今日は土曜日。第17回大阪アジアン映画祭も今日を入れて残すところ2日となった。以前は、この土日に一気見という感じだったが、もうそんな体力も気力もなく(笑)。と言うか「これは見逃せない!」と気持ちが動くような作品が少なかったと思う。まあ、そこは縁があったかないかで、観れば大抵は「おお、観てよかった!」なんだけど、今年はそんな「引き寄せ」もなかった。ということで、この日の1本目、ABCホールへ。
TAIWAN GALA SCREENING|特集企画《台湾:電影ルネッサンス2022》
良辰吉時 邦題:縁起良き時(第1話) <ワールドプレミア上映>
「睇戲」と書いて「たいへい」。広東語で、映画を見ること。
台題『良辰吉時』
英題『Twisted Strings Episode 1』
邦題『縁起良き時(第1話)』
公開年 2022年(電視電影)
製作地 台湾・シンガポール
言語:標準中国語
評価 ★★★★(★5つで満点 ☆は0.5点)
導演(監督):黃熙(ホアン・シー)
編劇(脚本):黃熙
總策劃(エグゼクティブ・プロデューサー):侯孝賢(ホウ・シャオシェン)
主演(出演):李康生(リー・カンション)、黃仲崑(マイケル・ホアン)、吳大維(デヴィット・ウー)、周采詩(チョウ・ツァイシー)、顏毓麟(ケニー・イェン)、姚以緹(ヤオ・イーティー)、段鈞豪(タン・チュンハオ)、薛仕凌(MC40)、謝欣穎(ニッキー・シエ)
特別演出(特別出演) : 張艾嘉(シルヴィア・チャン)
<作品導入>
太平市の葬儀場。納棺師のタンが運び込んだグォ・ボーシャンという男の遺体が手違いで消えてしまう。一方、父親の葬儀のために久しぶりに集ったグォの3人の子供たちはそれぞれ結婚や仕事で問題を抱えている。葬儀の準備を進めるも、体裁ばかりを取り繕うことしか考えておらず、実は父親の遺産のことにしか興味がない。ひとまず見つかったグォの遺体には厚塗りの死化粧が施され、タンの仕切りのもと葬儀は執り行われる……。<引用:「第17回大阪アジアン映画祭」作品紹介ページ>
本作は、CATCHPLAYグループの影響原創、台湾百聿數碼創意、シンガポールのMediacorpが共同制作し、3月27日から毎週日曜日にHBOチャンネル、ネット配信でCATCHPLAY+、HBO GOで7週連続で同時共同配信、追ってシンガポールのMediacorp meWATCHでも配信される。台湾によくある「電視電影=テレビ映画」である。今作はその1回目配信。よって上映時間は54分と短く、短編もしくは中編という感じ。
上の写真は、納棺師の唐念生(演:李康生/リー・カンション)が通夜の晩に親族代表が儀式で着用する衣裳を着るところ。この状況に至るまで、亡き父を送る郭家の3人の子供たちは、まったく意見がまとまらない。3人とも口では立派なことを言う割には、あれもこれも押し付け合いばかりなもんだから、事が一向に進まない。頭にあるのは父の遺産のことなんだが、と言って遺産を巡る泥仕合というわけでなく、「度を超えない」程度のユーモアで描かれており、それが案外「親の葬式ってこういうもんよね~」と現実的に見えてくる。なかなか上手い作り方をしている。
話は現実感あふれるものだが、舞台は架空の都市「太平市」。上述の通り、7話仕立てで、太平市の7日間を描く。1話完結なのか連作形式なのかは、本作を観ただけではわからない。
面白い作品なんだが、なぜこれが上映されるのか、ちょっと意味不明でもある。侯孝賢(ホウ・シャオシェン)が噛んでいるからか、張艾嘉(シルヴィア・チャン)、李康生といった有名どころが出演するからか、『強尼·凱克(邦:台北暮色)』の黃熙(ホアン・シー)監督だからか…。わからんねぇ。今回も台湾作品は短編が多かったが、そもそも台湾は今、これという作品が少ないのか…。色んな事を考え巡らせてしまう本作の上映である。
郭家の3人の子供だが、長男を吳大維(デヴィット・ウー)。何かの度に「We are Family!」と言うのが空々しい。こいつが一番勝手な奴だった。長女が周采詩(チョウ・ツァイシー)。とにかく葬儀屋への注文がうるさい。さらには父のそばでずっと面倒を見たのは自分だの主張ばかりしている。二男を顏毓麟(ケニー・イェン)。新型の洗濯機の開発に情熱を注ぐが、結局は遺産をあてにしている。3人の間で常に寡黙になすべき作業をこなしていた小蘇(スーさん-演:姚以緹/ヤオ・イーティー)ってお手伝いさんだっけ?ちょいと位置づけの不明な人だった。この人も遺産を狙ってるのかもしれない…。
終盤、街はずれ?で何をしてるのかよくわからんが、張艾嘉(シルヴィア・チャン)演じる吳月女なる女性が現れる。そこへ現れたのが死んだはずの郭家の父親(演:黃仲崑/マイケル・ホアン)。遺体保存の冷凍庫で目覚めて、逃走したのだ。遺体は消えたのではなく、逃げたのである。では消えた遺体は誰なのか?郭家の骨壺に収められた遺灰は誰なのか?そしてラスト、納棺師の唐念生が「父さん、やっと一緒に暮らせるね」と語りかけた仏さんは誰なのか?思い起こせば「?」だらけ。これだけ「?」が残るということは、それまでに散々ばらまかれた伏線がほとんど回収されずに終わったということか、あるいは小生が鈍感なだけなのか…。
残る6話を観ないことには、なんとも言えないが、なんか色々と消化不良で残ってしまう作品だった。ただ、ブラックユーモアとして非常に面白い作品だったので、★を4つ付けた。あ、そうか!これはブラックユーモアなんだ、回収されないまま「へぇ~~!」と思わせるのが狙いなんだな…。とすれば、黃熙(ホアン・シー)にしてやられたというところか。う~ん…。
《良辰吉時》第一集預告
(令和4年3月19日 ABCホール)
『侯孝賢の映画講義』 侯孝賢 (著), 卓伯棠 (編集), 秋山珠子 (翻訳)
1980年に『ステキな彼女』で初監督を務めて以来、『風櫃の少年』『冬冬の夏休み』『童年往事』『恋恋風塵』『悲情城市』『戯夢人生』などの映画を世に出して台湾ニューシネマの興隆を牽引し、世界的にも台湾を代表する映画監督として知られる侯孝賢。本書は侯孝賢が2007年に香港バプテスト大学で行った講義の記録である。
在大阪香港永久居民。
頑張らなくていい日々を模索して生きています。