【上方芸能な日々 文楽】第35回文楽鑑賞教室

人形浄瑠璃文楽
第35回文楽鑑賞教室

香港の問題が思いのほか深刻度を増しているため、このところ拙ブログも久々に香港ネタ連投となった。検索ワードも「反送中」「逃亡犯条例」「香港デモ」などがすらりと並んでおり、それらを検索した結果、不幸にも拙ブログにたどり着いてしまった方々が、この10日間ほどで数千人にも及ぶ。衷心より「シケたブログですんません」としか言いようがない(笑)。

もちろん、他にもネタは温めているので、ぼちぼちと出してまいります。

というわけで、御世が改まり、これが最初の文楽ナマ鑑賞。

小生自身は、いまさら「教室」で文楽に関するお勉強することは何も無いのだが、高校生の時に学校から朝日座へ文楽を観に行ったことがきっかけで、今なお、文楽を見物しているのだから、この日来ていたお子さんたちの中から、たとえ一人でもそういうケッタイなやつが出てきてもいいんじゃないかな、などと思ってみたりもする…。

そういう意味では、この鑑賞教室は非常に重要。出し物も厳選してほしいところだが、「五条橋」はまだしも「寺子屋」とはちょいと地味やないかえ? なんかこう、もっと舞台がパッときらめくような、にぎやかなものを選んでほしいところだ。

五条橋

この鑑賞教室、期間前半後半、午前午後で4組の組み合わせとなっている。自分の贔屓や最近気になるメンツを見ることに重点を置いて、他の予定と調整しながらいつ行くか決めるのだが、これが実に悩ましい選択となる。当然ながら、御贔屓勢ぞろいという組はなく、絶妙なそして底意地の悪いばらけ方をしており、毎年、どの日に行くか迷ってしまう。そうなったら、いっそのこと外人さん向けの「Discover BUNRAKU」狙いでもいいのだが、これはこれで結構売れ行きがよく、希望の席が取れない…。

で、公演、いや開講?二日目の午後をチョイス。土曜の午後ながら、そこそこ、高校生の集団もいて、普段の公演とはちょいと空気が違う。

牛若丸 睦 弁慶 靖 碩
清馗、寛太郎、清公、清允

この場面の童謡なり絵本なり、日本人ならだれでも知っているという時代ではないらしく、若いお客の食いつきが今一つだったように感じた。背景を知っているからこそ楽しめる舞台っていうのが、段々とやりづらい世の中になっている。文楽に限らず、歌舞伎、落語、能・狂言、さらには映画に至るまで、「常識」というか基本的な「教養」というものが、激変している。いくら「鑑賞教室」と言っても、そこまで懇切丁寧にレクチャーしてもいられない。それだけに演目の選択も難しい時代になっているんだろうなと感じる。

ここは浄瑠璃よりも人形の動きを楽しむ段だと割り切れば、蓑紫郎、玉勢は十分に実力発揮で、楽しく見せてもらった。

解説 文楽へようこそ

太夫解説・希、三味線解説・友之助、人形解説・玉翔 で進行。上述の通り、今更「よぉこそぉ~」と言ってもらっても、「も40年来てるし」とツンとするほかないし、解説を聞いても「ほぉ~」と思うことは何もないのだが、三者の性格なんかがよく見て取れるのが面白い。ここはそういうコーナーだと割り切っている(笑)。以前も記したと思うが、友之助のあのキャラは、貴重だと思う、色々と…。

菅原伝授手習鑑

寺入りの段 は亘、清丈で。亘もこの辺はきっちりこなせるようになっており、もはや安心の領域。ただ、色々と伏線が張られる場でもあるので、そういう空気感を創出するにはまだ至ってないようにも聴こえ、その点で平々凡々に終わってしまった感じがする。

寺子屋の段

前 呂勢、富助
後 芳穂、勝平

嶋さん一門できちっと締める、聴きごたえたっぷりの寺子屋だった。呂勢は言うまでもないが、芳穂が切場を堂々と語った。勝平の巧みなリードもあったからこそとは言え、手薄な太夫陣において、一筋の光明、明るい将来を見た思いがする。後日の「若手会」ほど明確でないにしても、この鑑賞教室もまた、若手や中堅にとっては大事な場を与えてもらえる貴重な場。ここでいい働きを見せれば、後々にワンランクアップした場をやらせてもらえるだろうし、本人にも大きな自信となる。今年後半は、芳穂の飛躍に期待したい。まあ、もうそろそろ「若手」ではないお年頃でもあることやしね(笑)。

人形では、玉路のよだれくりなんてのは、小生にとってはかなりおいしい「御馳走」である。こちらも若手が並ぶが、松王の勘十郎、源蔵の玉也、玄蕃の玉輝、戸浪の蓑一郎、千代の蓑二郎らはさすがの存在感。小生的には、勘十郎の松王なんてのは、結構レアな配役だった。こういう配役の面白さも、鑑賞教室ならではだ。

「別に毎年来る必要もないねんけどなぁ」と思いつつも、結局のところ、毎年来ている「鑑賞教室」である(笑)。もうちょい、お金の使い道、考えてみないか、お前?(笑)

(令和元年6月8日 日本橋国立文楽劇場)



 


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