<ハートを射貫く蹴りを見舞ってくれた李小龍。小生と香港の「腐れ縁」はこの人のせいだ(笑)>
車公廟で厄払いした後、向かったのは「香港文化博物館(Hong Kong Heritage Museum)」。車公廟からは、ブラブラと歩いて10分ほどの地。ここにこういう博物館があるのは知っていたが、在住中に訪れる機会はなかった。いや、その気があればいつでも行けたのだが、眼中になかったというのが正直なところ(笑)。でも今回行ってみて、「ああ、もっと早くから行っておくべきだった」と、後悔することしきり。なんかねぇ、もう「ここ、俺のために作られた博物館なの?」ってくらい、小生のハートを射貫いたのであります!
いきなりこの人に痛烈な蹴りを食らってしまう。 もうこれだけでも十分と言うもんだ! 何と言っても、我々世代は李小龍(ブルース・リー)世代。恥ずかしながらヌンチャクも持ってたよ(笑)。ただし、あまりの運動神経の鈍さから、すぐに親に取り上げられて、もっぱら弟の所有物になっていたけど(笑)。
香港文化博物館は、2000年12月17日に開館。中庭を中心として複数の建物を組み合わせた伝統的な四合院建築を取り入れている。12の展示室に分かれ、それぞれに香港や近隣の華南地域の文化や芸術を物語る貴重な遺物を展示している。有料の展示コーナーもあるが、小生が今回見て回ったのは、すべて無料展示のコーナー。もうそれだけでお腹いっぱい、大大満足だった。
まずは、粤劇(俗に広東オペラ)の発展をたどるコーナーへ。粤劇は2006年に「國家級非物質文化遺產」に登録され、2009年にはユニセフの「非物質文化遺產」に指定されている。要するに、国の重要無形文化財でありユニセフの無形文化遺産であると。文楽や歌舞伎と同じですな。
↑↑↑ 盂蘭盆など節気には、小生が住んでいた香港仔(Aberdeen)にも戲棚(粤劇小屋)が建って、毎夜、粤劇の公演が行われていた。こうした節気には香港各地に粤劇小屋が建つ。竹で組まれた、丁度、昔の夏祭りのお化け屋敷や見世物小屋のような造りだが、見た目がとにかく派手で、目を引く。かつてはこういう小屋は常設小屋だったのかな…。ねぇ、そういうのをちゃんと説明読んでこないとあきませんわな、せっかく行ったんやから(笑)。
↑↑↑ 舞台はこんな感じ。一見、京劇の広東語バージョンのようだが、似て非なる。京劇が男優の芝居なのに対し、粤劇はどちらかと言うと女優中心の印象。もちろん言語は広東語。また、京劇のような飛んだり跳ねたりの派手なアクションはなく、美声を聴かせるという感じ。何度かナマの舞台を観たことあるが、好きになるには時間がかかりそう(笑)。吳宇森(ジョン・ウー)監督の映画の『帝女花』(1976)は、粤劇の名作の同名作品の映像化。
↑↑↑ これは楽屋の再現。被り物や付け髭がある。衣装はとにかく派手である。化粧はやっぱり京劇の影響を受けているのかな?それとも、歴史的には粤劇の方が古いのかな…。まあ、中国各地には同じような歌唱劇がそれぞれにあるので、一概にどれが古いの新しいのは決めつけられないかも。
↑↑↑かつての利舞臺(Lee Theatre)を再現した展示。昨年、香港で大ヒットした映画『梅艷芳(邦:アニタ)』でも、この時代の利舞臺が再現されていた。往時を知らないのに、なぜか懐かしく感じる。当時は粤劇の公演も盛んだったとのこと。ちらっと中が見えるけど、粤劇の古い映像が流れている。現在は利舞臺廣場(Lee Theatre Plaza)に生まれ変わり、大型ショッピングビルとして賑わっている。風情の無いビルだけど(笑)。ちなみに現在、小生が思いつく粤劇の常打ち小屋は北角(North Point)の新光戲院(Sunbeam Theatre)くらいかな…。
この粤劇コーナーを免費=タダで見せてくれるだけでも満足なのに、免費の展示はまだまだ続く(笑)。
「瞧潮香港60+(Hong Kong Pop 60+)」は、2021年7月にオープンした常設展で、香港のポップカルチャーの歩みを紹介するコーナー。戦後のベビーブームから高度経済成長、国・地域を超えた文化の浸透(とりわけ日本文化)、香港地場のポップカルチャーの確立、そこに携わるクリエーターやアーティストの高いスキル等々を紹介している。
これはもう、小生にはど真ん中の内容。香港の戦後の香港文化というのは、本当に興味が尽きない。
例えば映画。小生はまず、李小龍にハマり、許三兄弟のMr.Boo!ミスター・ブーシリーズ、殭屍(キョンシー)もの、もちろん成龍(ジャッキー・チェン)に洪金寶(サモ・ハン)や元彪(ユン・ピョウ)、周潤發(チョウ・ユンファ)を核としたノワールもの、周星馳(チャウ・シンチ―)の無厘頭(ナンセンス・コメディ)…と延々と香港映画を観続けてきた。そして未だに香港映画を観ている(笑)。映画のチラシ(ポスター?)が一挙に紹介されているコーナーがあったけど、「もしかして、全部観てるかも??」ってくらい懐かしいタイトルが並ぶ。
展示はもちろん映画だけではない。歌の世界の展示も圧巻だ。戦後の北京語歌謡曲の時代から現代に至るまで、その時代ごとのヒット曲や人気歌手が紹介されている。曲だけでなく遺品も多く展示されている。BEYONDの黄家駒(ウォン・ガーゴイ)のギター、梅艷芳(アニタ・ムイ)や張國榮(レスリー・チャン)のステージ衣装、羅文(ローマン)が1970年代に読売テレビの「全日本歌謡選手権」で10週勝ち抜いた時のトロフィー等々、いずれも「おおおお!!!」と声を上げたくなる物ばかり。よくぞここまで集めてくれた、そしてきちんと展示してくれたと感謝感激の「香港オタク」な小生であった。
「瞧潮香港60+」網上精華遊
どんな内容かは、香港文化博物館のYouTubeでざっくりと見ることができる。ぜひ見てほしい。館長さん直々に案内してくれている。
そしてこの流れで「平凡・不平凡 ― 李小龍(A Man Beyond the Ordinary: Bruce Lee)」へと。
いや~、もうこれはすごい! 様々な権利が渦巻いているため、写真撮影は禁止だったが、写真なんか撮ってるヒマないくらい充実の展示内容だった。
香港文化博物館では、李小龍が亡くなって丁度40年となる2013年7月20日、李小龍基金會(Bruce Lee Foundation)他との共催で、第一期展示「武.藝.人生―李小龍(A Man Beyond the Ordinary: Bruce Lee)」を開幕。貴重な関連品を約600点を展示した。
第二期となる今回は、李小龍81歲の誕生日となる2021年11月27日に開幕。映画の衣装やポスター、私物などのほか、ゆかりの品々を約400点展示している。『唐山大兄(邦:ドラゴン危機一発)』に始まる邦題に「ドラゴン」と付くシリーズはもちろん、それ以前に米国で大ヒットしたテレビドラマ『青蜂俠(The Green Hornet)』、さらには1950年代の子役時代の映画『細路祥』などのパンフも展示されており、「ドラゴン」だけではない長い芸歴や、日本ではあまり知られていない一面も知ることができる。
また『龍爭虎鬥(邦:燃えよドラゴン)』や『死亡遊戲(邦:死亡遊戯)』のアクションシーンの絵コンテなども今回、初公開されている。「なかなか絵上手いこと描くやんか」と感心した。色々構想を練りながらも、『死亡遊戯』の完成を見ることなく、彼は生涯を終えてしまったわけですなぁ…。
截拳道(ジークンドー)の銘板や『死亡遊戯』で着ていた黄色のファイティングスーツ(って言うのかな?)、おなじみの木人椿なんぞは、李小龍世代には嬉しい限り。
来場者が光と影のビジュアル空間で、李小龍の格言「動,如水;靜,如鏡;反應,如回聲(“Moving, be like water; still, be like mirror; respond like an echo.”)』を実感できるような展示の仕方に象徴されるように、とにかく見せ方が上手で、「また来たい!」と思わせる。これを無料で見せてくれるという香港政府と李小龍基金會の太っ腹ぶりは感謝しかない! このまんま日本に持って来て、入場料5,000円くらいになっても、文句を言われないレベルだと思う。誰か~、持って来~い!
李小龍展は2026年までの5年間限定開催。次の永久居民権更新は2026年2月がリミットだが、それまでに「第三期」の展示を観てみたいな…。イヤ知りませんよ、第三期があるのかどうかは(笑)。
展覧内容を詳しく紹介した映像を李小龍會(Bruce Lee Club)がYouTubeに上げているので、ぜひご覧を! ↓↓↓
從未曝光 :李小龍展覧會 現場直擊 2021
まだまだ続く免費の展示、お次は「金庸館」。香港映画の大きな柱の一つ「武侠片」。その原作となる「武侠小説」で香港の大衆文化に多大な影響を与えてきた作家の金庸(1924~2018)の展示ギャラリーである。これだけのビッグネームにもかかわらず、こうした展示スペースは香港で初めてという。2017年3月から公開されている。
『天龍八部』、『神鵰俠侶』、『書劍恩仇錄』、『鹿鼎記』、『射鵰英雄傳』、『笑傲江湖』、『飛狐外傳』等々、映画やテレビドラマで何度も映像化されている。また日本語訳されて日本でも人気の作家である。こうした作品の初版本や直筆原稿など約300点を展示されており、武侠好きの小生にはたまらない内容とボリュームである。最近はこうした作品がオンラインゲーム化されて、人気だというから、唯々「えらい時代ですなぁ」ってところ(笑)。
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こうして充実の香港文化館を体験できた。お腹いっぱいでめでたしめでたし。いずれの展示も立派なパンフレットをこれまた免費で用意している。これもまた見ごたえ読みごたえ満点以上のもの。何から何まですばらしい。ちなみに日本の某ショップでは「平凡・不平凡 ― 李小龍」のパンフがなんと!6,600円で販売されていた(笑)。タダで配ってるものにこの値段はないやろ。香港文化館に怒られまっせ(笑)。
『男たちの挽歌』 <日本語吹替収録版> [Blu-ray]
【特典映像】
●チョウ・ユンファ インタビュー●オリジナル予告編1
●オリジナル予告編2●日本版予告編
在大阪香港永久居民。
頑張らなくていい日々を模索して生きています。