『SPL 狼たちの処刑台』
(港題= 殺破狼・貪狼)
大ヒットとなっている韓国映画『1987、ある闘いの真実』にどっと流れ込む観客を尻目に、香港映画おたくの本道とばかりに、観客10人未満の作品を観るという、どこまでも香港に対して義理堅い小生(笑)。
と、言いながら、実は先週で上映が終わったもう1作を、うっかり見逃していたという失態も犯している(笑)。ただでさえ日本で公開される作品が少ない香港映画、ひとたび見逃すと、一生観ることができないかもしれないのだから、「おたく」としては一大事だ。
で、見逃した『SHOCK WAVEショック ウェイブ 爆弾処理班』 は、10月に三田、11月に和歌山で上映があるらしいが、わざわざそのために三田や和歌山まで行く気にもならない…。ってわけで、許してくれ、劉徳華!
もうそんな失態は犯すまいと、シネマート心斎橋へ駆け込んだのが『SPL 狼たちの処刑台』。正直なところ、どっちか言うと『~ 爆弾処理班』の方が観たかってん…(笑)。こんな考えが間違いだということを証明してほしいところだ、古天樂には! さてさて…。
「睇戲」と書いて「たいへい」。広東語で、映画を見ること。
港題 『殺破狼・貪狼』
英題 『Paradox』
邦題 『SPL 狼たちの処刑台』
製作年 2017年
製作地 香港
言語 広東語、タイ語、英語
評価 ★★★☆(★5つで満点 ☆は0.5点)
導演(監督):葉偉信(ウィルソン・イップ)
動作設計(アクション監督):洪金寶(サモ・ハン)
領銜主演(主演):古天樂(ルイス・クー)、林家棟(ラム・カートン)、吳樾(ウー・ユエ)、クリス・コリンズ
特別演出(特別出演):トニー・ジャー(ทัชชกร ยีรัมย์)
友情客串(友情出演):鄭雪兒(ミシェル・サラム)
主演(出演):蔡潔(ジャッキー・チョイ)、盧惠光(ケネス・ロー)、陳漢娜(ハンナ・チャン)、ヴィタヤ・パンスリンガム(วิทยา ปานศรีงาม)
「殺破狼シリーズ第三弾」だが、前作、前々作との関連はないので、小生のようにシリーズの「一見さん」が観ても、すんなり物語に入って行ける。
第37回電影金像奬で9部門にノミネート、最優秀主演男優賞の古天樂(ルイス・クー)など3部門で受賞。その他多数の受賞に輝く、2017年の超ヒット作。まあ、メンバーを見たら、ヒットしないわけがないというラインナップ。監督が『葉問』シリーズの葉偉信(ウィルソン・イップ)、アクション監督に超大御所の洪金寶(サモ・ハン)。香港一の売れっ子スター、古天樂を主役に据え、林家棟(ラム・カートン)、吳樾(ウー・ユエ)、盧惠光(ケネス・ロー)ら達者なところが顔を揃える。まさに賞を獲るためのメンバーというところ。
以下にネタバレあり。これから観る人はスルーしてね!
【甘口評】
“超音速ムエタイ殺法”トニー・ジャー、初めて観たが、さすがの技量。香港在住で梁挺に師事して詠春拳を学んだクリス・コリンズとの「ムエタイvs詠春拳」とも言うべき格闘シーンが素晴らしい。洪金寶(サモ・ハン)のアクション指導が生かされた名場面と言える。それだけに、トニー・ジャー演じる刑事が命を落とすシーンは実にやるせない。
一方で、臓器密売組織の親玉を演じたクリス・コリンズは、密売の隠れ蓑である食肉加工場をミニバイクで飄々と移動するなど、観客の憎悪を煽る演技や表情づくりが非常に上手かった。
行方不明の一人娘の捜索のため、タイのパタヤに乗り込んだ香港の刑事を古天樂(ルイス・クー)。娘を思うあまりのボタンの掛け違いから、悲劇を生んでしまったことへの後悔の念が全身からにじみ出る好演。
劇中で、登場人物が歌う鄧麗君(テレサ・テン)の代表曲『月亮代表我的心』が効果的。作品は本土でも公開されヒットした。かつては「禁制」の曲だった『月亮代表我的心』が堂々と流れることに、今さらながら、隔世の感。
【辛口評】
林家棟(ラム・カートン)も重要な役どころで存在感を示しはしたものの、他の役者でも替えが利く役だったのが残念。もっと汚れた役を用意してあげてもよかったのではと思う。
☆
まったくと言っていいほど、救いのないストーリーだが、赤ちゃんの泣き声が聞こえるラストは、唯一かつ最高の救いの場。あのシーンがあったから、小生は、エンドロール開始と同時に放尿へ一目散することができたのだ(笑)。
それと、タイの警察局長役のヴィタヤ・パンスリンガムが、どこから見ても小生には自民党の二階俊博幹事長にしか見えなかった(笑)。どうでもいいハナシだけど。
殺破狼.貪狼 Paradox
(平成30年9月18日 シネマート心斎橋)
在大阪香港永久居民。
頑張らなくていい日々を模索して生きています。