第12回大阪アジアン映画祭
コンペティション部門|Special Focus on Hong Kong 2017
『77回、彼氏をゆるす』
(港題=原諒他77次)
香港映画の最新作である。
そして元・Twinsの阿Saこと蔡卓妍の主演である。阿嬌こと鍾欣潼も出演している。最近、二人での仕事がほとんどないだけに、Twinsファンでなくとも見逃せない!(ちょっと大げさかww)
今回の世界初上映に際して、邱禮濤(ハーマン・ヤウ)監督も来阪し、舞台挨拶に出てきてくれる。邱監督は2年ぶりの来阪となる。そのときの作品『雛妓(英題:SARA)』も阿Saが主演だったけど…。
「睇戲」と書いて「たいへい」。広東語で、映画を見ること。
港題 『原諒他77次』
英題 『77 Heartbreaks』
邦題 『77回、彼氏をゆるす』
公開年 2017年4月12日(予定)
製作地 香港
言語 広東語
評価 ★★★★(★5つで満点 ☆は0.5点)
導演(監督):邱禮濤(ハーマン・ヤウ)
編劇(脚本):李敏(エリカ・リー)、蔡卓妍(阿Sa=チャーリーン・チョイ)
原著(原作):李敏
領銜主演(主演):蔡卓妍、周柏豪(チャウ・パッホウ)
主演(出演):鍾欣潼(阿嬌=ジリアン・チョン)、衛詩雅(ミシェル・ワイ)、鄭希怡(ユミコ・チェン)、黄秋生(アンソニー・ウォン)、惠英紅(カラ・ワイ)、盧巧音(キャンディー・ロー)、鄭丹瑞(ローレンス・チェン)、C君
客串(ゲスト):吳鎮宇(フランシス・ン)、連詩雅(シガ・リン)、趙薇(ヴィッキー・チャオ)
原作者の李敏(エリカ・リー)ってどっかで見覚えのある名前と思ってたら、毎晩聴いてる香港電台第2台の『敏感時刻』でDJやってる人だった。意外なところで知らないうちに毎晩声を聴いていたんだ。ちょっと驚き。
しかしまあ、邱禮濤(ハーマン・ヤウ)という監督は不思議な監督である。と言うか、アナタ、守備範囲広すぎるでしょ、ホンマに!
そもそも小生がこの人の名前を知ったのが、懐かしいあの『八仙飯店之人肉叉燒飽(邦題:八仙飯店之人肉饅頭)』。この大ヒットをきっかけに、猟奇殺人ものが香港映画を席巻した時期があったけど、どれもこの『八仙飯店之人肉叉燒飽』の二番煎じ、三番煎じ。やっぱり元祖は強い。そして大雨の中、灣仔の國泰という映画館でたった3人の観客(うち一人は小生w)の中で観た『伊波拉病毒(邦題:エボラシンドローム 悪魔の殺人ウィルス)』。どっちも黄秋生(アンソニー・ウォン)の熱演いや怪演が光るわけだが、今回も出てるね(笑)。
んなわけで、てっきりこの手の専門だと思っていたら、石田ひかりと劉德華が共演した『愛情夢幻號(邦題:愛は波の彼方に 愛情夢幻号)』なんてラブロマンスも撮っている。さらには、甄子丹(ドニー・イェン)のものとは別建ての「葉問」シリーズでの功夫片(カンフー映画)ありと、その分野は実に多彩。この点について、上映後の質疑応答で邱監督は、「一つのジャンルに絞る監督もいるが、僕には退屈でできない」と語る。なるほどねぇ、退屈ですか…。
さて今作。李敏(エリカ・リー)の同名の小説をベースにしたものである。全体的にはラブコメの要素が強いが、純文学作品のような側面も見せる。
彼氏の自分への無関心が重なった結果、10年間の関係に終止符を打つ男女の物語。77回の意味は、「7回しか許さないのは厳しいが、70×7回は寛容すぎる。77回くらいがちょうどいい」という考えを彼女が持っていたから。最後に彼女とよりを戻してめでたし、めでたしで「劇終/The End」と思いきや、こいつがとんだどんでん返し、二段オチが待ち構えていて、「いやはや、男ってなんでこんなにワキがあまいのかね~」と、爆笑するやら反省するやら。実に面白い作品だった。
このどんでん返しについて邱監督は、「ハッピーエンドは、僕が観客の立場だとしたら腑に落ちないから。自分の映画では、現実そのものを表現したい」と言い、どんでん返しになった理由を挙げ、「人間はちょっとした過ちで、悪い結果を呼んでしまうことがある」と。そうよな、それこそが現実というものだな。この映画がもしハッピーエンドだったら、「な~~~んや、結局、落ち着いたんかい!」ってなってしまうし、「そんなうまいこといったら、だれも苦労せんやろ!」ってなるもんな。
主演の二人が好演していたのは言うまでもないが、共演陣が豪華。黄秋生(アンソニー・ウォン)はやはり怪演していたし、今映画祭オープニングフィルムの主役だった惠英紅(カラ・ワイ)が阿Sa演じる主人公の呂慧心の母親役として、父親役の鄭丹瑞(ローレンス・チェン)とともに大ベテランの味を発揮している。また、「77回」のキーパーソンとなる盧巧音(キャンディー・ロー)、吳鎮宇(フランシス・ン)が、胸にグッとくる役回りで好演。C君はキャラそのまんまの役割を忠実にこなして、笑いの部分をしっかり担当。と言う具合に、豪華布陣が各々の個性をぶつけて主人公カップルを盛り立てているのが伝わってきた。
小津安二郎が定宿としていた「茅ヶ崎館」での撮影もあり、「小津監督ファンとして、聖地巡礼ができて楽しかった!」と言うほどに監督自身の小津愛もひしひしと伝わる作品。
いつの間にか、香港映画界の重鎮にして巨匠のひとりになっていた邱禮濤監督。これからも幅広いジャンルの作品を撮り続けてほしい。
まあ、それにしてもTwinsの二人も、えらい大人になったもんだ(笑)。あの小娘たちが…。
《原諒他77次》預告片
(平成29年3月10日 ABCホール)
在大阪香港永久居民。
頑張らなくていい日々を模索して生きています。
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