第14回大阪アジアン映画祭
「TAIWAN NIGHT」
大阪アジアン映画祭、お楽しみのひとつ「TAIWAN NIGHT」である。
昨年11月の「九合一」、すなわち統一地方選挙で民進党が大敗し、国民党が息を吹き返したことで、蔡英文総統は民進党党首を辞任することとなった。が、年明け早々に、大陸では習近平国家主席が台湾の統一に改めて意欲を見せたことで、風向きが変わり、蔡英文は次期総統選への出馬にこれまた意欲を見せる、という具合に、めまぐるしく動く両岸関係である。
映画で見れば、すでに実質上の「両岸合作」は急速に進み、たとえば「台湾の監督が、両岸三地(中・台・港)の俳優を使って、大陸で撮影し、大陸で大ヒット」する作品なんてのは、今や珍しくなくなった。そんな風潮だからこそ、今こそ「台湾の監督が台湾の俳優を使って台湾で撮った、台湾人のための」作品を観たいのである。これは香港にも言えること。
で、今回の大阪アジアン映画祭はどうか…。
「台湾:電影ルネッサンス2019」として、短編を含む7作が上映された。
先に愛した人(誰先愛上他的)
Father (紅盒子)
悲しみより、もっと悲しい物語(比悲傷更悲傷的故事) の三作が長編で、
2923
気:呼吸の技法(氣)
小死亡
じゃあまたね(楔子) の四作が短編。
昨年もそうだったが、長編が不作なのか短編が勢いがあるのか、よくわからないが、大阪アジアン映画祭の台湾映画は短編が目立っている。また、この特集には含まれていないが、「両岸合作」で 美麗 が上映されており、この作品などはまさに、上述した現況の通りの作品である。
小生の目には「混迷している台湾映画」と映るが、果たして現状はどうなんだろう? やっぱ、こういうのは、たとえ2日とか短期間でもいいから、現地で映画館を数軒覗いてみないことには、わからんよな…。ってわけで、今、久々に台湾へ行きたくって仕方ないのだ。
さて、昨年は重鎮から若手まで、多士済々の映画人が並んだ「TAIWAN NIGHT」だが、今年はやや寂しかった。ただ、その分を邱澤(ロイ・チウ)一人で補って余りある存在感、という状況でもあった。
まずは、台北駐大阪経済文化弁事処から李世丙・処長が日本語で挨拶。「映画は、楽しみや感動を与えてくれる上、歴史、文化を伝え、国際親善の役割も果たす。日台親善が緊密なのは、映画の役割によるところ大だ」との旨。
そしてゲスト登場。完璧な日本語で挨拶する邱澤(ロイ・チウ)。好きな日本語は「一生懸命」だとのこと。いや~、主演作『誰先愛上他的』からは、一生懸命さが十分伝わった!
水色を基調としたドレスで登場したのは、『楔子』主演の薛提縈(ティファニー・シュエ)。隣に監督の黄芝嘉(ポーリー・ホアン)。そして『小死亡』の監督、周良柔(イヴェット・チョウ)。
このほか、『紅盒子』の国内配給会社、太秦株式会社から小林三四郎代表取締役が、早朝、香港へ向かった楊力州(ヤン・リージョウ)監督に代わって挨拶した。やがて後継者がいなくなるであろう、台湾の伝統人形劇「布袋戯」を取り上げたこの作品は観たかったのだが、結構、帰りが遅くなってしまうので、断念。幸い、今年後半には劇場公開となるようなので、その時にまた。
邱澤(ロイ・チウ)は売り方次第で、もっと日本で人気も出るんじゃないかと思われる。さぁ、早いもん勝ちやで、配給会社のみなさん!
欲を言えば、この後上映の『悲しみより、もっと悲しい物語』から、主演の劉以豪(ジャスパー・リュウ)、陳意涵(アイビー・チェン)あたりが来阪していれば、もっとワーワー、キャーキャーの盛り上がりがあったとは思うけど、また来年に期待ということで…。って、来年、俺、生きてるか?(笑)。
(平成31年3月13日 ABCホール)
在大阪香港永久居民。
頑張らなくていい日々を模索して生きています。