【睇戲】『イップ・マン 継承』(港題=葉問3)

『イップ・マン 継承』
(港題=葉問3)

待望の甄子丹(ドニー・イェン)主演による「葉問」シリーズの第三弾である。

前作から今作に至る間に、邱禮濤(ハーマン・ヤウ)監督による葉問前傳(邦題:イップ・マン誕生)(葉問役は杜宇航/デニス・トー)、葉問:終極一戰(邦題:イップ・マン 最終章)(同黄秋生/アンソニー・ウォン)や、王家衛(ウォン・カーワイ)監督、梁朝偉(トニー・レオン)主演の一代宗師(邦題:グランド・マスター)が公開され、いずれもヒットはしたが、やっぱり「葉問」は甄子丹でなければならない、というのが世間の大方の意見だろう。それほど甄子丹のハマリ役になっているのだ。これはもはや、「遠山の金さん」は中村梅之助、「水戸黄門」は東野英治郎ってのと同じレベルなのだ。「葉師傳(イップ師匠)と言えば甄子丹、甄子丹と言えば「葉師傳」ということだ。今作では、そうやって世間から「師傳!、師傳!」と頼りにされることの苦悩の側面なんぞも描かれていて、甄子丹の「葉問」シリーズが、なぜにかくも人気があるのか、という疑問を解き明かすカギにもなっている。

ま、何度も拙ブログで繰り返しぼやいているが、香港が誇る世界的なアクションスター、甄子丹は小生と生年月日がまったく同じなのである。同じ日にこの世に生を受けて…。まあこれ以上言ってもね(苦笑)。

「睇戲」と書いて「たいへい」。広東語で、映画を見ること。

ip-man3港題 『葉問3』
英題 『Ip Man 3』

邦題 『イップ・マン 継承』
公開年 2015年(香港、マレーシア、シンガポール、ブルネイ)、2016年(台湾、中国、ベトナム、タイ、英国、豪州、ニュージーランド、米国、カナダ)、2017年(日本)
製作地 中・港合作
言語 広東語

評価 ★★★★(★5つで満点 ☆は0.5点)

導演(監督):葉偉信(ウィルソン・イップ)
動作導演(アクション監督):袁和平(ユエン・ウーピン)
原創音樂(音楽):川井憲次

領銜主演(主演):甄子丹(ドニー・イェン)、熊黛林(リン・ホン)、張晉(マックス・チャン)、譚耀文(パトリック・タム)
主演(出演):吳千語(カリーナ・ン)、鄭則仕(ケント・チェン)、梁家仁(レオン・カーヤン)、張繼聰(ルイス・チョン)、陳國坤(チャン・クォックワン)、蔡瀚億(ベイビージョン・チョイ)、劉以達(タッツ・ラウ)
特別演出(特別出演):拳王・泰臣(マイク・タイソン)

アクション監督が前作までの洪金寶(サモ・ハン)から袁和平(ユエン・ウーピン)に替わった。そもそも、甄子丹は袁和平が発掘したと言っていい人だから、元々は「袁家班」(ユエン・アクションチーム)の一員。洪金寶同様に、非常に頼りになるアクション監督を迎えたということだろう。

注目は、「マイク・タイソンが特別出演、葉問の『詠春拳』と一騎討ちという、見逃せない場面が!」という煽りが目を惹いたが、どんな対決になるのか気になるところ。

公開に至るまで、様々なスキャンダルも話題となったが、まあそれは置いておき、映画に集中したい。

【甘口評】
今作が、一連の甄子丹による「葉問」シリーズの集大成にして新たな物語の幕開けを予感させる展開だったのが、「商売上手いなぁ」ってところ。前作のエンディングに登場した少年時代の李小龍(ブルース・リー)が、青年として登場(演:陳國坤/チャン・クォックワン)。恐らく次作では葉問と李小龍の物語が始まるのだろう。

1作目から、大切な人への情愛がシリーズの大きな柱だったが、今作では葉問にとって最も大切な人の身の上に、重大な出来事が起きる。熊黛林(リン・ホン)が演じた葉問の妻、張永成が切ない。また、彼女に尽くす葉問の姿にも心打たれる。このシリーズで欠かせない「木人樁」を哀切の象徴として非常にうまく使われていた。このシリーズが人気を博している大きな理由は、功夫アクションよりもむしろ、こうした葉問の「情」の部分がきちんと描かれている点だろう。

葉問をリスペクトする一方で、激しいジェラシーを抱く張天志を張晉(マックス・チャン)が好演。そう遠くない将来、彼の時代が来るのでは?と予感させる演技とアクションだった。

ベテランの譚耀文(パトリック・タム)、鄭則仕(ケント・チェン)、梁家仁(レオン・カーヤン)、劉以達(タッツ・ラウ)が、安定の持ち味を発揮。

すっかり欠かせなくなった川井憲次のサウンドも効果的。作品の「色彩」の一つとして画面に溶け込んでいるようにさえ聞こえるのだから、すごいことだ。

総じて、観客それぞれの好みに応じて、様々な視点から楽しめるバランスのとれた作品だった。

【辛口評】
やたら前宣伝でピックアップされていた、マイク・タイソンとの対決シーンが、意外なほどにあっけなかった。観るまでは、タイソンとの戦いが今作のメーンなのかと思っていたが…。やや羊頭狗肉、と言うと言いすぎになるか…。ま、直前に唐突に決まった出演だということなので、そこは大目に見ておくか。

手に汗握るシーンあり、切なく哀しいドラマあり。葉問が何者なのか、そもそも甄子丹(ドニー・イェン)ってすごい役者なのか? などの情報が一切なくても十分に楽しめるので、「おもしろい映画が観たい!」って思う人ならだれにでもおすすめできる。

《葉問3》 終極預告 Ip Man 3 main trailer

(平成29年5月1日 シネマート心斎橋)




 


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