【睇戲】『山中傳奇』(台題=山中傳奇)

山中傳奇 台題=山中傳奇

基本的に、映画鑑賞は100分が限界だ。そりゃ、年に1、2回は100分以上の作品を観ることもあるが、極めて珍しいと思う。「観たい!」と思いながら、上映時間を見て、パスすることもあるくらいだ。なんと勿体ない映画人生を送っているんだと、自分を罵倒することさえあるが、辛抱出来なのだから仕方ない。2年前だか『牯嶺街少年殺人事件』を観たときなんて、2回トイレに行ったくらいだ。そう、おしっこが辛抱できないのである(笑)。

で、今回観た『山中傳奇』はなんと192分だという。これまたトイレ2回コースだ…。パスする? いや、しない! これを観ておかないと、後々、大いに後悔するのは目に見えている。意を決して、上映最終日にシネ・ヌーヴォXへ向かった。

「睇戲」と書いて「たいへい」。広東語で、映画を見ること。

台題 『山中傳奇』
英題 『Legend of the Mountain』
邦題 『山中傳奇』(4Kデジタル修復・完全全長版)
製作年 1979年
製作地 台湾・香港
言語 標準中国語

評価 ★★★☆(★5つで満点 ☆は0.5点)

(監督):胡金銓(キン・フー)

領銜主演(主演): 徐楓(シュー・フォン)、張艾嘉(シルヴィア・チャン)、石雋(シー・チュン)
主演(出演):佟林(トン・リン)、田豐(ティエン・フォン)、吳明才(ウ・ミンツァイ)、徐彩虹(レインボー・シュー)
客串(ゲスト):陳慧樓(チェン・フイロー)、孫越(スン・ユェ)、吳家驤(ウー・チアーシャン)

これまた旧作の「4Kデジタル修復版」ってやつである。これをよく修復してくれたと感謝あるのみだ。なにせ、完全な形での日本上映は、今回が初めてのこと。かつて、映画祭などで2時間短縮版が上映されたことがあるらしいが、今回、完全版を観てみれば、この物語をどうやって2時間に縮めたのだろうと、そのつぎはぎ手法に興味津々ではあるが、一度、この完全版を観た今はもう、短縮版を観たいとは思わない。これが完全版の完全版たるゆえんであろう。

【甘口評】
胡金銓(キン・フー)と言えば、武侠片というイメージだが、この作品はタイトルが示すように、怪異譚である。ワイヤーワークは、ほんの瞬間的に見せたくらいで、武侠イメージはほぼない。だから、そっちに期待していた人には、期待外れもいいとろだっただろう。武器はあくまで、「音」。鼓とシンバルから叩き出される「音」の対決である。これはこれで、功夫アクションとは一味も二味も違う、非常に珍しい対決だった。こういう胡金銓も大いにアリだと思った。

何よりも、1年かけての全編韓国ロケってのがすごい! まあ、香港にしろ台湾にしろ、あの壮大な自然は撮影できんわな。始まって30分ぐらいして出てきた「伽耶山海印寺」は、韓国慶尚南道の古刹・海印寺(かいいんじ、ヘインサ)

一見、長すぎる上映時間だが、まったく時間は苦にならず。要するに「ダレ場」なし、ずっとスクリーンに釘付け状態。まるで徐楓(シュー・フォン)演じる樂娘(ルーニャン)の魔性の鼓の音にがんじがらめにされたような錯覚さえ覚える。あの鼓の音はヤバイよー。もちろん雰囲気も妖艶すぎるし…。

で、小生何度も記してきたが、張艾嘉(シルヴィア・チャン)の大ファンである。若き日のシルヴィアが、こちらも魔性の依雲(イーユン)として登場するのだが、石雋(シー・チュン)演じる学僧・何雲青(ホー)の味方になるので、イイ魔性役。なので妖艶さではなく、可憐さでホーを魅了する。樂娘も依雲も、この世に未練を残す悪霊ゆえに、最期はかわいそうなんだけど…。

悪霊退治のラマ僧を演じたのが、七小福のメンバー・吳明才(ウ・ミンツァイ)。本作の武術指導もやっている。さすが40年前だけあって、若い。そして七小福だけあって、機敏に動く。このラマ僧の存在がなければ、ホーはどうなっていたんだろう…。

こうした主役陣と同様に目を引いたのが、樂娘の母親ということになっている、やはり悪霊の王婆を演じた徐彩虹(レインボー・シュー)。すごくいい味を出していた。一見するに要注意人物って臭いがプンプンしてくる。70年代に3本出演した記録があるが、他に見当たらないことを見ると、結構、ええもん見せてもろたってところか。

【辛口評ってほどでもないが】
がんばって一度もトイレに行かずに観たが、やっぱり長いと辛い(笑)。終盤に伏線と回収をいっぺんに持って来たゆえのことなのか。それとも丁寧過ぎたのか。そこまでの作りにした理由を知りたいが、胡金銓すでにこの世を去って22年。ああ、あれは香港返還の年だったか、と遠くを見つめるのみしかない…。

《第16回金馬獎》
・最優秀監督賞:胡金銓
・最優秀美術設計賞:胡金銓
・最優秀撮影賞:陳俊傑
・最優秀録音賞:周少龍
・最優秀音楽賞:吳大江

ところで、4Kデジタル修復版ってどれだけの効果があるのか? なにせ、元映像を見たことがないので「ようわからん!」と思ってたら、台湾の國家電影中心(TFI)が比較映像をYouTubeにアップしてくれている。なんとご親切なる国家でありましょう!

《山中傳奇》修復前後比對 Restored “Legend of the Mountain” Before & After

で、予告編はこちらからどうぞ!

(平成31年2月15日 シネ・ヌーヴォX)



 


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