第12回大阪アジアン映画祭
特別招待作品部門
『ヘマヘマ:待っている時に歌を』
(英題=HEMA HEMA: SING ME A SONG WHILE I WAIT)
行きたい国ナンバーワンにして、多分行けないまま死んでしまうんだろうなって国がブータン。第一、直行便飛んでるのか? それさえわからない。言語は?食べ物は?携帯通じるのか?ネットもできるのか?ちゃんとしたホテルあるのか? 謎だらけである。そして何よりも身近に行ったことある人が皆無なのだ。そんな国の映画を香港との合作とは言え、観る機会を得たというのも、アジアン映画祭だからこそか。
「睇戲」と書いて「たいへい」。広東語で、映画を見ること。
英題 『HEMA HEMA: SING ME A SONG WHILE I WAIT』
中題 『赫马赫马:我等待你为我唱的那首歌』
邦題 『ヘマヘマ:待っている時に歌を』
現地公開年 2016年
製作地 ブータン、香港
言語 ゾンカ語他
評価 ★★(★5つで満点 ☆は0.5点)
監督: Khyentse NORBU(ケンツェ・ノルブ)
主なキャスト:ツェリン・ドルジ、サドン・ラモ、ティンレィ・ドルジ
ゲスト出演:梁朝偉(トニー・レオン)、周迅(ジョウ・シュン)
さて困った。まず観る前に「この映画に何を期待して臨めばいいのか」ということが明確にならない。あえて言うなら、敬虔なる仏教徒の梁朝偉が超多忙の中、ブータンの山奥までこの映画の撮影に参加したこと、そんな梁朝偉の呼びかけに周迅が応えて特別出演していることあたりか。あとはもう「野となれ山となれ」というところ(笑)。
監督のケンツェ・ノルブはブータンの高僧、活仏(いきぼとけ)である。中文表記では「宗薩 蔣揚 欽哲 卻吉 嘉措 仁波切」、ゾンカ語では「རྫོང་གསར་ འཇམ་དབྱངས་ མཁྱེན་བརྩེ་ ཆོས་ཀྱི་ རྒྱ་མཚོ རིན་པོ་ཆེ」と表記される。中文はともかく、ゾンカ語の文字など知る由もないが、監督というよりは、ケンツェ・ノルブ猊下(げいか=高僧に対する敬称、れっきとした日本語ですw)と呼んだ方がふさわしい尊い方である。今回の上映では猊下の来阪はなかったが、プロデューサーのパウォ・ドルジが来阪し、小生が観た上映会で舞台挨拶とQ&Aに登場した。
正直なところ、「なんかようわからんわ」と思っているうちにエンディングを迎えてしまい、「で、結局、何なん?」と(笑)。これがわかる人ってのは相当にお賢いお方かもしくは、相当な変人か…(冗談ですよ!)。ただ、アホなりに考えるに、劇中、登場人物はずっとブータン独特の仮面をつけて集団生活を送っていたわけだが、こういう「非日常」のそれも仮面をつけて会話も許されないという状況では、仮面をつけずに暮らしている「日常」よりも人間の「素」の部分が出るってことを言いたかったのかななどと…。
ドルジ氏曰く、「ネット上で別の自分、つまりは『デジタルの仮面』をかぶることで自由な気分になったり勇気が出たりして、本当の自分が出る。主人公は普段は規律を守って生活をしているのに、仮面をつけてしまうと欲望を抑えられなくなる。レイプや殺人までしてしまう。本当の自分は仮面をつけなければ出てこない」と。ああ、なんか小生の考え、当たらずとも遠からじやな(笑)。
多くの出演者は素人さんだという。しかし役とは言え、仮面をつけたことで「素」の自分を出せた演技ができたすれば、上々出来ということではないだろうか。
映画そのものはなんかようわからんかったけど(笑)、釜茹での刑にはおののいた。また、エンディングで少年がギター弾き語りで歌った曲が、意味はわからずともすごく心に響いた。★2つの低評価になってしまったが、1つはほとんど手弁当で撮影に参加した梁朝偉、もう一つは弾き語りの少年への★。
機会があって、もう一度観て「あ、なるほど」と思う点が一つでもあれば、小生も少しは賢くなったということかもね(笑)。
<ストーリー>
ブータンの鬱蒼とした森の奥深くで、12年に一度の申年、秘密裏に風変わりな儀式が行われていた。ルールは仮面をつけ、スカートを履き、性別や身元を隠すこと。それ以外は自由に過ごして良いが、ルール違反者には極刑が下される。森にたどり着いた一人の男は、最初こそ恐怖心を感じていたが、次第に誰でもない自分に慣れ、ある女に魅力を覚える。感情が抑えきれなくなった男は取り返しのつかない行動を取ってしまう。
Hema Hema: Sing Me A Song While I Wait
(平成29年3月7日 阪急うめだホール)
在大阪香港永久居民。
頑張らなくていい日々を模索して生きています。
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