、こーするを述べ倒した。まあしかし、就任前から「剛腕」と言われてただけあって、風貌もなんか冴えないおっさんだけど、過去の行政庁長官連中とは比較にならないくらい、色々とやってしまうのが優秀と言うか、怖いというか。まあ、これも最初に「国安法」という大きな後ろ盾ができたからだろう。うるさい民主派は、それにより一瞬にして抹殺されたわけで、そうなりゃ怖いもん無しやもねんね。

さて、この祝賀レセプションには、昨年に引き続き、民主派の長老である李華明(フレッド・リー)が、民主派としては唯一出席した。ネットメディア『香港01』が同氏にコメントを求めたところ、「民主党党員として政府が招待したのかどうかはわからない。多分、太平紳士とか銀紫荊勳章受勲者とかっていう身分だから呼んだのかもね」と答えたと言う。

©香港01

上の画像を見る限りでは、並み居る親中人士の中でかなり浮いた存在に見えるが、実際はどうだったんだろう。まあこの人自体は、民主派デモではいつも先頭集団にいたし、尖閣問題など反日デモも先頭集団にいたし、支連会の六四デモや追悼集会もトップグループにいた、いわゆる「伝統民主派人士」である。だから、小生自身はまったく信用のおけない人士なのよね…。

慶祝行事あれこれ

香港漁民團體聯會廣東省港澳流動漁民協會とともに午前中、ビクトリアハーバーで海上漁船パレード「漁船巡遊啟動禮」を開催した。27艘の漁船が霧笛を鳴らしながら海上パレード。尖沙咀(Tsim Sha Tsui)や灣仔(Wan Chai)などの沿岸には親中団体や見物人が陣取り、国旗や特区旗を振ったり、国歌を歌うなどして声援を送った。ま、漁民の恒例行事ですわ。

「タダ!」と聞けば、用事も無いのに乗りたがるのが香港人のかわいいところ(笑)。現地での公開が間近の『名探偵コナン100万ドルの五稜星』の宣伝がラッピングされた車両

この日、特区政府はさまざまな団体と連携し、一部の交通機関の運賃や博物館入場料を「無料」とした。運賃無料となったトラムは、終日乗客で混雑した。午後には、灣仔の修頓球場(Southorn Playground)の停留所から乗車するには、3本待ちとなるなど、市民が殺到した。

「入場60分待ち」の張り出しもなんのその。「タダ」ならずっと待っていると太空館には長蛇の列

太空館(Hong Kong Space Museum)」では、常設展示を無料開放。正午には長蛇の列ができており、少なくとも30~60分待ちとの案内が貼り出された。「タダ」と言っても、明日でも見られる「常設展示」だけなんやけど…。ま、気持ちはわかるけどな(笑)。

太空館の外は、ビクトリアハーバーを行く漁船団の海上祝賀パレードに声援を送る市民で埋め尽くされた ©端傳媒

香港藝術館(Hong Kong Museum of Art)」のテーマ展示、「西九文化區(West Kowloon Cultural District)」の「M+」標準チケットを使用するすべての展示、および「香港故宮文化博物館(Hong Kong Palace Museum)」のすべてのテーマ展示も無料開放。香港故宮博物院は、事前に無料チケットを予約しなければならないことを会場の外で知り、「『無料』の宣伝だけが先走りして、誤解を招く」とがっかりしていた人も。 今度はお金払って見に行けばいいよ(笑)。

スターフェリーなんて、普段でも大した船賃でもないのに、そんなに「タダ乗り」したいんか(笑)

天星小輪(Star Ferry=スターフェリー)」は、尖沙咀~湾仔間は終日無料。乗船時に水のペットボトルと携帯用電動扇風機が配布された。

「そもそもモノが高い!」「行列はイヤ!」と言う冼さん一家のパパ。お子さんが手にするのが配布された扇風機かな? おっちゃんもそれ欲しかったわ(笑)

この日は、学校など教育機関でも国旗と特区旗の掲揚式が行われた。香港教育工作者聯會(教聯會)は、教育局の蔡若蓮(クリスティン・チョイ)局長出席のもと、国旗&特区旗掲揚式を実施し、香港升旗隊の学生が掲揚式を担当した。

しっかしまあ、子供の時からこういう教育をする親がおるんやね…。二〇〇二年設立の香港升旗隊總會は愛国教育機関で、参加校は幼稚園から大学までと幅広い。その中で、国旗掲揚式を担当するのが升旗隊

また、科技大学、理工大学など多くの大学でも掲揚式が挙行された。

2019年の暴力破壊行動では最大級の「戦場」となった理大でも掲揚式。わずか5年で風景が一変しているのは驚くばかり ©香港01

夜にはこんなイベントも。

©明報

荃灣各界慶祝回歸委員會は午後8時半から、新界の荃灣(Tsuen Wan)の荃灣海濱長廊(荃湾プロムナード)で「無人機匯演賀回歸(返還記念日祝賀ドローンショー)」を開催した。350機のドローンが夜空に、荃灣區の區徽やパンダなどのデザインのほか、「I Love香港」、「香港夢 中國心」、「我♥荃灣」、「27周年紀年兄Anniversary」などの文字を描き出した。多くの荃湾住民がウォーターフロントに繰り出し、夜空を彩るドローンを見物した。中でも一番人気だったのは「我♥荃灣」で、多くの見物客が「感激した!」と語ったと、各メディアは伝えている。そりゃそうやろ。在住中に香港仔(Aberdeen)でドローンショーがあって「我♥香港仔」なんて出てきたら、小生でも感激しただろうし、感動したはずだ。

©明報

ドローンショーって、最近よく見かけるけど、花火よりも安上がりなんだろうな。けどまあ、荃灣の皆さんは大喜びだったようで、回帰27年のよき思い出となったことだろうな。

お巡りさんも公務を忘れて?撮影に夢中(笑) ©香港01

恒例の解放軍基地オープンデーに80万人!

返還記念日と言えば、超人気イベントの解放軍基地のオープンデーを忘れてはならない。「解放軍おたく」の小生としては、一度は参加して是非とも解放軍兵士諸君と触れ合う機会を持ちたいのだが、すでに「ブランドイベント」となった今、事前申し込みの時点ですさまじい競争率を勝ち抜く必要があり、どうやら叶いそうにない…。

人気のヘリコプターの飛行実演 ©香港01

今年は6月28日から30日までを「七一軍営開放活動」として開催されたので、実際には7月1日の行事ではない。昂船洲(Stonecutters Island)、石崗(Shek Kong)、新圍(San Wai)の3か所の駐屯地で開催され、返還以降27年で過去最高の80万人が参加した。実に、香港市民の9人に1人が参加した計算になるから、びっくりだ。

やっぱり香港警察でなく、ホンモノの解放軍兵士による国旗掲揚をみておきたいもの ©香港01
力強いフォントで「一切は勝利のために」。誰に「勝利」しようとしているのか… ©香港01

「北上消費」が止まらない!

さて、様々な慶祝行事が企画され、香港市民の皆さんは大いに3連休を満喫したことだろう…ってのは早計というもので、「北上消費」に歯止めがかからないのが実態だ。見て字の通り、北上、すなわち本土入りして金を使うという傾向である。要するに、香港のモノ、サービスの価格があまりに高すぎるのである(それだけではないと思うが…)。今や、本土の方が「金を使う値打ちあり」なのだ。さらに高速鉄道や港珠澳大橋など交通アクセスも格段に向上したことも手伝い、「北上」が手軽になったのも大きい。

本土から戻ってきた市民で高鉄(高速鉄道)西九龍駅は終日、混雑した ©香港01

今年は7月1日が月曜だったので、6月29日からの3連休となったため、この期間を本土で過ごす香港市民が多かった。少しでも足止めしようと、特区政府は「タダ」の企画や割引企画などを打ち出したが、「それでも割安感無し」というのが実情。

入境處の発表では、3日間で127万人の香港居民が出境し、うち97万人が「北上」したという。いや~、これは考えもんですな。香港の商売人にとっては「シャレにならんで」ってもんだ。小生らが昔、深圳へおねーちゃん遊びに通ってたのとはワケが違う。その「ワケ」、これちょっと調査してみたいと思う。ま、そのうち調査報告を…。

という、今年の回帰記念の1日でした!

これはなかなか面白いよ! ちなみに広東語を学ぶためのテキストではありません(笑)。


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