人形浄瑠璃文楽
うめだ文楽2017
今年で3回目となる「うめだ文楽」。今回も毎公演ゲストを迎えて、前半はゲストと技芸員によるトーク、後半に文楽の舞台公演という構成で、グランフロント大阪で3月24日から26日まで全6公演が開催された。
毎年、壮絶なチケット争奪戦となるこの「うめだ文楽」。在阪民放5局が総力を挙げて文楽を応援してゆこうという公演だけに、各局ともPRに余念がないためか、広く視聴者に告知が行き届いた結果だと思うが、通常の本公演でもこれくらい力入れてね、民放のみなさん!
今公演も満員御礼。お客が多いのは何より、何より。んでだ、お客が多いのを見越して、ちゃんと見やすい席を確保せねばと、けっこう早くからチケットを押さえにかかった、というところまではよかったんだが、その「ちゃんと見やすい席」であらねばならぬはずの、「ぴあスペシャルシート」ってのがとんだ曲者で、最前列のど真ん中。これは逆に最悪だ。舞台からの距離があまりにも近すぎて、舞台全体が見渡せないうえ、人形の足も手摺りに丸々隠れてしまって見えない。さらには床を見ようとすれば一々振り返らなければならない。「スペシャルシート」ってのは、最前列ならそれでいいって話じゃない。「ちゃんと見える席」であってこその「スペシャルシート」。ぴあには来年以降、そこをご一考願いたい。昨年、桂南光師も言ってたが「文楽やるのにちょうどええ空間」だけに、座席の配置も含めて、よろしくひとつ。
「本日のお座席からの眺め」(笑)。ほんま、芝居幕が下りてたらこんなもんですよ、ぴあさん! で、気を取り直して「お、かわいい狐ちゃん。さすが『千本桜』の舞台」と感心しつつ「この絵のタッチはあの人やな」と確信してたら、やっぱりそうだった(笑)。勘十郎はん作。多才な人や。
第1部はゲストを招いてのトークコーナー。この回のゲストは、はるな愛。進行は関西テレビの川島アナウンサー。彼女(彼w)と文楽はどんな関係か? そもそもは、「文化交流などで海外へ行くことが多いが、その都度、自分はなんと自国の文化について知らないんだ、と痛感することが多かった」ことがきっかけとか。そこで文楽はじめ、伝統芸能について勉強を始めたのだと言う。小生も長い間海外に暮らして、そこに目覚める人が多いというのを見てきたので、彼女(彼w)が一念発起した気持ちはよくわかる。いいことだ。
文楽側からは、人形から蓑紫郎、玉彦、玉延、三味線の寛太郎。はるな愛が上手い事彼らをトークでいじくるのが面白い。蓑紫郎はこのメンバーではけっこうお兄さんだし、性格のもんもあるからか、真面目に受け答えしていたが、後の3人は若さゆえに物怖じしないのか、はるな愛のいじくりに逆に上手く乗っかっていて、楽しいひとときであった。
ちょっと長めの休憩があって、この日の演目『義経千本桜』(河連法眼館の段)が幕を開ける。
床は希太夫と寛太郎、燕二郎。人形配役は、佐藤忠信および狐、狐忠信を幸助、静御前を蓑紫郎、義経が玉勢。
上述の通り、席があまりにも前すぎると、色々と見逃してしまう(見たくても見えない)部分が多すぎて、逆に注意力散漫になり、結果、激しい睡魔を催すことになってしまうという悪循環。せっかくの面白い段なのに十分に楽しめなかったのは残念。
希は第1回のうめだ文楽での熱演が印象深いが、あれから成長したのか? ちょっと疑問が残る語りだった。悪くはないのだけど、「ちょっと、そんなさらっと語ってもええのんか?」と言いたくなるような。繰り返すが悪くはないのだ。
寛太郎は今回もよく鳴らしていた。もう少し「太夫に寄り添う」姿勢もほしいところだが、そこは若さゆえということで、いいのかな? そうしておこう。
舞台は幸助の独壇場で、狐が出て以降は、ほとんど「吉田幸助リサイタル」の様相。昭和41年(1966)生まれ、若手を引っ張る意味で、うめだ文楽に欠かせないリーダーだが、そろそろこういう場面から身を引いてもいいんじゃないかなと思う。他の1970年代のメンバーも同じく。ま、引率者が必要ではあるとは思うけど…。
カーテンコールで足遣い、左遣い、介錯、手伝いなど含め、出演者全員が並ぶ。早変わりの連続で激しく動き回った幸助は肩を大きく上下させ、汗まみれ、ハァハァ、ゼーゼー言いながら挨拶する。ほらね、若くないんだって、キミも(笑)。俺とほとんど歳変わらんのやしね。
幸助曰く「ハァハァ、やっぱねぇ、勘十郎さん、偉いなと改めて思います、ゼーゼー…」。
今回、よくできていたなと思うのは、上演前にイラストやわかりやすい言葉で、ここに至るまでのあらすじをスクリーンで紹介したこと。初心者が多かろうということでの配慮だと思うが、こういうのは本公演でもできないものかな? 舞台でやれとは言わんけど、ロビーのモニターで流すだけならいいだろう、客の舞台への食いつきはかなりよくなると思うけどな。
お客のどれくらいが初心者だったのかは知らんけど、「他のも見たい」と思う人が、一人でも増えれば、いいのにな…。
しかし、パンフレット500円は、ええ商売しはるわ(笑)。
(平成29年3月25日 グランフロント大阪北館ナレッジシアター)
在大阪香港永久居民。
頑張らなくていい日々を模索して生きています。