【反送中】8月のあれやこれや(5) 「燃點香港,全民覺醒」「威嚇発砲」

アイキャッチ:警察vs勇武派の衝突が毎週のように発生する灣仔(Wan Chai)の軒尼詩道(Hennessy Road)だが、2008年の北京五輪聖火リレーの際には、みんな五星紅旗を身にまとって、聖火の到着を待っていた(2008年5月2日 筆者撮影)>

11年前の夏の香港は、北京五輪で大いに盛り上がっていた。小生も奉公先近くを聖火が走るってんで、仕事中だったが、奉公人皆で見物に出かけたものだ。沿道は、五星紅旗と特区旗で真っ赤に染まり、若者たちも、五星紅旗を打ち振り、国歌である『義勇軍進行曲』を高らかに歌い上げていた。そして、五輪期間中は、「国家隊」のメダルラッシュに香港中が沸き返り、朝から晩まで『義勇軍進行曲』を聴かされるという日々だった。それは香港人が「中国人」であることに誇りを感じる日々でもあった。それから11年。今や五星紅旗は市民に踏みにじられ、落書きされ、破かれ、燃やされ、そして海に捨てられるのが日常的になった。この写真で五星紅旗をまとっている若者たちは、今、どんな思いで日々を過ごしているだろうか? 当時18歳として今29歳。大陸からの留学生や新移民でなければ、勇武派の一員として警察に向かっていても不思議でない年代…。香港の風景は、がらっと変わった。

では、急いで8月の振り返りを。もう9月も終わってしまうし(笑)。

「智慧燈柱」破壊 多地区で衝突発生

觀塘(Kwun Tong)は九龍半島の東側に位置し、昔の啓徳空港の滑走路とは、どぶ川のような海を挟んだ地区である。MTRの西側には工業ビルやオフィスビルが並び、山側には1階が商店、上が住居という古いタイプの低層ビル、旧式の公営団地が並ぶ街。最近は住居エリアの再開発が進み、大型ショッピングモールが出現するなど、急速に昔のがちゃがちゃとした香港の市街地のイメージを一新しつつある。

特別に用事がなければ行かない街だが、日系企業もそれなりに多く、年に何度かは足を運んだ街でもある。とにかく海側も山側も人が多いという印象。ミニバスの行き先表示が「觀塘」ではなく、「官塘」なのが思い出される。画数の問題だけだと思っていたら、歴史的背景もあるようで、地名の奥深さを感じる。

そんな觀塘で8月24日、「燃點香港,全民覺醒」遊行=燃えろ香港、目覚めよ全市民デモという「反送中」デモが開催された。デモを呼び掛けたのは、7月7日の「九龍デモ」や7月28日の中環(Central)の遮打花園(Chater Garden)での集会を呼び掛けた本土派劉頴匡(ヴェンタス・ラウ)。最初に出現したとき、「覚えといた方がええでぇ」と記したが、ほらな、何回も出てくるやろ(笑)。

手前の左側、マイクを持っているのが劉頴匡(ヴェンタス・ラウ) by “端傳媒”

劉頴匡はデモの目的について、「五大訴求」のほか「智慧燈柱=多機能スマート電柱」への不満を訴えると説明した。香港では、觀塘九龍灣(Kowloon Bay)を中心に50基の智慧燈柱が設置されている。政府の説明では、現在は道路状況の監視、大気汚染状況の観測にのみ使用されており、将来的には5Gの普及で活用したいとのことだが、劉頴匡は多くの市民が「顔認識機能」があるとの疑念を抱いていると言う。なんか伊坂幸太郎の『火星に住むつもりかい』みたいな世界だな(笑)。

そこで、こんな「職人技」を発揮する人が出現して、デモを盛り上げる(笑)。「智慧燈柱林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官のスパイだ!」と訴える。こういうのはしゃっと作ってしまうから感心だ。営業の提案書はなかなか作らないのに(笑)。この「智慧燈柱」への疑念が、大事になってしまう。そいつはちょっと後で。

まずはデモ。こちらはいつものように粛々と平和的に秩序を保って進行する。いわゆる「和理非=和平、理性、非暴力」ってやつだ。

デモ行進そのものは整然としているんだが… by “端傳媒”

MTRを運行する香港鉄路は前日に、高等法院(高等裁判所)から駅構内などでのデモ活動を禁止する臨時禁止令を獲得していた。臨時禁止令は「いかなる者も違法および故意に鉄道網の駅や列車、高速鐵路西九龍駅の正常な使用を妨害したり、財産や列車を損壊したり、脅迫、罵倒、わいせつ、人が反感を持つ言葉を使ったり、故意に駅職員を妨害してはならない」との内容で、有效期限は8月30日まで。

MTRの路線図、位置関係がわかりにくいと思うので下記をクリックの上、拡大してご覧ください。この日は緑の路線上各地で衝突が起きた。

臨時禁止令を受けて、この日のデモに備えて正午からMTR觀塘線彩虹(Choi Hung)~調景嶺(Tiu Keng Leng)の列車運行を停止。觀塘線九龍灣藍田(Lam Tin)間の各駅は閉鎖した。デモ隊、とりわけ勇武派の「快閃游擊戰=フラッシュモブ作戦」を極力抑え込もうという警察の思惑と、とにかく列車運行、乗客、職員の安全確保というMTR側の意思が一致したわけだが、デモ隊を含む利用客は不満爆裂である。

駅封鎖でシャッターを下ろそうにも、デモ隊が座り込んでどうにもこうにも…。いつも思うが、こういう表情(マスクで半分隠れてるけど)やジャスチャーって、日本人にはできないよな(笑)
結果的に警官隊も出動して、駅から離れない市民を追っ払う…。っていつの間にか、外は勇武派だらけ(笑)

さて、そうこうしている内に、行進を離れた勇武派は疑念の的、「智慧燈柱」が立つ常悦道(Sheung Yuet Road)を不法占拠。さらに電ノコで根元から「智慧燈柱」を切断する。中には、「智慧燈柱」を解体し、部品を取り出して「こりゃなんじゃらほい?」と、一つ一つ調査する者も。

現場を取材した『明報』記者によれば、少なくとも6基が破壊されたと速報記事で伝えたが、実際には20基が破壊されており、修復には200万HKドル(約3200万円)以上を要すると、各紙にあった。この事態に、部品サプライヤーは、会社関係者やその家族の個人情報がネット上で公開されたりして、人身の安全が脅かされているため、すでに設置した電柱の関連作業を終えた時点で、部品供給を停止すると発表した。「こんな状況の香港で仕事なんてできまへん!」ということだ。こういう企業が増えていくんじゃないかな。香港にとって自殺行為だな、勇武派の狼藉の数々は。

特区政府創新及科技局局長の楊偉雄(ニコラス・ヤン)は26日、「香港の科学技術イノベーションにとって暗黒の日だった」と嘆いた。重ねて、「交通状況と大気の質に関するデータを収集するもので、顔認識や市民の身分データ読み取りはできない」と説明した。

デモ行進終了して、その後はお決まりのパターン。勇武派牛頭角(Ngau Tau Kok)、九龍灣で不法に道路を占拠し、警官隊と対峙。

戦闘態勢ばっちりの勇武派 by “端傳媒”

やがて警官隊に向かって火炎瓶、投石、鉄パイプなどの武器で、いつものように暴力的に向かって行く。もちろん、警察は催涙弾連発で対応。

「戦場」はMTR九龍灣駅駅ビルであり、エリア最大のショッピングモール、そして比較的日本人家庭も多い德福花園(Telford Gardens)へのアクセスでもある德福廣場(Telford Plaza)のバルコニーエリアに移動。勇武派は側溝の鉄製のふたや挙句はエアコンの室外機までも使ってバリケードを作るが、別角度から速龍小隊勇武派に突撃し、催涙弾を発射するなど、普段は買い物客や食事客でにぎわう一帯が、催涙煙にまみれる。

アパートメントの低層部の屋根の上から「戦場」を見物する住民らしき一団。落ちたら危ないから部屋に戻って見物しなさい!

衝突が一段落すると、勇武派は得意の「快閃游擊戰=フラッシュモブ作戦」である一団は觀塘へ戻り警官隊と対峙、別の一団は彩虹からMTRで黄大仙(Wong Tai Shin)へ移動し、警察をかく乱する。

群れからはぐれると、たちまちお縄となるから、運動神経の鈍い子はデモに行かない方がいいよ。運動神経の鈍い小生からの忠告(笑)
彩虹から黄大仙へMTRで移動する勇武派。ちなみに黄大仙駅だから柱が黄色。わかりやすい香港(笑)

黄大仙では、午後8時頃から勇武派が続々と集結し、黄大仙を貫く幹線道、龍翔道(Lung Cheung Road)にバリケードを築き、警察を激しく挑発するも、午後9時過ぎには警察が排除。と言うか、勇武派が次なる「戦場」へ向けて快閃游擊=フラッシュモブしただけのことだ。

催涙弾発射の瞬間を逃すまいと、警官に群がるメディアの面々。これじゃ、現場の緊迫感まったくナシ。手持ちの打ち上げ花火でも見ているような気分になる。ホント、邪魔だ、記者連中 by “香港01”

龍翔道の強制排除で逃げ遅れた勇武派は続々と逮捕されてゆく。ただ、こうして逃げ遅れる連中は、どちらかと言うと勇武派のかなり後方部隊だろうから、逮捕したところで勇武派の大勢には全く影響ないだろう…。ま、見せしめにされている愚かなる青年というところだろう。

しかし、再び11時ごろから対峙が始まる。今度は勇武派ではなく無防備の街坊=町の衆が中心。それだけに迂闊に催涙弾は発射できない。現場Liveで見ていたが、街坊の代表者みたいな初老の男性が、警官隊と話し合いをし、なんとか話がついたようで、警官隊も撤収していた。ワーワー騒いでいた街坊も、この人に諭され、次々と場を離れていた。こういう人がちゃんと対応すれば、双方ともに無駄な労力を使わずに済むってもんだ。民主派議員がデモ隊と警官隊の間に立つことが多く見られるが、どいつもこいつも拡声器でがなり立てるばかりで、自分の主張ばかりしているようだ。これでは警察も一歩も引かんよ。ホンマ、役に立たんな、汎民主派は。

占いの館や初詣でおなじみの「黄大仙祠」の門前に並ぶ警官隊。なんかインスタ映えするね(笑)

さて、黄大仙での最初の衝突からさっさと引き上げた勇武派は、やはりMTRを利用して今度は深水埗(Sham Shui Po)へ向かい、たちまち幹線道を不法占拠し、バリケードを築く。警察は催涙弾発射に備え、近隣住民に「窓をきちんと閉めておくように」と呼びかける。ただ、対峙はあったが大きな衝突には至らず。一方で、デモを快く思っていない住民と勇武派が口論となり、勇武派が集団で暴行を加える。このところ、意見の違う者同士の殴り合いや、「私的制裁私的報復」が横行しているが、遅かれ早かれ、そういう日が来るとは思っていた。「白い服」を着ているだけでメディアは「白衣人士」と書いて、元朗で無差別襲撃を行った黒社会人士と同一視するが、白い服なんてだれでも普通に着るわけで、こういう報道のやり方も、大いに問題をこじれさせている要因だと思う。

多くの報道では「白衣人士が黒衣人士にやられる」とあったが、この人はグレーの服着てるし(笑)

こうした勇武派の暴行現場の画像や映像がSNSで公開されるや否や、「よくやった!」「彼らは義士だ!」などの賞賛のコメントであふれる。えらい世の中になってしまったもんだ、香港も…。

なお、この夜、「燃點香港,全民覺醒」遊行の発起人である劉頴匡(ヴェンタス・ラウ)はデモが混乱を招いたとして、警察に連行された。混乱は彼の責任ではないけど、「この際、みんな逮捕しちゃえ!」という警察の気持ちもわからんではない。

こうして、8月24日の土曜の夜は終わっていった。さあ、次の日がこれまた大変よ…。

荃灣衝突、水炮車初出動、そして初の威嚇発砲

翌8月25日、新界の荃灣(Tsuen Wan)で行われたデモ行進「荃葵青大遊行」は、勇武派がまたしても暴徒化し、警察との大規模な衝突に発展した。

デモを申請したのは林啟康という一見、高校生くらいのボクちゃんである。実行責任者の余藝明というのも、そんな感じ。

余藝明㊧と林啟康㊥右端はお友達か?

この子らがどういう政治的背景の持ち主かは不明だが、何か事が発生した場合、彼らに責任を取る覚悟はあるのか?と聞きたいが…。ま、そのときはダディとマミィが優秀な弁護士を雇って、救ってくれるんだろう(笑)。

「五大訴求 缺一不可=五大要求、一つでも欠いたらアカン」のスローガンが用意された葵涌運動場

当初、警察からは「反対通知」が出ていたデモ行進だったが、コースを変更したところ、「非反対通知」すなわち「許可」が出て開催の運びとなった。変更後のコース計画では、参加者は午後3時から葵涌運動場(Kwai Chung Sports Ground)~荃灣公園(Tsuen Wan Park)中央広場までを行進するため、午後1時半からMTR荃灣線葵芳(Kwai Fong)荃灣駅、MTR西鐵線荃灣西駅が閉鎖された。

しかし、このところ、デモと言えば雨降りやなぁ…。やっぱ、だれかが操作してる?(笑)

デモ行進は例により、平和的に終了後。そうこうしている内に、着々とバリケードが築かれ、「衝突」に向けた準備を進める勇武派。瞬く間に道路を不法に占拠、封鎖して「さあ、警察、どっからでもかかってこんかい!」ということになる。今回は「水炮車(Water Cannon)が出動するかもよ」と聞いていたので、ホークス戦の中継もそっちのけで、現地LIVEに集中(だから優勝逃すんだww)。

勇武派(手前)と警官隊の間には、勇武派が投げた歩道の敷石が無数に…
これを投げられては、いかに警察官でも命を落としかねない
歩道橋の上からは火炎瓶。これお嬢さんやよね?
強力ゴム鉄砲も大活躍!
「催涙弾なら任しといて!」と、テニスの王子様、降臨! by “South China Morning Post”

そしてついに!香港警察、満を持して「水炮車(Water Cannon)」稼働!

「来たーーー!」と小生もLIVEを見つめる。群がる報道陣…。が、こいつはがっかりだ(笑)。放水したのはいいけど、バリケード一つ動かすこともできないではないか…。初動にして、とんだ大失態だ。それを見た勇武派は、「Hey! Hey! Hey!」と中指立てて盛んに警察を挑発する。

こいつらのこういう態度見てたら、無性にムカつくんやよね。そのうちえらい目に遭いまっせ~、ボクちゃん!

この日は一体、何発の催涙弾が放たれたか知らないが、相当な数だったんじゃないだろうか?なんかもう、警察もクタクタという感じだった。

こうして警察、勇武派の間で一進一退が繰り返され、再び「水炮車(Water Cannon)」出動。やはり放水しながら迫ってくる「水炮車(Water Cannon)」は脅威なのか、あるいはすでに「快閃游擊戰=フラッシュモブ作戦」の段階だったのか、勇武派荃灣にはもう用はないとばかりに、次第に引き上げて行く。

いかに勇武派と言えども、やっぱりこうやって放水しながら迫って来ると、逃げてしまうのか?

ただし。別動隊は荃灣に居残り、破壊行為を実行した。

二陂坊というストリートで、飲食店や商店、雀荘を襲撃し、シャッターを壊したり入口のガラスを叩き割ったり店内を荒したりするなど、暴れまくったのである。二陂坊ではこれまで何度か黒社会人士と思われる一派に、デモ隊や記者が襲われており、今回の破壊行為はそれらの事件や、7月21日の元朗での白シャツ軍団襲撃事件などへの報復行為と思われる。襲撃された店舗は、黒社会と通じているとされるが、そうだとしても、「民主」を求めている側が、「私的制裁、私的報復」に走っているようじゃ、「どんな民主を求めてるの?」と聞きたくなる。ま、所詮はこの程度よ。

通報を受けた警官6人が、二陂坊近くの沙咀道(Sha Tsui Road)に向かったところ、数百人の勇武派が鉄パイプや足場を組む竹竿などで襲撃。身の危険を感じた警官らは38口径銃を腰から抜いて、発砲の構えを取り自身の身を守ろうとしたが、なにせ連中はリュックに遺書を忍ばせているくらいだから、撃たれて本望(と思ったかどうかは知らないが)とばかりに、なお襲撃の手を緩めず向かってくる。そこで警官のうち1人が空に向かって威嚇発砲した。

この後ろにまだ何百人といたんだから、これをたった6人の素手と警棒だけで戦えと言うのは無理なハナシ。その状況をほとんどのメディアはスルーして、威嚇発砲だけを報道する。警察もたまったもんじゃない

そのときの映像が瞬く間にネットに溢れかえったが、あの状況ではマジで警官殺されてしまうね。もっとも警官の5、6人殺しても、「義士!」と世間から賞賛されるような現在の空気だから、威嚇発砲がなければ、本当にそういう事態になっていたかもしれないな。でも本当にそこまでの覚悟が、連中にあるかどうかは、かなり怪しいけどな…。

とにもかくにも、警官6人は、身を守るためのやむを得ない行動だったというだけのことだ。俺でもそうする。そないにまでして「香港警察=悪」という図式を作らんがための、「情報のトリミング」をせんでよろしい。

当然の行為ですな。この場面だけ世界中に伝えられてしまい、警察が気の毒でならない

勇武派は「快閃游擊戰=フラッシュモブ作戦」で尖沙咀(Tsim Sha Tsui)や深水埗(Sham Shui Po)などにも向かい、不法道路封鎖を行い警察と対峙。九龍と香港を結ぶ海底トンネル「紅磡海底隧道紅隧」では、九龍側入り口で料金所14か所のうち6か所を木っ端みじんに破壊するなど、各所に狼藉の傷跡を残した。

警察はこの日、54人(12~51歳)を違法集結、攻撃性武器所有、警官襲撃などで逮捕したと発表。しかし、12歳って…。勇武派の真似をしたり、ひっついて行動してもロクな事はないから、やめとき。

それにしてもまあ、色んな事が起きすぎるわ…。



 


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