【睇戲】逆向誘拐(港題:逆向誘拐)

2021香港インディペンデント映画祭 in 大阪

今回の「香港インディペンデント映画祭」上映作品の中では、異色の存在と言えるのが、この日観た『逆向誘拐』。キャストがまったく「インディペンデント」ではなく、売れ線の商業映画そのもの。香港の作家、文善の同タイトルの原作は2013年に台湾の「第3回島田荘司推理小説賞」を受賞しており、翻訳され日本でも2017年に文藝春秋から刊行されている。なぜこの作品が年月を経て今映画祭で上映されるのか?そこに注意しながら観た。

「睇戲」と書いて「たいへい」。広東語で、映画を見ること。

逆向誘拐 題:逆向誘拐

港題『逆向誘拐』 英題『Napping Kid』
邦題『逆向誘拐』

公開年 2018年 製作地 香港 言語:広東語
評価 ★★☆(★5つで満点 ☆は0.5点)

導演(監督):黃浩然(アモス・ウィー)

領銜主演(主演):蘇麗珊(セシリア・ソー)、吳肇軒(ン・シウヒン)、邵仲衡(デビッド・シウ)
主演(出演):朱鑑然(ケビン・チュウ)、泰臣(タイソン・チャク)、蔣祖曼(ジョウマン・チェン)、楊秉基(バンキー・ヨン)、陳曾寧(ニン・チャン)、王敏德(マイケル・ウォン)、張雪芹(キャンディ・チャン)、岑珈琪(カキ・シャム)
客串演員(ゲスト出演):葛民輝(エリック・コッ)、陳豪(チャン・ホウ)、曾江(ケネス・ツァン)、邵音音(スーザン・ショウ)

【作品概要】

自主映画にも関わらず、香港映画を代表する若手俳優やベテラン俳優など豪華キャストが集結。サスペンス映画の形を借りて、若者が彼らよりも上の世代に対して抱く絶望感、そして反乱をエンタテイメントとして描いている。<引用:2021香港インディペンデント映画祭公式サイト

第10回大阪アジアン映画祭Hong Kong Nightで上映された『点対点(港:點對點)』の監督、黃浩然(アモス・ウィー)の2作目。製作した高先電影(Golden Scene)は香港の商業映画の製作、配給以外にも邦画など海外作品の配給、さらには自主製作作品にも力を入れており、なかなか好感の持てる映画会社である。『点対点』も同社の製作だったことから、黃浩然監督とは良好な関係を保っているようだ。

本作は上述のように、香港の作家、文善の同名の推理小説の映画化である。小生自身は、早い時点で犯人の目星と事件のカラクリを感づいたので、ほとんど推理することなく「な、こういうカラクリやろ」みたいな感じで、一人ドヤ顔でエンドロールを観ていた次第(笑)。そういう点では、非常に物足りない、噛み応えのない作品ではあった。まあ、そこはどうやって伏線回収してゆくのかなと、そのへんのお手並みを拝見しようという、かなり意地悪な観方をしていたわけで、こういう客はイヤだろうな、作り手は(笑)。

ポスターが洒落てますな。こういうアニメタッチの映画ポスター、香港ではかなり珍しい。こういうタッチを好む世代を狙ったのかな?香港のレビューをチラッと覗くと「Z世代に好評」らしい。ってことは20歳代がターゲットか。男主役が吳肇軒(ン・シウヒン)、女主役が蘇麗珊(セシリア・ソー)。この二人はまんまZ世代。準主役の邵仲衡(デビッド・シウ)は俺世代(笑)。

王敏德(マイケル・ウォン)演じる香港の国際投資銀行のジョンのもとに恐喝メールが届く。犯人の要求は3日以内に約HK$190,000用意しろというもの。さもなくば台湾の大手ネットワーク企業の機密融資を公開すると。ジョンは大学時代の学友の刑事、唐輔(邵仲衡/デビッド・シウ)に調査を依頼。唐輔はジョンの部下、アイリーン(張雪芹/キャンディ・チャン)の元夫でもある。捜査中、この二人の複雑な思いが交錯するのがなんとも妙味ではあった。

事件の発端は、この会社の顧客金融アナリスト、 小儒(蘇麗珊/セシリア・ソー)がファイルが紛失していることを発見したことに始まる。コンピュータ部門の同僚・阿植(吳肇軒/ン・シウヒン)の手も借りてファイルを探すも見つからず。疑わしい社員4人が隔離され、本格的な捜査へと入ってゆく…。

「人質」が機密資料のデータファイル、身代金が身代金にしては安すぎるHK$190,000(約305万円)という、奇妙な誘拐事件の真相やいかに、というストーリー。

吳肇軒と蘇麗珊はこれもかつて大阪アジアン映画祭で上映された『私たちが飛べる日(港:哪一天我們會飛)』出演コンビ。蘇麗珊は楊千嬅(ミリアム・ヨン)演じる余鳳芝の少女時代役で出演していた。すっかり失念していたが名前は「どっかで見たよな~」とは感じていたので、完全にはボケてないようだw。吳肇軒はいつの間にやらえらい売れっ子になってる…。刑事の元妻で脅迫されてる会社の社員、アイリーン役の張雪芹(キャンディ・チャン)は『点対点』の女主役で、Hong Kong Nightのゲストで来阪していたので覚えている。さらにはTVBのドラマ『皆大歡喜』で「古装篇」「現代篇」どっちも出ていた。しかしあんなバカバカしいドラマ、何年間も毎晩やってたもんだな(笑)。ずっと観てた小生も問題だがww。

蘇麗珊(左)と吳肇軒。背景の古い建造物はいつごろのものだろう…。こういう建造物はもうほとんどない。仕方ないね、残していても使えないし、危険なだけだからな

ゲスト陣が充実のメンバー。葛民輝(エリック・コッ)をはじめ、『点対点』で主役だった陳豪(チャン・ホウ)、超ベテランコンビの曾江(ケネス・ツァン)、邵音音(スーザン・ショウ)が吳肇軒演じる阿植の深圳の祖父母役。で、この一族が富豪であるというのもまた、焦点の一つなのである。

曾江の元気な姿を確認出来てよかったよかった!

で、結局のところこの作品がなぜに「インディペンデント」なのかは、明確にはわからずじまい。「お前、どこを見てるんだ!」とお怒りの方もあろうかと思うが、わからないのだから仕方ない。香港では、結構大掛かりな宣伝展開もしており、またメジャーどころの出演陣がそろうなど商業路線ど真ん中だと思うのだが、しいて言えば、犯人の本当の狙いは金でもなく、ハッキングした機密情報でもなく…。それを得るために事件に関わる人々に「行動」をさせる…。行動はやがて社会を巻き込む…。等々に既存の仕組みへの挑戦というか…。そういうところにただの商業映画じゃない「インディペンデント」らしさがあったのかな、というところか。

ま、難しく考えずに「ああ、いい時間を過ごした」と思えれば、それで観た甲斐があったというところだ。香港のいろんな場所も観られて嬉しかった。

うまくやったじゃん、てな会話…。誰が何をどううまくやったかは、観てのお楽しみ(笑)

《逆向誘拐》(Napping KId)正式預告片

(令和3年6月22日 シネ・ヌーヴォ)



 


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