「台湾巨匠傑作選2020」、二作目に選んだのは、ずーーーーっと観る機会を逃していた『星空』。いや~、やっと出会えましたね!
星空 台題=星空
「睇戲」と書いて「たいへい」。広東語で、映画を見ること。
台題『星空』 英題『Starry Starry night』
邦題『星空』
公開年:2011年 製作地:台湾、香港、中国
言語:標準中国語
評価:★★★★☆(★5つで満点 ☆は0.5点)
導演(監督):林書宇(トム・リン)
原著(原作):幾米(ジミー・リャオ)『星空』
編劇(脚本):林書宇
監制(製作総指揮):陳國富
總制片人(プロデューサー):王中磊
主題曲(主題歌):五月天(Mayday)『星空』
領銜主演(主演):徐嬌(シュー・チャオ)、劉若英(レネ・リウ)、庾澄慶(ハーレム・ユー)
演員(出演):曾江(ケネス・ツァン)、石錦航(シー・チンハン)、蔡淑臻(ジャネル・ツァイ)
特別介紹(イチ推し):林暉閔(リン・フイミン)
客串演出(ゲスト出演):李烈(リー・リエ)
特別演出(特別出演):桂綸鎂(グイ・ルンメイ)
【あらすじ】
大好きだったおじいちゃんが亡くなり、不仲な両親は離婚寸前。深く傷ついたシンメイの前に現れたのは、孤独をまとった転校生のユージエだった。台湾の国民的絵本作家ジミー・リャオによるベストセラー絵本を、原作の世界観をそのままに映像化した、珠玉のファンタジー。
期待以上の映像美。大自然という台湾映画の武器
考えてみれば、もう9年前の映画…。日本の版権所在不明が原因で、日本公開は3年前の2017年。それから3年。ホンマにやっと出会たという思いでいっぱいだ。すでに、林書宇(トム・リン)監督作品は『百日告別』でそのテイストはつかんでいるので、余計に今回の『星空』に期待してしまう。で、結論を先に言えば、期待以上の作品だった。それ以上、言うことなしってくらいに。
台湾の絵本作家、幾米(ジミー・リャオ)の『星空』が原作。まあ、読んでないわな。これからも多分いやきっと読まないわな。それでも「ああ、この場面、絵本のあそこのページかな?」なんて思わせてしまうようなきれいな映画。幾米の作品はこれまで香港で2作が映画化されたのだが、香港では残念ながらこの作品のような映画は撮れない。と言うか、それは香港映画の役目ではないと思う。この作品は、先に観た『盗命師』でも触れたが、台湾映画の大きな武器である大自然という映像資源を生かして、絵本の世界を描くことに成功している。林書宇をはじめとする撮影スタッフの腕のほどがよくわかる。期待以上の美しい映像。
「次が読める」展開なのに「キュン」となってしまう…
『ミラクル7号(港=長江7號)』で好演した徐嬌(シュー・チャオ)演じるシウメイ(小美)はシャイな少女。ビジネスに熱を上げすぎる母親には劉若英(レネ・リウ)、父親は庾澄慶(ハーレム・ユー)と、台湾ポップス好きにはたまらない豪華布陣。この両親の不仲、さらには愛すべき祖父の死が、彼女に思い切った行動をとらせることになる。
シウメイのクラスに転校してきた小傑(ユージエ)もまた、DVな父親から逃げるように引っ越しを繰り返す母子。このユージエ、決して他人に心を開かないエッジの立った少年なんだが、手先が器用。「心の中のパズル」のピースが一つ足らなくて悩む者同士、シウメイとユージエは惹かれ合ってゆき、二人の「大冒険」が始まる…。
二人が意気投合して、クラス対抗の「装飾コンテスト」で飾り付けに夢中になるんだが、採点の朝、飾りは無残なことに…。これをやった悪ガキ、あいつはきっとシウメイに気があったんだぜ、きっと。目が嫉妬してたもん。そこに現れた生意気な転校生…。なんか悪ガキの気持ちもわかる…。シウメイ、察してやれよってところではあった。この辺、「次が読める」展開なんだけど、グッとスクリーンにくぎ付けになり、ついつい前のめりで観てしまう。いやいや、小生にもまだまだ少年の心が残っているってことだな(笑)。
察してやるには、ちょっとしんどいけど、わかってやろうとは思ったシーンとしては、シウメイが母親と外食に出かけたとき、食事中に急に「二人で踊りましょう!」と言って、躊躇するシウメイと踊り始めた母親。あの時、母親もまた「心の中のパズル」のピースが欠けていたんだろう。もう引き返せないくらい冷え切ってしまった旦那との関係、そして我が子の将来のこと…。色んなことが去来し、ついに泣き崩れてしまう。童話が原作ながら、大人の世界の残酷な物語もしっかり織り込んで、単なるメルヘンで終わらせていないところがいい。
クレジット上では徐嬌は主演、小傑を演じた林暉閔(リン・フイミン)は「特別介紹(イチ推し)」ってことだが、まぎれもなく、この二人が主役。「冒険」が進むにつれて、急に大人になってゆく二人がまばゆく、また危なっかしく…。やがて夢うつつの出来事だったがごとく、小傑は…。57歳のおっさんを「キュン」とさせる展開だった。ちなみに林暉閔は『君の心に刻んだ名前(台題=刻在你心底的名字)』で、いじめにあうゲイ男子生徒役だった。かなり雰囲気が違うね。
クラス担任役は五月天の石頭こと石錦航(シー・チンハン)。林書宇監督作では『百日告別』にも出演していたので、「チーム林書宇」みたいなもんかな(笑)。シウメイのおじいさんに香港の大御所、曾江(ケネス・ツァン)。さすがに今ではもう、朝のニュースの合間にビゲンヘアカラーのCMは流れてないよな?
大人になったシウメイ。父と離婚した?母親が住むパリの街角で見つけたジグゾーパズルの店…。ラストシーンがこれまた童話の世界であり、「ああ、そう来たか、やっぱりw」な展開だが、彼女の視線の先にだれがいたのかは明かされず…。でもまあ、そこはね、ってところだが、あえて詮索はしなくてもいいだろう。桂綸鎂(グイ・ルンメイ)のあの潤んでいるかのような目を見ればわかるってもんだ。
ピースが一つ欠けたジグソーパズル。そのピースを探すシウメイの「旅」は、この瞬間に終わったんだろう。多分、小傑も…。そこは観る者にお任せという、お決まりのパターンながらも、実にきれいな終わり方に拍手喝采を送りたい気分だった。
今は冬だけど…。ああ、スイカ食いたい!〈〈〈 観た人ならわかるww。
五月天(Mayday)の主題歌もすごいい!MVのストーリーは映画とは違うのも見どころかな。これはこれでいい!
(令和2年11月16日 シネ・ヌーヴォ)
在大阪香港永久居民。
頑張らなくていい日々を模索して生きています。