年に1回だけだけど浪曲をたっぷり聴く日。以前はもう少し浪曲の会に行ってたんやけど…。
浪曲
浪曲名人会
<リレー浪曲>
『寛政力士伝より 雷電と八角』 京山幸乃 京山幸太
・曲師 一風亭初月
以前から、拙ブログやアンケートで「若い人にも出て欲しい」と度々訴えてきたが、「名人会」と言うからには、そこはなかなか「ハイ、そうします!」とはいかないのは、仕方ないと思っていたら、こういう形で実現してくれた。
幸乃はこのところよく見かける名前。どんな子かなと思っていたが、ええ舞台度胸してた。関西浪界有望株の一人やな。幸太はもはや中堅と言っていいだろう。リレー形式で雷電の初土俵にまつわる人間物語をつなぎ語る。こういうの、続けてほしいな。
『おさん茂兵衛』 春野恵子 ・曲師 一風亭初月
文楽の『大経師昔暦』を知ってると、「浪曲はこうやるのか」と比較出来て、面白さも倍増。しつこい野郎をちょっと懲らしめるための「入れ替わり」が招いた悲劇とでも言うか…。そこを悲劇で片づけることなく、人間ドラマとして確立させているのが原作者・近松門左衛門の腕であり、読み上げる恵子師の腕でもある。何度かこの人で聴いているが、すっかり彼女のものにしているのが立派。おさんの苦悩がじんじんと伝わって来る。
『木村長門守堪忍袋』 松浦四郎若 ・曲師 虹友美
小圓嬢師匠がこの会から遠ざかっている今、出演者最古参の四郎若師匠。いつものように折り目正しく、人柄が伝わって来る舞台。講談でおなじみの『難波戦記』のうち、悲劇のヒーローである木村重成の物語。この時点で、重成は死を予感していたのだろうか…。それとも…。などと色んな「画」を頭の中に浮かばせてくれる丁寧さ、繊細さで、たっぷりと聴かせてくれた。
『あゝヒロシマ』 真山一郎 ・オペレーター 真山幸美
今年は「マツケンサンバですか?」みたいな派手なお召しで登場の、一郎師であった。原爆による後遺症が、父と息子の日々に、あまりも重くのしかかる。痛ましく、重苦しい物語だった。こういうネタは、歌謡浪曲だからこそ聴衆の胸に、深く切り込んでいくことができるんだろうなと思いながら聴いた。作者の飯山栄淨は広島の福山市在住の興行師だという。作者の思いのこもった一曲であった。
『徳川家康 人質から成長の巻』 天中軒雲月 ・曲師 沢村さくら
いつも客席をグイグイと引っ張てくれる雲月師。今、最も脂がのり切っていると言っていいのではと、迫力ある舞台から感じた。丁度、大河ドラマが家康ものだから、このネタがチョイスされた、というわけではないだろうけど、ドラマを観ている人にはタイミングよかったかもね。小生は観てないけど(笑)。この話の中でも「どうする?」と思う場面もあったが、よほど強運な人なんだろうな、その都度、なんとかなるんだわな…。
『千人坊主』 京山幸枝若 ・曲師 一風亭初月
皆さまお待ちかね、幸枝若師匠、今年もトリで登場。ええですな、このお師匠はんはホンマに。トップバッターで「リレー浪曲」を披露した二人の愛弟子の舞台を、裏でニコニコしながら聴いている顔が思い浮かぶ。『千人坊主』も何度も聴いているが、軽妙洒脱、ケレン味たっぷりに、客席にうねりを起こさせる手腕たるや、もう。このネタはケレンの中にもちょっぴり辛口のシーンもあって、いかに左甚五郎とて、奢りを持つことがあるので、そこはビシっとイワしたらなあかん!って感じで。で、「それで?それで、どうなんねん?」と思っていたら「丁度時間となりました」(笑)。これ、結構お客さん方お待ちかねです(笑)。
(^^♪
浪曲は、落語や浄瑠璃などと同じく、「聴きながら場面の情景を想像して楽しむ」芸能。こういう芸により多く接することで、想像力が養われるのは言うまでもない。「想像すること」を怠ると、ボケるのも早いでっせ、きっと。ビジュアル先行の現代社会だが、そういう環境が当たり前の若い人たち、案外、ボケるの早いんちゃうか? などと心配してあげる今日この頃。まあ、人のことは言えませんけどね(笑)。
(令和5年2月25日 日本橋国立文楽劇場)
在大阪香港永久居民。
頑張らなくていい日々を模索して生きています。