【睇戲】『コール・オブ・ヒーローズ -武勇伝-』(港題=危城)

『コール・オブ・ヒーローズ -武勇伝-』
(港題=危城)

『おじいちゃんはデブゴン』に続き、「サモ・ハン is BACK ! 第2弾」として公開されたのが、この『コール・オブ・ヒーローズ -武勇伝-』。『おじいちゃんは~』は洪金寶(サモ・ハン)が主人公として大活躍。老いてなお盛んなる功夫の名手であることを再認識させてくれるに十分な作品だったが、こちらは「第2弾」と言いながら、画面に登場するのは終盤のほんの数秒で、それも軍服姿で馬にまたがっているという登場シーンのみ。むしろ、この作品では洪金寶のもう一つの顔である動作導演(アクション監督)としての手腕を見てくれ、っていうところだろう。主役陣も中・港・台の売れっ子が揃う。監督が陳木勝(ベニー・チャン)ということで、最近は「チーム・陳木勝」とでも言うべき、劉青雲(ラウ・チンワン)、古天樂(ルイス・クー)、姜浩文(フィリップ・キョン)、釋彥能(シン・ヤンネン)が居並ぶ。

「睇戲」と書いて「たいへい」。広東語で、映画を見ること。

CallofHeroes+2016-2-b港題 『危城』
英題 『Call of Heroes
邦題 『コール・オブ・ヒーローズ -武勇伝-』
製作年 2016年
製作地 香港、中国合作
言語 広東語

評価 ★★★☆(★5つで満点 ☆は0.5点)

導演(監督):陳木勝(ベニー・チャン)
動作導演(アクション監督):洪金寶(サモ・ハン)

領銜主演(主演):劉青雲(ラウ・チンワン)、古天樂(ルイス・クー)、彭于晏(エディ・ポン)、袁泉(ユアン・チュアン)、江疏影(ジャン・シューイン)
特別演出(特別出演):吳京(ウー・ジン)
特別客串(特別ゲスト):洪金寶
聯合主演(主要出演者):廖啟智(リウ・カイチー)、吳庭燁(ン・ティンイップ)、洪天照(サミー・ハン)、姜浩文(フィリップ・キョン)、釋彥能(シン・ヤンネン)

日本のチラシやパンフでは、主演のトップには彭于晏(エディ・ポン)の名があり、香港の宣伝物ではそのポジションには劉青雲(ラウ・チンワン)の名がある。この辺の「芝居番付」の違いが面白い。香港の場合は、俳優としての地位や香港におけるステイタスなどで、劉青雲が番付筆頭、日本では今後、彭于晏を売ってゆきたいし、また、売れるだろうという目論見? からか、彭于晏を番付筆頭に持ってきているんだろうな。でも…。彭于晏なんて俳優、よほどの中華電影おたくでないと知らないよ、きっと。それにしても、香港のポスターと日本のポスターのイメージカラーが全く違うなぁ。

さて作品背景。民国元年の軍閥が各地で割拠する乱世。物語は、残酷な軍閥の手に落ちてしまい、村じゅうが虐殺の悲劇に見舞われた学校から、命からがら逃げ出した女老師と子供たちは、老師のいとこの住む普城に向かう途中に立ち寄った食堂で強盗団に遭遇する。居合わせた流れ者に命を救われ、普城に到着する。そこにもまた、子供たちの村を襲った軍閥の魔の手が伸びて…。

なんか序盤が『龍門客棧(邦題:残酷ドラゴン 血斗竜門の宿)』を思わせる展開。この辺は、監督の陳木勝(ベニー・チャン)や洪金寶(サモ・ハン)の胡金銓(キン・フー)へのリスペクトを感じる。

陳木勝は、小生には『天若有情(邦=アンディ・ラウの逃避行)』の印象が強すぎて、すっかり「青春ノワールもの」(笑)専門の監督というポジションにいるのだけど、実際には色んなジャンルにチャレンジしており、2月に観た『五個小孩的校長(邦・小さな園の大きな奇跡)』というハートウォーミングな作品もプロデュースしていて、実は手広くやっている人なのである(笑)。

【甘口評】楽しく、手に汗握る、そして悪役にイラッとさせられる、その配分が絶妙な、いかにも陳木勝(ベニー・チャン)らしい作品。終盤の爆発連発もお約束かな(笑)。冒頭で「この作品では洪金寶のもう一つの顔である動作導演(アクション監督)としての手腕を見てくれ」というのも今作の見どころのように記したが、いやもう、随所に洪金寶らしさがにじみ出まくっていた。アクションの所作の美しさというか、「型」にはまった芸能なのである、歌舞伎の「見得」と同じなのである。その「見得」やら「決め」やら「間」なんかをきちんと映像に収めさせているところに、なるほど洪金寶の映画だと納得させられるのである。こういう、おそらく役者には「無理難題」と思われるアクションをきちんとこなしていた彭于晏(エディ・ポン)も偉い! 劉青雲(ラウ・チンワン)の鞭アクションも素晴らしい!

古天樂(ルイス・クー)が人を殺すのが楽しくて仕方ないような冷酷かつ、サイコパスな役どころで、劉青雲(ラウ・チンワン)や彭于晏(エディ・ポン)を追い詰め、苦しませる。これが実にはまっていて、今作で最高のはまり役だったと思う。姜浩文(フィリップ・キョン)がいい人なのにあっけなく殺されてしまったり、廖啟智(リウ・カイチー)が不憫な最期を迎えてしまうのは、もはや香港映画昨今のキマリ事のような…(笑)。

終盤は、『七人の侍』や『荒野の七人』を髣髴とさせる。こういう「仕込み」は、映画好きを「おッ!」と思わせてくれるから、好き。

【辛口評】香港らしい娯楽大作と言えば、聞こえはいいが、撮影場所は全編中国の紹興。今の香港でこれだけのスケールの作品撮影は無理。中国の俳優も多数出演で、小生にはまったく香港映画には見えず。わずかに、セリフが広東語なのと洪金寶指導のもとに繰り広げられるアクションが、香港映画としての線をギリギリ保っている。資金、スタッフ、場所、興行収益…。あらゆる条件面で、この傾向はもはや変えることはできない。返還から20年、映画もすっかり中国に飲み込まれてしまったことを痛感するばかりであった。まあ、しゃあないか…。

【危城 CALL OF HEROES】 香港正式預告片

(平成29年6月某日 シネマート心斎橋)



 

 


1件のコメント

コメントを残す