【睇戲】『花椒の味』(港題=花椒之味)<日本プレミア上映>

第15回大阪アジアン映画祭

本来ならば、この日は「HONG KONG NIGHT」が開催されるはずだが、今年は最初から予定なし。大口スポンサーだったキャセイパシフィック航空の名も、見当たらない。キャセイ自体もそれどころではない。「新型冠狀病毒=新型コロナウィルス」の影響もあり、香港旅遊發展局(香港政府観光局=HKTB)が2月18日に発表した2月の来港者数は、1日当たり平均3,000人で前年同期比98%減にまで落ち込んだ。「今年は堪忍して~!」ってところだろうが、一度「堪忍した」クライアントが復帰することは、なかなかむつかしい。さて、来年はどうなるやら…。

「睇戲」と書いて「たいへい」。広東語で、映画を見ること。

特集企画《Special Focus on Hong Kong 2020》
花椒の味 港題=花椒之味 <日本プレミア上映>

港題『花椒之味』 英題『Fagara』 邦題『花椒の味』
公開年:2019年 製作地:香港
言語:広東語、標準中国語
評価:★★★★
監制(プロデューサー):許鞍華(アン・ホイ)、朱嘉懿(ジュリア・チュウ)
導演
(監督):謝沛如(シエ・ペイルー)
配樂(音楽):波多野裕介
領銜主演(主演):鄭秀文(サミー・チェン)、賴雅妍(メーガン・ライ)、李曉峰(リー・シャオフェン)
特別演出(特別出演):鍾鎮濤(ケニーB)、任賢齊(リッチー・レン)
主演(出演):劉瑞琪(ヴィッキー・リウ)、吳彥姝、盧鎮業(ロー・ジャンイップ=小野)、岑珈其(カキ・シャム)
友情客串(友情出演):劉德華(アンディ・ラウ)

「山椒は小粒でピリリと辛い」と諺に言うが、20年ほど前に雲南省は昆明のカフェで晩飯に食った「本場」の麻婆豆腐は、二口目には口腔全面麻痺状態に陥るほどの「麻」な風味で、まさに「口から火が出る」とはこのことかと。この「麻」の正体こそ、「花椒」である。

昨今、日本でも流行の担々麵などにも使われる。今や「麻」に慣れてしまった小生には、日本の担々麵なんぞは「お子様味」みたいなもんで、まったく物足らん(笑)。

「重慶火鍋」「四川火鍋」など、あっち方面発祥の「火鍋」のだしにも欠かせない。物語の舞台は、そんな「麻」な風味で人気の火鍋店。

【あらすじ】

如樹(ユーシュー)は父の急死で自分に異母姉妹がいることを知る。葬儀の席で初めて顔を合わせた如枝(ユージー)は母と共に台北、如果(ユーグォ)は祖母と共に重慶に住んでいるのだった。なんとなく意気投合する三人だが、葬儀後二人は家族の元へ戻る。父の残した火鍋店をすぐに手放さずに自分が経営者となって残った賃貸契約期間を全うすることにした如樹の下に二人の妹たちが手伝いに帰ってくる。父の残した火鍋スープのレシピを再生する過程で、育った文化も境遇も違う三人に姉妹としての情と絆がしっかりと芽生え……。<引用:第15回大阪アジアン映画祭「花椒の味」作品解説

何気に豪華出演陣である。鄭秀文(サミー・チェン)を中心にその父親役でB哥、さらに元カレ役で華仔。これだけも十分にゼニが取れるメンツだが、そこに任賢齊(リッチー・レン)に賴雅妍(メーガン・ライ)、中国の大ベテラン女優・吳彥姝、小生個人趣味(笑)の小野岑珈其(カキ・シャム)…。任賢齊(リッチー・レン)の役回りが今一つだったけど…。

筋自体は…。別段、どうという話でもないんだが、ギスギスしたものがないのがいい。永久居民として香港人の立場から言うと、「ギスギス」にほとほと疲れ果ててしまったってのが、特に昨年の6月以降の正直な気持ちだ。今は武肺(香港では多くのメディアが、こう呼ぶ)に疲れ果てている。そんな中で、香港社会全体がこういうストーリーを渇望していたってのもあるかもな。なんと言っても、プロデューサーが許鞍華(アン・ホイ)だから、許鞍華テーストがあふれている。

冒頭、大抗(Tai Hang)の中秋節の祭り「火龍」が映し出される。その中にB哥演じる火鍋屋店主、すなわち三姉妹の父親の姿が。「こっちへ来いよ」と手招きする。この画はラストの感動シーンへとつながってゆく。そのラストは「まあ、そうなるよな」と十分に予感はしながらも、結構感動してしまう。

自分と母親を置いて、家を出てしまい、台湾と重慶に娘をつくった父を、サミー演じる如樹は、父が死んでもなお「許すことができない」でいたが、二人の異母妹との出会いが、彼女を少しづつ変えてゆく。この「許す」という気持ちが、最近の香港ではすっかり希薄なものになってしまい、ゆえに「ギスギス」に覆いつくされたような社会になってしまっているんだと感じる。この映画は、そこを癒したかったのかなと思ったが、どうでしょ?

口の中が麻痺した麻婆豆腐を食った数日後、小生は重慶に移動したのだが、やっぱり20年以上も経過すると、街並みがすっかり変わったなと、重慶のシーンを観てしみじみ感じた。あの頃は、街並みがもっとくすんでいたような気がする。そして長江の流れがたっぷりと湿気をもたらすからか、古いビルなんてまるで絞り足らないぼろ雑巾のように見えたもんだが、スクリーンに映る重慶は、超高層ビルが立ち並び、すっかりきれいに変貌していた。ま、足元へ行けば当時のまんまなんだろうけど…。

その重慶で、李曉峰(リー・シャオフェン)演じる如果と暮らす祖母役の吳彥姝は、「中国一級演員」。まあ、人間国宝とか芸術院会員とかそういうレベルでしょうか?「ええおばあちゃんやなぁ」と思った。

台湾に暮らす妹役の賴雅妍(メーガン・ライ)とその母親役の劉瑞琪(ヴィッキー・リウ)、どっちもイイね。特に劉瑞琪(ヴィッキー・リウ)は、年齢も近いせいもあって、一目ぼれした(笑)。小生が過去に観たものでは、『バタフライ・ラヴァーズ (港=梁祝)』に出ている。はてさて、どんな役だったのかは、さっぱり忘却の彼方だが…。

小野クンは、火鍋屋の店員として出演。人柄がにじみ出ているような、いい役どころだった。と、「人柄が」なんて言ったものの、ちょこっとお話したことがあるだけなんで、実は、めっちゃ底意地の悪いヤツなのかもしれない。知らんけど(笑)。岑珈其(カキ・シャム)はお調子者の不動産屋役。

涙と笑いが、ちょうどいいバランスで収まった、香港らしい作品だった。

以下余談ながら…。監督の謝沛如(シエ・ペイルー)は、雨傘の時に結成された「文化界監察暴力行動組」のメンバー。警察の暴力行為を監視、摘発する、文化人を中心とした組織。一方で、鍾鎮濤(ケニーB)は、昨年来の暴力示威行為に対する警察の行動を支持しており、その手の集会にも参加している。そのため、中港両地のネット上でボイコットの声が高まったが、いざ上映が始まると、「藍絲(=警察支持派)」「黄絲(=デモ支持派)」の双方から好評を博したのだから、やっぱり、みんなこういうのを求めてるんよ、きっと…。

■第26屆香港電影評論學會大獎
「最優秀女優賞」受賞=賴雅妍
第3屆最港電影大獎 +すべてノミネート、結果待ち
「最優秀香港女優賞:鄭秀文」、「最人気香港映画賞」、「最優秀香港監督賞」
第39屆香港電影金像獎 +すべてノミネート、結果待ち
「最優秀監督賞:謝沛如」、「最優秀脚本賞:謝沛如」、「最優秀作品賞」、「最優秀助演女優賞:賴雅妍」、「最優秀撮影賞:葉紹麒」、「最優秀美術指導賞:張兆康」、「最優秀メークアップ&衣装デザイン賞:張兆康」、「最優秀オリジナルサウンドトラック賞:波多野裕介」、「最優秀主題歌賞」、「最優秀音響効果賞」、「最優秀主演女優賞:鄭秀文」 全11部門ノミネート
香港電影編劇家協會大奬2020 +すべてノミネート、結果待ち
「2020年度最優秀キャスト賞:鄭秀文」「2020年度推薦シナリオ賞」

《花椒之味》正式預告

(令和2年3月13日 ABCホール)


四川赤山椒 (花椒) ホール 50g 業務用 スパイス 香辛料 ハーブ コウベグロサーズ ブランド: コウベグロサーズ ¥1,000

商品の説明
四川省産の花山椒。花椒独特の舌が痺れる強い辛みと香りが特長。本場四川では花椒と藤椒をブレンドし各種料理に使用されることもあります。 ミカン科の落葉低木の実で独特の芳香と辛みがある。若い葉は「木の芽」と呼ばれ、汁物、田楽味噌、煮物、和え物などに用いる。乾燥した外皮を粉末にしたものが粉山椒で鰻の蒲焼等に使用する。 原材料原産国は中国、最終加工地が日本になります。
原材料・成分 山椒  (Amazon.com)


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