【上方芸能な日々 文楽】令和4年4月公演 第二部

アイキャッチ画像:芝居絵をきっちりと画面に収めるのは難しい。これは比較的うまくいった方。それでも両端は切れてしまった。そもそも前に人はいっぱい立っているので一瞬を逃せない(筆者撮影)>


今年は《鉄道開業150年》、《野球伝来150年》にあたる。また、人形浄瑠璃の一座に「文楽座」が生まれてから150年になる。小生の母校、大阪市立田辺小学校も来年、創立150周年を迎える。それはどうでもいいか(笑)。その「文楽座150年」に合わせて、1階の展示室では、初春公演に引き続いて「文楽座の150年Ⅱ」が開かれ、番付にも『文楽座命名150年』なるカラー見開きの特集が掲載されている。

で、これまでクソミソに貶してきた番付(公演パンフ)だが、ここのところなかなか奮闘している。小生的には首(かしら)がカラーで掲載されるようになったのは、大きいと思っているが、他にも演目に合わせた特集ページも新設され、やはりカラーで掲載されている。「観劇のお供」であるとともに「文楽の資料」でもあるのだから、こういうのは非常に好ましい傾向である。

今回、第二部の『摂州合邦辻』に関するカラー特集が組まれている。「ゆかりの地」ということで四天王寺や月江寺、閻魔堂などが紹介されている。いずれも文楽劇場からは歩いてでも行ける距離なので、訪ねてみるのもいいだろう。歩くにはちょうどいい季節である。あ、小生は行きませんよ。もうそこらへんは行き倒してますから(笑)。

4月3日のお座席。このところ、ケチって二等席が多いので、たまには床直下で聴きましょう(笑)。千秋楽は写真撮るの忘れたけど、二等席に舞い戻る(笑)

人形浄瑠璃文楽
令和4年4月公演 第二部

摂州合邦辻

「万代池の段」

合邦 三輪
俊徳丸 
浅香姫 南都
入平 津國
参詣人、次郎丸 咲寿
清友 ツレ 清方

「万代池」ま《まんだいいけ》ではなく《んだいいけ》と読むのだそうで、以前からてっきり住吉区の万代池のことと思っていたが、勘違いしていたことがわかった。ねぇ、40年も文楽に通っててこれですわ、恥ずかしい限りですわ。そもそも「万代池」は四天王寺の南門のそばにあったらしく、碑も残っていたが、空襲で失われたとのこと。番付の「ゆかりの地」に紹介されていた。「天王寺の話やのに万代池が舞台なんや~」と、これまで思っていたということは、今まで番付で紹介されてなかったからか、はたまた、小生がぼや~っとしていたからか…。恐らく後者(笑)。ま、ひとつまたかしこなりましたな(笑)。

さてここは掛け合い。それぞれ持ち味を発揮していたが、三輪さんの合邦は年輪を感じ、希の俊徳丸は絶望感をよく伝えていた。咲寿も参詣人のワサワサとした野次馬感、次郎丸の横恋慕をしっかり語り分けていた。最近、本当に実力を上げていると感じる場面だった。

「合邦住家の段」

中:睦 清馗

「端場」というのは、クライマックス(切場)へ向けての一種の《煽り》のようなポジショニングだと思うのだけど、今回はそういうのが感じられなかった。「薄いなぁ…」という印象。清馗はがんばってたのにね…。

前:呂勢 清治

そんな「薄さ」をぶとっばして余りあったのが、こちらのご両人。期待するのは玉手のクドキだが、怒りMAXの父としての合邦の言葉が凄まじく響く。「無念で身節が砕けるわい!」やの「思ひ切るに切られぬということはないわい!」やのと小生自身が父親に怒られているような感じで、身が縮こまる(笑)。なんというか、もはやこれは「ロセイズム」の真骨頂ですな。「ロセイズム」…。我ながらええ言葉思いついたわ(笑)。

切:呂 清介

そして切場後半は、正真正銘「切語り」となった呂さん。いやもうほんと、待たせられたわ。「文楽座150年」のタイミングを待っていたとしたら、これは国立劇場側の失態ですな。「旬」というものがございますよ、こういうのは。

それはさておき。

玉手のモドリに向かうに従ってバシバシと響き渡る清介師匠の三味線に声がかき消されるのは、つらいところ。「そこ、ちゃんと呂さんの語り聴きたいとこなんやけど」と思うも、三味線とてここが鳴らしどころ聞かせどころなんで、気合が入るのは当たり前。とは言え、合邦が狂乱の娘の玉手を刺し殺し「これが坊主のあろうことかい」、「オイヤイ」と嘆くあたりは呂さんの真骨頂で、客席もよい反応だった。

人形は、2日目見物の際には、俊徳丸の玉佳がコロナで休演し玉翔が代演。千秋楽には玉佳も復活しており、二人の俊徳丸を見ることができた。小生は玉佳の俊徳丸を楽しみしていたが、両者ともに零落の身の上ながら品格を感じとることができた。

「切語りになりました~!」なお披露目の口上などもないのが文楽の舞台だが、なんかもっともっと「3人の切語りが誕生しました!」みたいなのをアピールできなかったのかな…。今公演、っていうか三部建てになってからは一部は活況なのに、二部、三部と進むに連れて客席が寂しくなっていく。今公演は特に際立っていたんじゃないかな。千歳太夫なんか気の毒でならない…。

(令和4年4月3日、24日 日本橋国立文楽劇場)


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【出演】「摂州合邦辻 合邦住家の段」:竹本津大夫・鶴澤寛治(6代)、吉田玉男(初代)、桐竹勘十郎(2代)、吉田玉五郎 ほか
[昭和48(1973)年7月朝日座で収録](約80分)


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