【睇戲】『人魚姫』(港題=美人魚)

大阪府の「緊急事態宣言」が解けた最初の週末。これを「完全収束宣言」と勘違いしている人が多いのかどうか知らんが、急に人出が新型コロナ以前に戻ってしまい、「いやいや、まだ入院してる人もおるし、激減したとは言え、日々感染者も出てるし…」と少し戸惑いと不安もある。心斎橋筋商店街なんてすごい人で、一刻も早く立ち去りたいと思ったほどだった。

一方で、映画館の営業自粛要請が解除され、徐々に営業再開するシアターが出てきて、その点はよかったよかった。ってなわけで、久々に映画館へ出動した。

この日行ったシネマート心斎橋は、座席を一席ずつ空けてチケットを販売。神経質な小生は二席ずつ空けてほしいなぁとも思うのだが…。まあ、「感染予防対策」って難しいよな。

さて、そのシネマート心斎橋では、再開に合わせて5月29日まで日替わりで無料上映が2本設定されている。過去の上映作品だが、見逃し作品を無料で観られるチャンス。さっそく小生の見逃し作品、香港のコメディースター、周星馳(チャウ・シンチー)が監督の『人魚姫』を観た。日本では2017年1月に公開されているが、恐らく「周星馳自身の出演がないなら、ええか」と見送ったと記憶。見逃しと言うよりも「見送り」であったw。

人魚姫 港題=美人魚

一応、「香港映画」ということになるんだろうけど、どっから見ても「大陸映画」。ちなみに風景の多くは深圳だが、映画自体の撮影は広州で行われている。周星馳が広東省で撮影を行ったのは『少林足球(少林サッカー)』以来のこと。

「睇戲」と書いて「たいへい」。広東語で、映画を見ること。

港題『美人魚』 英題『The Mermaid』
邦題『人魚姫』
公開年:2016年 製作地:中国、香港
言語:標準中国語
評価:★★☆
監製(プロデューサー):周星馳(チャウ・シンチー)
導演(監督):周星馳
編劇(脚本):周星馳
領銜主演(主演):鄧超(ダン・チャオ)、林允(リン・ユン)、羅志祥(ショウ・ルオ)、張雨綺(キティ・チャン)
主演(出演):盧正雨(ルー・ゼンユー)、范淑珍(ファン・シュウチェン)
客串(ゲスト出演):林子聰(ラム・ジーチョン)、吳亦凡(ウー・イーファン)、白客、孔連順、張美娥、徐克(ツイ・ハーク)、鄭冀峰(ジェン・イーフォン)、楊能、文章(ウェン・ジャン)、李尚正(リー・ションチン)、田啟文(ティン・カイマン)、錢國偉(ウィルソン・チン)

<あらすじ>「少林サッカー」「西遊記 はじまりのはじまり」のチャウ・シンチー監督が、人間界と人魚界という異なる世界に住む男女のロマンスを描いたファンタジー作品。若き実業家リウは香港郊外の美しい自然保護区域を買収し、リゾート開発計画のため海を埋め立てるプロジェクトを進めていた。この計画をなんとか阻止するべく、この海で暮らす人魚族はリウの暗殺作戦を決行。人間に変装させた人魚のシャンシャンをリウのもとへと送り込むが、シャンシャンとリウは互いに惹かれあい、恋に落ちてしまう……。<引用「映画.com」>

なんか入り込めなかった、ってのが全編を通じての正直なところ。オープニングが「環境破壊に物申す!」みたいな始まりで、一応、そういう展開で進んでいたのだけど、途中から「あれ?そうじゃなかったの?」となり、最後はちょいと感動的なシーンでという、「これでいいんですか?」という終わり方。これ、周星馳(チャウ・シンチー)だからいいようなもんの、他の監督作品だったら恐らく日本での公開は叶わなかったんじゃないかと。

オープニングで流れる歌はかつて羅文(ローマン)と甄妮(ジェニー・ツェン)のデュエットで大ヒットした『世間始終你好』。これは香港人も大陸人も大いにノリノリな気分にしてくれる歌。残念ながら羅文はもうこの世の人でないので、今回は鄭少秋(アダム・チェン)と莫文蔚(カレン・モク)がデュエット。下の映像を見ると、さりげに鄭少秋のレコードジャケットが映り込んでいるけど、こういうのが中華社会では受ける。小生もクスっと笑った一人だが、普通は日本人にはわからんわな、それでええねんで(笑)。

周星馳も「うっ!はっ!」の合いの手でノッておりますな(笑)。この歌、この掛け声が肝要。いわゆる「接待を伴う飲食店」で、香港人のおっちゃんが韓国小姐とこれをデュエットしてるときに、この合いの手を入れてあげると「お、お前わかってるな!」と、大変喜んでくれるので、ぜひお試しを(笑)。

周星馳作品でおなじみの、ほとんど専属みたいな俳優が当然ながら揃っているのだが、映画人のカメオ出演も徐克(ツイ・ハーク)をはじめ、多数。マニア的には「うふふ」ってところだが、一般向けには賛否意見の分かれるところ。

今回の収穫はジェット噴射器(?)みたいなのを背負って「じゃーん!」とばかりに登場する鄭冀峰(ジェン・イーフォン)。中央電視台(CCTV)廣告A8論壇秘書長、香港HFIO資本管理公司董事長、中國電視藝術家協會廣告藝術專業委員會常務副主任兼北京華藝金鷹公司總經理などなど、映像文化方面では超有名人。今作では、奇抜な登場や特異なキャラで存在感を示しており、カメオというよりも主役級でもあった。

「人魚族」の熱血漢、「タコ兄ぃ」こと八哥を演じたのが台湾、大陸の人気マルチタレントの羅志祥(ルオ・ジーシァン)。もっぱら小豬(シャオジュウ=子ブタちゃん)の愛称で親しまれている。NHK Eテレの『中国語講座』に出演するなど、日本での人気も上々。この役は、小豬だからこそこなせた役どころだったと思う。アイドルさん、なかなかこんなことしてくれいないと思うよ、普通は(笑)。

男主役の鄧超(ダン・チャオ)が演じた富豪の劉軒は、超鼻に付く役どころで「こいつと少なくとも90分付き合うのは嫌だな~」と思っていたら、次第に林允(リン・ユン)が演じた「殺手」の珊珊とお互い惹かれあう間に…。「え?惹かれあうようになるとは思っていたが、早すぎないか?」というところで、あともうひとつくらいの「山あり、谷あり」が欲しいところだが、あっという間に純愛物語に転じるのがどうもねぇ。まあそこは農暦新年の娯楽作品、大目に見ておくか…。

この二人、「どこかで見た記憶があるのだが…」と思っていたが、それは小生の思い違いだったようで、二人とも小生は初めてだった。特に林允は今作が映画初出演。それにしてはコミカルな役どころをソツなくこなしていた。これからどんな風に使われていくのか、楽しみな女優である。

遊園地でのひと時を機に、二人の間は「人魚」とその住処を奪った富豪との関係から、思いを抱きあう関係へと急速に転じる

もう一人の女主役、張雨綺(キティ・チャン)は近いところでは『最愛の子(=親愛的)』に出演していたようだが、役どころが思い出せない。もっとも大陸の誘拐事件を扱った作品と今作はまったく趣が異なるので、思い出せなくても当然か。色仕掛けで富豪の劉軒へ共同出資を働きかけたが、目的は別のところにあって、という役柄。というわけでなかなかのセクシー路線。

最後はファンタジー路線で締めくくられる。『功夫(=カンフーハッスル)』や『少林足球(=少林サッカー)』のような丁寧さに欠ける作品だったため、かなり拍子抜けしたのが実際のところ。やはり周星馳にとっては93分は短すぎるのだろう。そして繰り返すが、周星馳だったからこそ日本で公開されたのだろう。まあ、小生にとっては主題歌の『世間始終你好』にだけワクワクしたという感じ。

そんな本作だが、アジア映画歴代興行収入No.1を樹立し、世界で1億人以上の観客を動員し、第36屆香港電影金像獎では8部門にノミネートされるなど高評価を博したのだから、世の中はわからんもんだ。そして世界は広い(笑)。

周星馳ということでは、近日『新喜劇之王』がようやく上映が始まるので、そちらに期待をしておこう。

周星馳《美人魚》首部預告片高清正式版

(令和2年5月23日 シネマート心斎橋)



 


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