【睇戲】『オペレーション・メコン』(港題=湄公河行動)

『オペレーション・メコン』
(港題=湄公河行動)

このところモテモテの彭于晏(エディ・ポン)が主演の作品。
2011年、実際に起きた「メコン川中国船襲撃事件」をもとにした犯罪アクション巨編。巨大な麻薬密造地帯として知られる、タイ、ミャンマー、ラオスの三国に交差する「黄金の三角地帯(ゴールデ ン・トライアングル)」が舞台である。

この辺は小生も何度か旅しているが、幸か不幸か、薬物の誘惑はまったくなかった。多分、行動エリアが、この手の犯罪に手を染めたら最悪、死刑もあり得るという中国側だったからだと思う。別に悪魔の誘惑を期待していたわけではないが、あんまりにも何もないと、返って肩透かしを食らった気分にもなる(笑)。ま、裏を返せば、実際は期待していたってことか(笑)。

中文タイトルにある湄公河とはメコン川のことだが、中国側の雲南省などを流れる段階では「瀾滄江」と言う。したがって小生にはこっちの方がなじみがある。ただし、どちらの読み方も知らない、わからない(笑)。

PICT0013-1雲南省はタイ族の街、景洪(ジンホン)を流れるメコン。このあたりまだ流れが穏やかで、水量もさほど多くはない(2003年3月撮影)

94310020-1.JPG単に対岸の村へ行くだけの渡し船なのに、すごく怪しく見えたもんだ(同上)

「睇戲」と書いて「たいへい」。広東語で、映画を見ること。

Operation-Mekong-2016-Blu-ray-Hong-Kong-Version港題 『湄公河行動』
英題 『Operation Mekong
邦題 『オペレーション・メコン』
製作年 2016年
製作地 香港、中国合作
言語 標準中国語、タイ語、ラオス語、ブルネイ語、英語

評価 ★★★(★5つで満点 ☆は0.5点)

導演(監督):林超賢(ダンテ・ラム)

領銜主演(主演):張涵予(チャン・ハンユー)、彭于晏(エディ・ポン)
特別出演:陳寶國(チェン・バオクオ)
主演(主要キャスト):孫淳(スン・チュン)、馮文娟(フォン・ユェンチャン)
演出(出演):蘆恵光(ケン・ロー)、吳嘉龍(カール・ウー)、劉顯達、趙健、伍麟凱(ジョナサン・ウー)、吳旭東(レオ・ウー)、วิทยา ปานศรีงาม(ウィタヤー・パーンシーガーム)

林超賢(ダンテ・ラム)と言えば、古いところでは丁度20年前、香港返還の年である1997年の『G4特工(邦・G4特工 オプションゼロ=CS放映時タイトル、劇場未公開)』、翌98年の『野獣刑警(未公開)』がとても懐かしく、最近では『激戰(邦・激戦 ハート・オブ・ファイト)』や『魔警( クリミナル・アフェア 魔警)』が記憶に新しい。非常にわかりやすい筋立ての作品が多く、「正邪」、「善悪」を描くことが多い。今作もそう。だから見ていて面白いし、わかりやすいから、のめりこむ。

作品のベースになった事件は2011年10月5日に起きた。タイ領内のメコン川を航行していた中国船とミャンマー船が武装グループに襲われ、13人の乗組員が拉致された後に、全員の射殺体が、目隠しをされ両腕を縛られた状態で発見され、大事件に発展した。いずれのの船からも麻薬が発見され、組織との通行料を巡るトラブルで襲撃されたのではとの推測があるが、流域各国の面子や思惑が絡み合い、真相はうやむやにされている。犯人についても、ミャンマーの少数民族組織説、一部のタイの軍隊の仕業説など明らかになっていないが、中国はタイ国籍と思われる主犯格のメンバーを捕え、死刑判決など重刑を下している。

【甘口評】
雲南省側とは全く違う顔を見せるメコンをたっぷり堪能できる。目線での撮影はもちろん、ドローン(のはず)を使った上からのカメラワークも良く、無法地帯と化している密林を、いかにも「それっぽく」見せることに成功している。

この作品の前に観た『コール・オブ・ヒーローズ』ほどでもないにしても、彭于晏(エディ・ポン)の投げやりな好漢ぶりがいい。それだけに観る者はその最期に涙することになる。これ、上手いやり方と感心。

張涵予(チャン・ハンユー)も、ちょっと扱いにくく一筋縄ではいかないけど、実力を買われているという特殊部隊長役がハマっていた。

特殊部隊の面々は、各方面の才能に秀でた個性的なメンバーが揃う。そんな彼らを統括する一方で、子供思いの優しい父親の一面ものぞかせる特殊部隊長でもある。

絶対忘れられないのが、隊員の一人、いや一頭の麻薬犬「哮天(シャオティエン)」。彼にはスクリーン越しではあっても140分を共に過ごした者として、最大の敬意を表したい。

最大の見せ場、ショッピングモールでの大アクションシーンは、手に汗握る攻防。さぞや仕掛けも念入りにと思いきや、実際の営業時間に撮影したとのことで、店の損害は果たして…と、気になるところ(笑)。

麻薬犬「哮天(シャオティエン)」が泣かせるのよ…(涙)
麻薬犬「哮天(シャオティエン)」はポスターにもなっているほど人気なのだ!

【辛口評】
今さら、「これは香港映画ですか?」みたいな愚な質問はよすとして(笑)。

さすがに天下の中国公安。「黄金三角地帯4か国で協力して犯罪組織を壊滅しよう!」なんて言いながら、いざタイへ入ると、タイ警察を無視してやりたい放題。「タイ警察に手柄を持って行かれないよう、先手先手で」なのがありありとうかがえて思わず苦笑。ただ、現実問題として、本土で公安を扱った映画が検閲を通過するには、公安は決して悪者になってはいけないし、あくまで「正義の味方」で一貫させなければならないそうだから、こういう展開もやむなし。そんな厳しい背景もあって、こうしないことには本土では制作、上映はもちろん、これだけの大作を撮るためのスポンサー集めもできないのが実情だ。

密林の犯罪組織が少年を使って自爆テロを仕掛けるシーンがあったりして、「いい人」「優秀な人」「勇敢な人」の集団である公安にいまひとつリアリティーが感じられなかったのとは違い、かなり生々しく描かれていた。いや、小生別に密林の犯罪集団を知っているわけではないのだけど、そうに違いないと(笑)。

さて、今作でも大活躍の彭于晏(エディ・ポン)は、この夏、両岸三地(香港、台湾、大陸)の夏休み娯楽大作『悟空傳』で「西遊記史上最もイケメン」な悟空を演じる。こちらの日本公開も待ち遠しい。

Operation Mekong 湄公河行動 (2016) Official Hong Kong Trailer

(平成29年6月21日 シネマート心斎橋)



 


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