【上方芸能な日々 文楽】令和4年初春公演 第三部

人形浄瑠璃文楽
文楽座命名一五〇年

令和4年初春文楽公演 第3部

そして第3部に突入。

文楽劇場の椅子も座り心地が改善されて数年たつが、たとえ座りやすくなっても、やっぱり丸1日座ってるのは腰痛持ちには厳しい。「ほな、3回に分けて来たらよろしいがな」と言われるかもしれないが、それはそれで面倒なのでいっぺんに見るわけで(笑)。

それにしても、客席が寂しい。1部はそこそこの入りだったが、2部、3部と進むにつれて、ご見物が減ってゆく。連休のさ中でこれである。この先、平日なんぞはどうなってゆくんだろう…。と言って、目を引くような演目でもないんだわな~…。

というわけで、ごちゃごちゃ文句言いながらも1部、2部をそれなりに堪能しての第3部は『染模様妹背門松』から。これも人が死にそうな予感がしてならない(笑)。いっそのこと、「今公演の演目で何人死んだかクイズ」でもやって、正解者から抽選で1名に現金100万円!とかやると、どっと客が来るかもよ(笑)。ま、そういうのは芸に対して失礼やわな、あかんあかん。

染模様妹背門松

数ある「お染久松もの」の本家本元という位置づけでいいのかな、これは。その「数ある」に関しては、番付に黒石陽子氏の解説があって、これが大変勉強になる読み物だった。ここんところ、カラーページの内容もさることながら、総体的に内容がよくなっているのはいいことだ。

「生玉の段」

希 清馗 ツレ 亘 清方

床の4人はというと、平々凡々に終わったという印象。希と清馗なら、もう一工夫あってもよかったと思うんだが…。まあ、そこらが難しいところなのかな。決して悪かったわけではないんやけどなぁ。希自身がどことなく久松っぽいんで(ゴメン!)、期待してたんだがな…。

いつものことながら「夢」と書かれたプラカード?みたいなんが出てきて「今のは夢物語ですよ~」って教えてくれる。これが出てきて舞台暗転、その間に「質店」の舞台設営って段取り。で、「夢」のプラカードというか看板、何気に近代化してない?光ってるように見えたんだが、錯覚? 舞台さんも色々工夫してはるんやろな。

「質店の段」

千歳 富助

色々としんどかった。まあ、ここは「皮足袋」での久作が息子である久松をいさめる場面がメーンとなるんだろう。小生はそう思っている。「今日を真つ直ぐに暮らすこそ人間なれ」なんてねぇ、自分が実際に父親に怒られてるみたいに胸に響き渡るんですわ(笑)。なんかそう思って聴いていたからかもしれないが、千歳さんは久作を追いすぎていた、久作の造形に傾注しすぎていた、そう聴こえてしまった。そこ、すごくしんどかった…。そこを救った形になったのが玉也さんが久作を「慈悲深い親」っぽく遣ってくれたからかな。

「蔵前の段」

藤 宗助

正月公演では、心中シーンと遺体は見せないという「暗黙のルール?」があるらしいが、今回は珍しく原作通りにお染の死体をさらして久松も自死して幕となる。何度も観てる演目だけど、お染の死体を見たのは初めてかもしれない。

さて、織さんと宗助という組み合わせで、どんな「蔵前」になるのかワクワクしてたんだが、織さんは休演につき藤太夫さん代演。

お初の父親の太郎兵衛が唱える「白骨の御文章」がキモ。我が家は西本願寺派なんで、「御文」は法要の度に耳にしており、その都度「ああ、ホンマや、なるほどなぁ~」などと感心しているわけだが、死を決意した二人にはどう響いたか…。

ラストのお染の亡骸のそばで首を掻っ切る久松…。なかなか正月らしい凄惨な、それでいてなんだか美しいシーンだった。こういうのって、文楽だから味わえる感覚のような気がする。

さて藤太夫さんだが、お染のクドキが宗助の糸に乗ってとてもよかった。と、同時に織さんだったどう料理していたかな?と想像もする。また今度、織さんで聴かせてほしい。ご快癒を祈る!

1部から3部まで、ええお席。正月やから張り込みましたで!

戻駕色相肩

心中シーンでお客を帰すわけにはいかないから、こういうのをつけるわけですな、多分。ましてや正月公演やしね。小生なんぞは、まったく気にしないのやけど。

「廓噺の段」

次郎:睦 与四郎:靖 かむろ:希 咲寿 小住 文字栄
清友 團吾 友之助 錦吾 清允

文楽劇場では平成17年(2005)以来の上演とか。「ザ・追い出し」って感じで、特に語るべき内容のないものだった。

☆彡

さてさて、こんなウダ話を綴っていたら、「呂太夫、錣太夫、千歳太夫の3人が切語りに昇格!」という吉報が舞い込んできた。「遅いわ、今頃かい!」というのが正直なところ。多分「文楽座命名150年」のタイミングでということなんだろうけど、3人いっぺんにというのは景気がよろしい。これで多くの「切場」を「切場」として聴くことができるようになる。若い門弟の「白湯汲みデビュー」も楽しみ。3人には「切」の重責をしっかり背負った浄瑠璃を聴かせていただきたい。よろしい頼みますよ!

(令和4年1月9日 日本橋国立文楽劇場)


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←「染模様妹背門松」質店の段[昭和52(1977)年1月朝日座収録](60分) 懐かしの朝日座での収録映像。竹本津太夫・野澤吉兵衛 久作/吉田玉男(初代)、お染/吉田簑助、久松/吉田玉昇 ほかでメンツも懐かしい。


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