【上方芸能な日々 落語】桂吉朝十三回忌追善「吉朝一門会」

落語
桂吉朝十三回忌追善「吉朝一門会」

桂吉朝師が亡くなって、12年の月日が流れた。6年前、「七回忌追善吉朝一門会」が行われたのだが、もうあれから6年も経過していたのだから、ホンマ月日の流れるのは早い。

今回の十三回忌追善一門会は、東名阪尼の4地で開催される。七回忌同様、トリは吉朝師のDVD上映。各地でネタを替えて、この日の文楽劇場は『化物使い』が上映される。大好きなネタ。ってわけで、早くから楽しみにしていた会である。

20170919153259275_0013-424x600<ネタ帳>
1.口上 ‥‥ あさ吉、吉弥、よね吉、しん吉、吉坊、佐ん吉、吉の丞
2.時うどん ‥‥ 吉の丞
3.地下鉄 ‥‥ しん吉
4.茶の湯 ‥‥ 吉弥
中入り
5.宿替え ‥‥ よね吉
6.あくびの稽古 ‥‥ あさ吉
7.化物使い ‥‥ 吉朝 *DVD上映

七回忌の時の口上は、感極まるものがあったが、今回はなんか「明るく、楽しく」という雰囲気だった。筆頭弟子のあさ吉の人柄がにじみ出る進行で、今回は出番のない佐ん吉と吉坊が一言づつ。

師匠が亡くなったため、永遠の末っ子弟子である佐ん吉は「(追善一門会の)名古屋と尼崎で12分ずつしゃべらせてもらいます。12年前、この文楽劇場での米朝・吉朝の会の前座でしゃべらせてもらいました。今はこんなに立派になりました(笑)」。吉坊は「僕も名古屋と尼崎で18分ずつしゃべらせてもらいます」と、いつも「時間厳守」の一門(約1名除くww)らしく、必ず時間を言う(笑)。「十三回忌は一つの通過点で我々全員、現在進行形です」と、吉坊らしい一言にあさ吉は「非常にしっかりした口上です」と、客席の笑いを誘うコメント。こういうあさ吉の態度が好き。

そのあさ吉は「取り残された芸歴の浅い弟子7人、本当によく頑張ったと思います。あとは、自分の心配をします」と笑わせてくれるのである。ほわ~んと弟弟子たち6人を包み込む人間性が良い。ホンマ、みんな頑張ってきたよな…。

さて、落語。吉の丞の『時うどん』でスタート。オーソドックスにそしてちょっぴりオーバーに。

久々に、出の初っ端に「『かつら~んきち』です」のつかみを披露したしん吉。メクリの寄席文字の「しん吉」の「し」が音引きに見えるから。鉄おたらしく、三代目林家染語樓作の『地下鉄』。昭和30年代、御堂筋線が西田辺まで開通したころの新作落語。梅田までの駅名の「空耳アワー」という趣。けっこう時代を感じる。

吉弥は『茶の湯』で。が、ごめん! ここで強烈な睡魔に襲われ、チンプンカンプンになってしまった。ま、こういうこともある。昨今はよくかけているようなので、またそのうち機会があるだろう。ホンマごめん!

この一門が「時間厳守」にうるさいのは、多分、彼のせいだろう(笑)というよね吉は『宿替え』。多分、枝雀の形だったと思う。時間を気にしすぎたのか(笑)、それともやり慣れていないのか、ちょいとドタバタ感ありだったが、却って引越しの慌ただしい雰囲気が出てよかったかも。それにしても、吉朝に火鉢収集趣味があったとは!

英語落語が大きな武器のあさ吉。海外公演のエピソードなんぞのマクラはいつも楽しい。で、ネタは『あくびの稽古』。あくびは出なかったけど、ちょっと退屈したかも、と思ったら、見得を切る場面で吉坊がツケを入れて、我に返る小生(笑)。

トリはもちろん、桂吉朝。

前回よりも、スクリーンの位置が高座に本人がいるという感じに近づくよう工夫されたようで、見やすかったし臨場感もあった。でもやっぱりDVDの画面は、アナログ時代の形だから、12年の歳月を見せつけられるものでもあり…。ちなみに映像はよみうりテレビ『平成紅梅亭』のもの。

上映されたのは『化物つかい』。まあ、演題を見ただけだと、見世物小屋やお化け屋敷のイベントクルーのハナシかと思うが、もちろんそうではない。泣き虫の一つ目小僧に「泣きないな」と慰めるあの一言が好き。途中、2回だったかな、「シェー」とポーズを取って挟むのだが、そのタイミング、間が、そりゃもう絶妙かつ効果てきめんで、こういうところ一つとっても「ああ、吉朝の落語やわ~」と思うのである。オチの「あんさんぐらい、化物つかいの荒い人は見たことない」で、「う~ん」と唸らされてしまう小生であった。

今度は十七回忌、それとも二十三回忌? どっちにしろ、何年かに1回は、吉朝にご登場願う会が開かれれば、うれしいなと思う。それは同時に7人の弟子たちが重ねてゆく年輪を確かめる場でもあるのだ。実に頼もしい7人なのである。

(平成29年10月24日 日本橋国立文楽劇場)



 


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