【毒書の時間】今年読んだ本 2022年

アイキャッチ画像:嗚呼、無敵のBI砲よ…。(昭和46年3月2日、蔵前国技館 インターナショナルタッグ選手権試合 馬場、猪木vsM.マスカラス、S.アリオン)>


今年最後のブログエントリであります。実は、「鋭意作成中」の稿があと6本あるんですが、そのうち完成するでしょう(笑)。ま、そんな感じでマイペースで気楽にやってます。

今年、アントニオ猪木が亡くなりました。いつかその日が来ると覚悟はしていたものの、実際にその死に直面して、なんと自分の人生で大きなウエイトを占めていたんだろうと、改めて存在の大きさを確認した次第。物心ついた時からプロレスを見ていた小生。その頃は何と言っても、ジャイアント馬場、アントニオ猪木の「BI砲」全盛時代。馬場のアメリカ仕込みのスケールの大きな試合運びと、獲物を狙う野獣のような猪木の試合運びで、向かうところ敵なし状態のタッグチャンピオンでした。冒頭の写真は、そんな全盛時代に「千の顔を持つ男」ミル・マスカラススパイロス・アリオンがBI砲に挑戦した試合の一番の見せ場。マスカラスに猪木が十八番のコブラツイストを決め、カットに入るアリオンを馬場がコブラツイストで迎撃という、まあなんとも絵になるシーンであります。思い出せば、色んな相手との色んな試合のシーンが目に浮かびます…。いずれまた、日テレG+で放映してくれる日を心待ちにしています。日テレG+さん、頼みます!

馬場が急逝した時も、心の芯を失ってしまったショックを受けましたが、猪木の死もまた、あの頃のプロレスにワクワクした小生にとっては、自分の過去が消えてしまうような気持になってしまいました…。

野球漫画の巨匠、水島新司も世を去りました。拙ブログをご愛読の皆さまご承知の通り、小生、物心ついた時からのホークスファンであり、同時に南海以来、ホークスを舞台に描かれてきた『あぶさん』のファンでもあります。故に、水島先生の死は、ホークスの歴史を彩ってきた「名選手の死」のような寂しさを感じてしまいました…。

前口上が長くなりましたが、先ほどの映画に続き、今度もまた、だれも興味ない「今年読んだ本」です。お薦め本はコメント付きです。もちろん、個人の感想ですが(笑)。よければお手に取ってみてください。

*価格は出版元提示の税込み価格、もしくはAmazon.comの税込み価格。

【1】バナナ』 獅子 文六 ちくま文庫 968円 (2月9日読了)

【2】雲上の巨人 ジャイアント馬場』 門馬 忠雄 文芸春秋 1,870円
著者は、東京12チャンネルの『国際プロレスアワー』の解説者だった。東スポの先輩、山田隆氏は日テレで全日本の解説、櫻井康雄氏はNETで新日本の解説。両氏に比べると、門馬氏はあまりしゃべりの上手い印象ではなかったが、本書もそのままの雰囲気(笑)。まあでも、これが門馬さんのキャラであって、決して嫌いではない。さて、G馬場は小生が幼いころはインターナショナルのシングル、タッグの二冠王として、視聴率30%台を常時稼いでいた超スーパースター。その馬場の入門時から逝去前最後の試合まで、取材者として、友人として35年にわたって裏も表も見てきた著者だからこその一冊。と言っても、我ら馬場ファンにすれば、今更感満載のエピソードあれこれづくしだったが、門馬節にかかるとそんなネタでも「へー!」「あ、そうやったん!」ってなるから不思議なもんだ。タイトルも秀逸。(2月17日読了)

【3】渦 妹背山婦女庭訓 魂結び』 大島 真寿美 文春文庫 869円
『妹背山婦女庭訓』はこうやってできたのか!ってのを、虚構の中に史実を、その中にエンタメ感覚を、という具合にそれこそ見事な「渦」を練り上げて読ませてくれる。特に中盤以降のお三輪にフォーカスする流れは『妹背山~』の組み立てそのもので、うまいこと作ってはる。納得の「直木賞」「大阪ほんま本大賞」受賞作。文楽マニアがにやける実在の作者や芸人もぞろぞろと登場するのが楽しい。ただ、ちょっと言わせてもらうと、名前になんでも「はん」を付けて呼ぶのは、大阪弁の文法では誤用法。はんは「ア段」、「エ段」(たまに「オ段」)で終わる名前にだけ付けるもの。そこは結構違和感あった。他は上々出来やのに勿体ないことしはった。「大阪ほんま本大賞」の名が泣くというもんでっせ、これは。と、言いつつ、絶賛発売中の続編の文庫化が待ち遠しい(なんで文庫化まで待つねん、けち臭い奴や!と近松半二に怒られそうw) (3月5日読了)

【4】『しらふで生きる 大酒飲みの決断』 町田 康 幻冬舎文庫 737円
(3月31日読了)

【5】『かわたれどき』 畠中 恵 文春文庫 792円 (4月15日読了)

【6】『上海: 特派員が見た「デジタル都市」の最前線工藤 哲
平凡社新書 1,012円 (4月29日読了)

【7】『紅椿ノ谷 ─ 居眠り磐音江戸双紙 17 』 佐伯 泰英
双葉文庫 品切れ重版未定(文春文庫にて「決定版」発行中) (5月7日読了)

【8】『三島由紀夫紀行文集』 三島 由紀夫 佐藤 秀明 (編集) 岩波文庫 935円
三島由紀夫の紀行文。いつも三島はエンタメ作品を中心に読んでいるので、たまにはこういうのもええかな?ということで読でみたんだが、三島センセ、そりゃもう子供みたいにテンション⤴⤴で、そのテンションの高さに参ってしまい、読むのに結構エネルギーを消費した(笑)。特に本書のおよそ半分に及ぶ『アポロの杯』は、「こういう紀行文は凡人には無理!」と思わせる高尚な「西洋芸術論」であった。とは言え、興味ある対象は人それぞれで、凡人でもSNSやブログの文章から、ご本人がその旅行にいかにテンション⤴⤴かが伝わってくるものも少なくない、ってな感じのことを編者である佐藤秀明が解説に書いていた。小生、西洋芸術には興味は沸かないが、在りし日の香港のタイガーバームガーデン、瀞峡の描写に爆笑し、渋谷や銀座など日本各地を描いた小文が気に入った。こういう身近な土地を書いたのを集めてください、編者さん(笑)。(5月27日読了)

【9】『捨雛ノ川 ─ 居眠り磐音江戸双紙 18』 佐伯 泰英
双葉文庫 品切れ重版未定(文春文庫にて「決定版」発行中) (6月2日読了)

【10】『甘夏とオリオン』 増山 実 角川文庫 792円
新刊で出た時、「読まねば!」と思いつつ、時は流れ文庫化されて、ようやく今(笑)。表紙カバーの女の子、主人公の桂甘夏が東住吉区出身ってのも、男社会に風穴を開けようともがくところも、只今売り出し中の桂二葉を思わせるが、彼女の師匠の米二師は失踪してないよ(笑)。しかし、なんでございます、突然師匠が失踪、落語の原野に取り残されたような弟子たち…。それでも、弟子たちが原野で行き倒れにならぬように、多くの「指標」を残してくれていた。稽古で得るもの以上だったと思う。特に末っ子弟子の甘夏にとっては、貴重すぎる時間だったというのが、彼女の言動から感じられる。少々無鉄砲なところもあるけど、魅力的な女流噺家である。作品は師匠はいまだ戻らずで終わるが、甘夏に弟子入り志願者が現れる!「ドドーン」と追い出し太鼓が聞こえるような「サゲ」に拍手喝采。
(6月8日読了)

【11】『久生十蘭短篇選』 久生 十蘭 岩波文庫 1,001円
5月に東京へ行った折に、神保町の三省堂書店の仮店舗への移転直前だったので立ち寄った。当代人気作家の好きな作家、本のフェアみたいな「著名人選書フェア」が開催中で、複数の作家がこの本を薦めていた。カッコいい名前だし、著名人や人気作家の皆さん方がそんなに勧めるならと読んでみたら、これが大当たり!これぞ「天の配剤」ってやつだ。どの作品も洒落てるというか、奥深いというか、巧緻極まりないというか…。こういう作品を「短編」に仕立てることができる才能に惚れ惚れする。と言うかだ、どの作品も長編小説としても成り立つだけのストーリーが盛り込まれている。「予言」「無月物語」「雪間」「猪鹿蝶」「母子像」なんぞが印象深い。「幻の銘酒」にでも出会った心地よさで読み終えた。十蘭マニアを「ジュウラニアン」と呼ぶんだが、遅まなきながら小生も「ジュウラニアン」の仲間入りをしそうな予感(笑)。 (7月11日読了)

【12】『梅雨ノ蝶 ─ 居眠り磐音江戸双紙 19』 佐伯 泰英
双葉文庫 品切れ重版未定(文春文庫にて「決定版」発行中) (7月18日読了)

【13】『クジラアタマの王様』 伊坂 幸太郎 新潮文庫 825円 (8月1日読了)

【14】『青い枯葉: 昭和ミステリールネサンス』 黒岩 重吾
光文社文庫 990円 (8月11日読了)

【15】『三体III 死神永生 下』 劉 慈欣 早川書房 2,090円
ついに『三体』全5巻読了。3年かかりましたよ(笑)。一冊読み終わる度に莫大な<読書エネルギー>を使い果たしてしまうので、合間に軽い本をはさみながらゆっくりと読んでいたが、最後の1冊を目の前にして「この1冊でついに終わるのか」と、読み終える前からすでに「三体ロス」状態(笑)。そして読み終えてしまうと同時に襲う達成感と喪失感。これまた話題の『三体X』はそれらを埋めてくれるのかどうか…。読むしかないかな(笑)。さて本題。いやまあしかし、こういう終わり方をするのか、そう来るか!みたいな…。もはや「三体世界」との攻防は、はるかはるか昔の話となり、地球どころか太陽系、さらには宇宙は「紙切れ」1枚によって事実上の破滅を迎えてしまうとは…。第3部の主人公でありながら、節目節目で判断ミス?を犯してきた女、程心を、まさかの再登場、宇宙のどっか遠くに行ってしまった関一帆が救う形で物語は終わりへと一気に加速する…。終盤100ページくらいは手が止まらなかった。宇宙で人類はホントにこの二人だけになってしまったのか…。「三体が三体を超える」ような幕切れだった。 (8月17日読了)

【16】『子をつれて』 葛西 善蔵 岩波文庫 版元品切れ古書店で購入
(8月23日読了)

【17】『破船』 吉村 昭 新潮文庫 605円
「本屋大賞超発掘本」ということで、手に取った。作中、貧しい村に襲い掛かった「痘瘡(もがさ)」こと天然痘は、現在では根絶されたとされているが、今また未知のウィルスに人類は翻弄されている。そんな時代だからこそ「発掘」された作品だろうな。最初からただならぬ雰囲気で進められる、リアリティ溢れすぎるほどの筆致に、ページをめくる手が止まらない。村に恵みをもたらす「お船様」はなかなか登場しないが、その到来を待つ風習は、村の存亡がかかっているだけに、神事と言えるだろう。「お船様」がどのように村に恵みをもたらすかは、ぜひとも本を読んで確認していただきたい。村の貧困ぶりや両親へ思いなどが主人公の伊作の目を通して鮮明に描かれている。天然痘から回復してもなお、「山追い=隔離(実質上の村からの追放)」に遭うのは過酷ではあるが、村の生き残りのためにはこの手段しかなかった。母、弟を「山追い」に出す伊作の慟哭が痛ましく胸に響く…。読み手に容赦のない作品である。 (8月28日読了) 

【18】『野分ノ灘 ─ 居眠り磐音江戸双紙 20』 佐伯 泰英
双葉文庫 品切れ重版未定(文春文庫にて「決定版」発行中) (8月30日読了)

【19】『あの夏の正解』 早見 和真 新潮文庫 605円
人気作家・早見和真、初のノンフィクション。2020年、春の選抜大会に続き中止となった夏の甲子園。「目指すもの」を失った球児や指導者は、その現実に何を思ったか。その現実から得るべきものがあったのか…。そして、そこに「正解」はあったのか…。本書では愛媛の済美、石川の星稜という強豪2校を丁寧に取材し、多くの「ことば」を導き出した。多分、野球をよく知らない人でも引き込まれるような球児たちの「ことば」の数々。中でも小生が感じるところ大だったのは、今やスワローズの次代の捕手として期待される内山壮真(当時は星稜の主将)。著者がそうであったように、読む側も「お、こいつは…」と身構えてしまう発言が印象深い。また、監督という立場から大人たちは「中止」という事態をどう受け止めていたかも浮き彫りにされている。全国の野球部でもそれぞれのドラマがあったのだろう。きっと「正解」はその数だけあるんだろう。たまたま夏場定例の「野球本1冊読む」で手にした本だが、大当たりだった。 (9月1日読了) 

【20】『記憶の盆をどり』 町田 康 講談社文庫 770円 (9月9日読了)

【21】『落花狼藉』 朝井 まかて 双葉文庫 836円 (9月19日読了)

【22】『邪悪催眠師』 周 浩暉 ハーパーBOOKS 1,320円
表紙買いのつもりが、どんどん深みにはまってしまい、最後はすっかり作品の世界に迷い込んでいた。いや~、面白かった。結構分厚いので「挫折するんやないか?」と、たじろいだけど心配はなかった。そこは登場する多くの「催眠師」たちが見事に催眠術にかけて操ってくれる(笑)。人気の『死亡通知書』の前日譚という位置づけらしいのだが、そっちは未読なので、まっさらな気持ちで入っていけた。冒頭のホラー的な事件を発端に波紋がどんどん広がる。その都度、主人公の刑事・羅飛や彼が頼る催眠師・凌明鼎が次々登場する強敵に対峙する。「こいつか?」と思われる人物も入れかわり立ち代わり現れるが、見事に予想を覆してくれる展開にページをめくる手が止まらない。このへんの進め方、とても上手いね。さすが中国で超売れっ子というのがよくわかる。読み終わってみたら「世の中の凶悪事件はすべて催眠術が引き起こしてるんやないかえ?」と思ってしまうほどだ。気になる作家がまた一人増えた。続編もあるようなので心待ちにしたい。 (9月29日読了)

【23】『鯖雲ノ城 ─ 居眠り磐音江戸双紙 21』 佐伯 泰英
双葉文庫 品切れ重版未定(文春文庫にて「決定版」発行中) (10月2日読了)

【24】『パノラマニア十蘭』 久生 十蘭 河出文庫 836円
阿倍野のジュンク堂で河出文庫希少本フェアみたいなんやってて、そこに並んでたんで迷わず購入。しかしまあ、なんでも書いちゃうね、このお方は。パリにお上りさんよろしく乗り込んできた母親のパリ評というか酷評が愉快な『「女傑」号』には、宋美齢も登場。見事にこれまでの宋美齢のイメージを覆されてしまった。宮崎滔天を寅之助さんと呼ぶこのお母さんが一番の女傑。開戦前夜の欧州や大戦にまつわる短編集かと思いきや、後半は時代物が続く。漂流もの二編は特に印象深く、『ボニン島物語』に描かれる小笠原諸島の楽園ぶりが目に浮かぶ。伝え聞きなのに南国の原色の風景が鮮やか。このあたりの文章の上手さ、運びの上手さは作者の魅力。『半未亡人』、『田舎だより』も印象的。いずれの話も「うんうん、なるほど、そうか~」と感心したり面白がったりして読んでいたら、最後に「ところがどっこい、そうはいくか」とオチがあって、落語のように楽しめるのがいい。落とし方が、またスマートでおしゃれ!。ますますのめり込みそうな十蘭の世界である。
(10月17日読了)

【25】『荒海ノ津 ─ 居眠り磐音江戸双紙 22』 佐伯 泰英
双葉文庫 品切れ重版未定(文春文庫にて「決定版」発行中) (10月20日読了)

【26】『おばあさん』 獅子 文六 朝日文庫 990円 (10月28日読了)

【27】『シーソーモンスター』 伊坂 幸太郎 中公文庫 924円
8作家共演による「螺旋プロジェクト」が順次文庫化。8組のうち伊坂幸太郎と朝井リョウ以外は名前を知ってるだけ。新しい冒険を前にしたワクワク感がある。だから本読みはやめられない。ということで、まずは一番馴れ親しんでいる伊坂作品から。バブル期と近未来を舞台にした二編が収められている。全く独立した物語なのに、微妙につながっている。こういうの書かせたら、ほんと上手いよ、この人は。『シーソーモンスター』はバブル期が舞台ということだが、華やかな泡沫の世俗よりも、古今東西共通の対立構図、「嫁姑対立」が焦点というのがユニークと言うか横向いてるなぁと言うか(笑)。この作品が伏線にひとつになって、後半の『スピンモンスター』で回収みたいな感じで展開。こちらは「巻き込まれ系」「どうしてこうなった系」「気づいたら大事件の渦中に系」の安心と信頼の伊坂王道パターンだった。そしてこの作品でも『クジラアタマの王様』に登場した「パスカ」なる便利グッズが(笑)。もはや欠かせぬアイテムとなるのか? (11月15日読了)

【28】『死にがいを求めて生きているの』 朝井 リョウ 中公文庫 968円
「螺旋プロジェクト」の2冊目。伊坂作品のような海族、山族の際立った対立は無いように展開してゆくも、最後、幼いころから「山族」の堀北雄介に振り回されて、挙句に植物状態となってしまった南水智也の章で「あ、これは立派に対立やな」と感じる。物語の最初のころは「こういう奴いてるね」と思ってた雄介も、次第にウザく感じるようになる。これはもしかしたら読者=小生自身も雄介と対立しているのかなぁ、などと思いながら読んでいると、安藤与志樹という、まるで小生自身のことを書かれているような奴が出てきて「うわぁ!朝井リョウって絶対こういうのが出てきて、俺の心にナイフを突き刺しよる」とイヤな感覚に(笑)。こういうことするのよ~、朝井リョウって…。主題でもある「ゆとり教育」の弊害は後の世に色々と言われているけど、それ、世代に関係ないよな…。その弊害のサンプル、例えば雄介のようなとにかく承認欲求に追われている奴、いつの世代にもいるよ。 (11月30日読了)

【29】『ウナノハテノガタ』 大森兄弟 中公文庫 792円
「螺旋プロジェクト」3冊目。この先は初めての作家が続く。これがきっかけとなり「これからもこの人、読んでいこう」となるか、その逆か。いずれにしろ、このプロジェクトがなかったら出会わなかった作家たちかもしれないので、いい機会を作ってもらった、と中公文庫の掌の上でゴロゴロされている(笑)。で、今作は原始時代が舞台。名前が覚えられず、行きつ戻りつでページ数の割には時間を要する。伊坂作品では対立を煽るAIの名前だった「ウェレカセリ」、今作では賢人か預言者かわからないけ変なおっさんだが、海=イソベリ、山=ヤマノベの対立を見通していた人。ヤマノベがどうしても「山の辺の道」を思い出させてしまう(笑)。今は対立していないマダラコとオトガイもいずれ対立する日が来るのか…。果たして「ウナノハテノガタ」は理想郷なのか、地獄なのか…。いくつかの余韻を残して物語は終わる。巻末のプロジェクト参加8作家座談会、面白し。 (12月27日読了)

【30】『正岡子規ベースボール文集』 復本 一郎 岩波文庫 462円
今年は《野球伝来150年》に《鉄道開業150年》、さらには《文楽座150年》と150年尽くし。そんな2022年に、岩波文庫が世の野球ファンに送った本書で今年の読書を締めくくり。「若草や子供集まりて毬を打つ」という句に、小生らの子供自分の放課後の光景を思い出す。また満塁の場面を読みし歌「今やかの三つのベースに人満ちてそぞろに胸のうちさわぐかな」で、今も昔も満塁というのはハラハラドキドキの場面なんや!と当たり前のことながら感心したり、地獄で閻魔大王にユーモア交えながら身の上話を陳述しつつ、野球好きをにおわせる小品『啼血始末』も楽しい。虚子、碧梧桐らによる子規と野球のエピソード文も興味深い。子規による野球解説文に、「ボールの動きこそが野球の中心」なる旨の一文があるが、野球の面白さをここまで簡潔に述べた文章はないのではないか。野球好きはぜひともご一読を!解説も入れて120ページほどなので、2時間あれば読み切れる親切編集(笑)。 (12月29日読了)

ということで、今年は丁度30冊。これ以外にも『月刊ホークス』やら週刊本やら、ムック本やらの雑誌関係も入れると60冊程度か。古本屋へ持って行っても十把一絡げで大した値にもならないので、増えていく一方。もう足の踏み場もありません。汚部屋へ一直線であります(笑)。まあでも、いつも言うように、本との出会いは天の配剤。読まなければ知らなかったこと、出会わなかった世界がいくつもあって、これだからやめられない。

拙ブログ、ひとまず今年はこれにて最終。また、数日後に新年最初の稿が上がっていますので、よければお越しくださいませ。

ってことで、皆々様、

新年快樂!

プロレス観るのが最高に楽しかった時代の「日プロ四天王」。全員、あっちの世界に行ってしまいました…(左から大木金太郎、吉村道明、G馬場、A猪木)

 


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