<アイキャッチ画像:駐港解放軍(陸海空)三軍による国旗並びに特区旗掲揚に興奮し、はしゃぐ香港のお子達。お子さんというのは、兵隊さんを見ると喜ぶもんなんだなぁ… (香港01)>
香港の祖国回帰、すなわち香港返還から24年の日は、中国共産党100周年の日でもあった。前夜、記念のレセプション「文藝晚會」が開催されたことについては、先日触れたが、関連でネットを漁っていたら、「香港01」に興味深い記事があったので、それについて記しておこう。ちなみに、青字が「香港01」の記事を小生がざっくり翻訳したパートで、黒字は小生の所感など。
香港升旗隊總會と駐港部隊三軍儀仗隊合同升旗儀式(掲揚式典)が、培僑中學で行われた。
香港升旗隊總會というのは、学校や各団体での国旗・特区旗の掲揚儀式を広く浸透させることを目的に2002年7月1日に設立された組織。国旗・特区旗の掲揚儀式によって「国家の認識、国家への関心、国民意識の増強」を目指す。まあ、ガチの左派組織ですな。駐港部隊三軍儀仗隊は文字を見てお分かりのように、香港に駐屯する解放軍の陸海空三軍による儀仗隊のことである。そして培僑中學*は、これまたガチの左派系の学校として知られている。左派系の政治家や学者にはここの出身者が多いし、芸能人にも出身者が多い。意外にも『蘋果日報』で健筆を振るったコラムニストの陶傑もここの出身である。まあそんな次第で、この学校でかくなる式典が開催されるのは、何の不思議でもなく当然の成り行きと言える。※香港の中学は日本の中高一貫校に相当するので、中学1年から6年まである。
しかしまあ、行事とは言え、左派系の学校だからと言え、教育現場に解放軍が乗り込んでくるのだから、香港も随分と変わったもんだ。いつも言うように「これが返還というもんですよ」。それ以上でも以下でもない。
すでに教育局では昨年12月11日に、教育機関に国旗掲揚に関しての通達を行っている。「来年(2022年)の1月1日からはこうしてね」という通達事項はざっくりと下記の内容である。
1.小中学校と特別支援学校では、登校日には必ず国旗を掲揚すること。元日、香港特別行政区成立記念日(7月1日)、国慶節(10月1日)には、児童、生徒は登校の上、国旗掲揚式を挙行すること。旗竿に余裕があれば同時に特区旗も掲揚。国旗掲揚式に当たっては、国歌演奏と合唱を行うこと。
2.毎週1回は必ず国旗掲揚式を行うこと。また、特別な行事の日、例えば卒業式や運動会、水泳大会などでも国旗掲揚式を行うことを推奨する。
3.幼稚園についても、園舎のスペースや施設、環境などを考慮し、小中学校への通達事項に従い、できるだけ国旗や特区旗を掲げ、国旗掲揚式を行うこと。
4.高等教育機関も「2021年國旗及國徽(修訂)條例」の修正事項と小中学校への通達事項を参照の上、開講日の国旗掲揚と週1での国旗掲揚式の実施をよろしくね。
と、まあこんな具合で、とにかく年がら年中、五星紅旗を揚げておきなさいよということである。インター校や在港外国人の子女が通う学校は、各校の事情に任せるけど、できるだけのことはやってくださいよとも言う。日本人学校はどうするんでしょうな。
というわけで、この7月1日に国旗、特区旗の掲揚式が学校で行われるのは、すでに決まり事となっているので当たり前の光景ではあるんだが、前述のとおり、ここに解放軍が入って来るというのが、なんとも当世香港事情という感じで、「おお、そういう時代になってきたか!」と思ってしまう。小生の記憶にある限りでは、英軍はこういうことはしてなかったよな…と思うが…。いや、わかりませんよ、あったのかもしれないけど。まあ、英国と中国では香港に対する立場が全く違うわな。いくら一国両制度と言っても、「一国」である以上は、こういうことがあるのは当然と言えば当然だ。
培僑中學辦升旗禮には、同校の生徒のほか多くの小学生や市民も出席。児童や生徒は、解放軍によるホンモノの掲揚式典に興奮して国旗を振った。式典前には出席者は起立し、国旗掲揚の瞬間を記録するため、子供も大人もスマホで撮影を続けた。
生徒代表が普通話でスピーチを行い、「中国は現在、繁栄と富強への道を歩んでいる」と述べ、2020年にはCOVID-19の感染拡大にあたって、多くの党員が率先して自らの命を犠牲にしてウイルスと戦ったことを思い出すとも述べた。また、本土が香港の発展を支援し、香港が金融危機と新型ウイルス流行に抵抗するのを助けたと指摘した。
中学3年で香港升旗隊の旗手を務める洪(ホン)さんは、中国共産党を称賛し、国旗掲揚のたびに掲揚の責務を光栄に思っていると言う。「中国は共産主義でも西洋の資本主義でもありません。中国は独自の社会主義で、この100年間で西側の資本主義を凌駕しました」とも語る。
ふ~む。ガチの左派校ともなれば、ガチの左派教育も行き届いていると見え、生徒さんも超優等生の発言をするなぁ…。この調子でいけば、洪小姐はいずれは左派の立法会議員とかになって、50年不変が終わったころにはバリバリの政治家として活躍してるんだろうな…。26年後の彼女を見たい気がするが、まず小生がそこまで生きているかどうか(笑)。
洪さんは、返還後の生まれだが、返還前の生活については肯定的にはとらえていないと言う。「返還後、少なくとも毎日3食食べることができ、安定した環境で暮らせている。社会に混乱があっても抑止できるので、生活に支障はありませんよ」とキッパリと語る。そこで国安法に対する見解を「香港01」の記者が問うと「『国安法』は必読ですよ!」と、これまたキッパリ。「返還24周年以降に施行していたら手遅れになったかもしれなません。国家の安全を守るのは中国人の責任です!」とまたまたキッパリと語った。彼女は、他国の植民地になるよりも、国家の管理下にある都市である方が良いに決まってるとも言う。また、北京など大陸の大都市に行くのが好きな洪さんは、実際に自分の目で本土を見て、「一部のメディアで報道されている本土とはまったく異なり、発展ぶりには感嘆するばかりです。とっくの昔に本土は完全に一新されているんですよ」と言う。
ホント、左派教育が徹底しているな…。国安法は必読ときたか(笑)。ただ、激しく同意するのは、最後の発言。中国は本当に日々変貌しているので、半年もすればガラッと街の様子が変わってしまっている。在住中は、よく深圳へおねーちゃん遊びに出かけていたが、15年間、深圳の変貌ぶりを見ていればよくわかる。反中、嫌中の一派の人たちの中には、それこそ日中国交正常化のころ、すなわち50年ほど前の中国のイメージしかないような感じの人が多いが、コロナ終息後に一遍、中国に行ってごらんなさいと言いたいな。行かないだろうけど(笑)。
6歳半の蘇(スー)君は、「兵士になると怪我をしやすいので、なりたくない。将来は警官になりたい」と言う。「警察の隊長」になりたいとさえ思っているのだそう。「警察官は泥棒捕まえてお金を稼ぎ、怪我をしないでしょう」と、実に子供らしい(笑)。彼はまた、「今日は多くの兵隊さんを見ることができたので、とてもうれしかった。将来的には旗手の一員になりたい」とも。
6歳の雷(レイ)さんは、両親と一緒に掲揚式典を見学した。「テレビで見る国旗掲揚式典とは違い、とても感動しました」と興奮気味に答えた。雷さんの母親も「これまではの金紫荊廣場(Golden Bauhinia Square)の国旗掲揚式典会場へ行っていたが、ここまで近くで見たのは初めてで、間近に見た解放軍兵による式典ははめっちゃ壮観でした!」と大喜びだ。
林(ラム)さんも9歳の娘を式典に連れてきた。今日の休日を親子で活動する日に当てて、娘に祖国回帰と共産党創立100周年の意義を認識させることができたと語った。
いやいや…。学校教育のみならず、家庭教育も相当行き届いてますなぁ。ここに紹介された3人のお子さんは、まだ培僑中學には入学していない。ってことはご両親がバリバリの左派で、幼稚園~小学校も左派校に通わせていたってことだろうか?もっとも、左派校に通うということは英領時代からも普通にあったことで、今更「香港は変わった」と言うためのネタにしても「あんた、アホちゃいますか?」と香港では笑われるだけだ(笑)。
この記事で「香港01」が言いたいのは、国旗掲揚の半義務化の浸透と左派校には解放軍までやって来る、ということだろうな。
このほか、香港教育工作者聯會黃楚標中學でも升旗禮を開催し、祖国回帰24周年を祝う式典や児童、生徒によるパフォーマンスが行われた。
香港教育工作者聯會黃楚標中學もバリバリの左派校と言えるだろう。校名の頭に付く香港教育工作者聯會(教聯)は左派系の教員組織で、民主派の中核組織でもある香港教育專業人員協會(教協)とは正反対の位置にある。設立は1975年で、現在の会員数は約42,000人とのこと。教協が現在、ほとんど虫の息状態にある中、今後は教聯が教員組織の大本営として組織を強化し、活動を活発化させるだろう。で、この香港教育工作者聯會黃楚標中小學は、そんな教聯の正式名称を冠する唯一の学校で、黃楚標(ビル・ウォン)が創立した「一條龍學校=小中一貫校」である。この黃楚標という人物も話せば長いのだが、文革時代、三歳の時に家族と大陸から流れ着き、その後、裸一貫でのし上がって、今や「深圳王」だの「深圳の李嘉誠」だのともてはやされている立志伝中の人物である。もちろん親中派の大物の一人でもある。まあ、そんな学校だからこういう行事があっても不思議ではないし、やらない方がおかしいってもんだ。
こうして教育の現場でも、中国が浸透していく。そもそも中国に返還されたのだから、当たり前のことである。ただ、2019年の「逃亡犯条例改正」がご破算となった時点で、抗議行動を収めておけば、ここまで加速はしなかっただろう。その後に破壊と暴力の限りを尽くした結果である。あの暴動さえなければ、この人たちもこんなに早く移民せずに済んだはずだ。COVID-19の感染拡大により海外渡航が実質不可能となる7月1日を前に、移民潮はピークに達し、空港は別れの涙があふれていた…。
『キッド』 (幻冬舎文庫) 文庫 – 2021/6/10
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香港の将来を危惧する小難しい本よりも、香港がちょいちょい登場する小説の方が楽しいよ!
在大阪香港永久居民。
頑張らなくていい日々を模索して生きています。