我が街、田灣
滞在3日目、実質行動2日目となる2月12日は、1996年から2009年まで住んだ香港仔(Aberdeen)の西端の村、田灣(Tin Wan)を訪れた。
まあ、懐かしいったらありゃしない。そりゃそうだ。香港在住中のほとんどをこの村というか町で過ごしたんだから。小生の香港生活の酸いも甘いもお見通しの町なのだから。
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小生は、96年6月末にここへ引っ越してきて以降、この村の中で3度の転居をしている。それだけここが気に入っているということである。
何といっても、香港で最高の水揚げ高(調べたわけじゃないけど、そんな感じw)を誇る香港仔漁港があるから新鮮な魚介類には事欠かない(実際にはそれほど購入していないw)、南シナ海の大海原が眼前に広がっている、ビーチが近くに点在しており泳ぎ好きの小生にはもってこい、バスで奉公先まで20分、比較的家賃が安い…。と好条件揃い。が、バスで20分は甘かった。香港島南部から北部へ抜ける香港仔トンネルの通勤時間帯の大渋滞は想像を絶するもので、長い時には2時間も要したことすらある。これを解消するべく、鉄道線が昨年末に開通したのだが、実際にどの程度解消されたのかちょっと試してみたかった。
家賃も、まあそれまで住んでいた銅鑼灣(Causeway Bay)に比べれば、割安感はあったがずば抜けて安いってわけでもなく、鉄道開通で跳ね上がっている模様。多分、今となっては住めないエリアだろうなと思う。
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アパートの前の幹線道路のむこうは香港仔漁港なのだが、その一隅にはごくごくわずかだが、水上生活者もまだいてる。
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香港仔海濱公園から鴨脷洲へ渡る
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このプロムナードは、散歩コースにもってこいでよくここを歩いた。また、香港人に交じって手釣りを楽しんだりもした。お持ち帰りになる方も見受けたが、海水の色を見たら到底そんな気にならず、小生はもっぱらキャッチ&リリース(笑)。みんな勇気あるなあ…。
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プロムナードの東側に漁港をまたぐ形で鴨脷洲大橋(Ap Lei Chau Bridge)が架かる。香港仔の対岸鴨脷洲(Ap Lei Chau)への唯一の陸路である。これが朝の大渋滞の元凶の一つではあったのだが、この橋に並行して鉄道路線が敷設された。これで鴨脷洲側は恐らくは多少は便利になったと思うが、結局、この鉄路もとりあえず金鐘(Admiralty)と海洋公園(Ocean Park)を結ぶことが大前提の路線なので、住民にとってどれほど便利なものなのか、若干、疑問に思っている。つまりは、バスを使う人は今まで通りバスを使うだろうから、一気に渋滞が解消されたとは到底思えないということである。
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香港仔と鴨脷洲を行き来するなら、やはりサンパンが便利。停泊する漁船や家舟の間をすり抜けて、あっという間に対岸に到着する。ひっきりなしに往来しているし実際に利用者も非常に多い。漁港内のミニバスのような存在である。
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かくのごとく小舟で魚を売る人多し。しかしながら、どうやって処理してどうやって食らえばよいのかいまひとつわからないから、一度も買ったことなし。今にして思えば損したなあと思う。イカや小エビをほうれんそうとXO醤で炒めるくらいはできたであろうに。また、どうしてもわからないなら、同じ棟に住まう大家の奥方に質問もできたであろうに…。
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さて、サンパンで鴨脷洲に渡る。元々は香港仔以上に、古き香港の漁業の町風情を醸し出す場所だったのだが、上述のとおり、鉄道線の開通で大きく街の様子も変わろうとしているのが惜しい。
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鴨脷洲の古廟のひとつ「鴨脷洲洪聖古廟」を訪れる。建立は乾隆三十八年(1774)。洪聖を祀る。洪聖は南方中国の海神のお一人で、一説には洪熙との名あり。唐代の広州の官吏にして清廉潔白忠義の人との聞こえあり。天文、地理、数学に明るく、気象台を設置して、航海の安全に大いに貢献。一方で労多く、若くして世を去る。その功績、皇帝の知るところとなり、廣利洪聖大王の名を贈り、沿岸各地に廟を設けるに至る。そういう経緯もあって香港各地に洪聖廟は多く見られる。天后、関帝、北帝、観音、そして洪聖が香港の五大信仰対象というところか。
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MTR新路線に乗ってみた
せっかくなんで、新しく開通したMTRに乗ってみる。ま、そこは「元・鉄おた」なら当たり前の選択肢。とりあえず鴨脷洲の町のど真ん中に出入り口がある利東駅から次の駅の「海怡半島(South Horizon)」へ。
この路線は、完全自動運転なのでそもそも列車に運転台がない。そのため先頭部分には鉄おた以外の人も集まって先頭風景を撮影する。車内はこれでもかの「海洋公園仕様」が微笑ましい。
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終点駅なのか始発駅なのかは利用者の目線で変わるところだが、小生的には終点だな。下りて何かがあるかと言えば、特段、街歩きに派にうれしいものは何もない。団地である。同じ団地でも、1970年代~80年代に造成された古い形式の「公屋」という公営団地ならば、年数的にちょうどいい具合に「魔窟度」が増している味わい深い風情になっているのだが、ここはデベロッパーが開発した「私人屋邨(プライベートアパートメント)」という物件だから、管理や整備が行き届いており、風情もへったくれもない。
始発駅というべき金鐘へ向かう。一駅ごとにホームに降り立って「どんなもんかいな」と観察するも、結局はかつて住み慣れた香港仔の隣近所のことなので、これという感動も驚きもなく「あ、なるほどこういう具合に線路持ってきたか」って程度。とは言え、かつて朝の大渋滞に巻き込まれ、自分が乗ったバスがトンネル抜けるのに2時間もかかったことがあったのとほぼ同区間が、このMTRでたった5分ほどってのがもうねぇ…。あの「うんこしたくなったらどうしよう」という恐怖感いっぱいの大渋滞は何だったのかとね(笑)。
香港仔へ帰ってくると、やっぱり元気になると同時に、もうここで暮らすことはないんだと思うと、悲しくなってしまう。今度、ここで暮らすときは小生が死んでから、この海に散骨してもらってからのこと。明日のことなのか、まだまだずっと先の話なのかは神のみぞ知るわけだけど、ま、とにかく散骨よろしく!
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在大阪香港永久居民。
頑張らなくていい日々を模索して生きています。
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