『台湾新電影時代』
(台題=光陰的故事―台灣新電影)
昨年の「大阪アジアン映画祭」で観た『あの頃、この時』(台題=我們的那時・此刻)もそうだったが、台湾映画の歴史を振り返ろうという流れがあるようで、この作品もその一つだ。『あの頃、この時』が、国民党統治下から今日までの全体的な流れを振り返っているのに対し、この作品はタイトルにもなっている「台湾新電影=台湾ニューシネマ」にスポットを当て、検証している。
「睇戲」と書いて「たいへい」。広東語で、映画を見ること。
台題 『光陰的故事―台灣新電影』
英題 『Flowers Of Taipei – Taiwan New Cinema』
邦題 『台湾新電影時代』
現地公開年 2014年
製作地 台湾
言語 標準中国語、日本語他
評価 ★★★(★5つで満点 ☆は0.5点)
導演(監督): 謝慶鈴(シエ・チンリン)
演員(出演):侯孝賢(ホウ・シャオシェン)、蔡明亮(ツァイ・ミンリャン)、賈樟柯(ジャ・ジャンクー)、小野(シャオ・イエ)、吳念真 (ウー・ニエンジェン)、柯一正(クー・イーチェン)、萬仁(ワン・ジェン) 、王童 (ワン・トン)、王兵 (ワン・ビン)、田壯壯(ティエン・チュアンチュアン)、艾未未 (アイ・ウェイウェイ)、許鞍華(アン・ホイ)、張艾嘉(シルビア・チャン)、黒沢清、是枝裕和、佐藤忠男、市山尚三、浅野忠信、アピチャッポン・ウィーラセタクン、オリヴィエ・アサヤス、トニー・レインズ、ピエール・リシアン、マルコ・ミューラー 他
1980年代初頭、低迷していた台湾映画界に新たな息吹を吹き込んだのが、楊徳昌(エドワード・ヤン)ら新進の4人の監督によるオムニバス作品『光陰的故事』(1982年)。ここから「台湾ニューシネマ」の時代が始まる。
「台湾ニューシネマ」の最大の特徴は従来の国策映画や現実離れした作品群とは完全に一線を画す、台湾人の実生活そのものに根差した作品であるということだろう。台湾自体が蒋経国総統の下、様々な分野で自由化が進み、戒厳令の解除などもあり、時代が大きく動いたことも、映画に新しい流れが生むことに追い風となったのは間違いない。
この『台湾新電影時代』では、そうした時代背景も交え、ニューシネマの旗手たちの証言や影響を受けた海外の映画人、高く評価する映画人などの言葉などで綴られている。各人の言葉自体は「まあ、そういうことですよね」という感じのものが多く、「おお!そうなのか!」ってものは特になかった。そのためか、退屈極まりないひとときを過ごすことになるわけだが、すこしでも台湾映画に興味があるなら、折々に挿入される台湾ニューシネマにカテゴライズされる作品の一場面が、ハッと眠気を覚まさせてくれるというとことになる。
小生は、『光陰的故事』、『兒子的大玩偶(坊やの人形)』、『風櫃來的人(風櫃の少年)』、『冬冬的假期(冬冬の夏休み)』、『戀戀風塵(恋恋風塵)』、『稲草人(村と爆弾)』、『非情城市』、『牯嶺街少年殺人事件』、『飲食男女(恋人たちの食卓)』、『獨立時代(エドワード・ヤンの恋愛時代)』などの場面を懐かしく観た。
どの時代のどの監督や作品までを「台湾ニューシネマ」に含むのか、意見の大きく分かれるところだろうが、小生はこの作品でもインタビューされ、「自分はニューウェーブではないだろう」と、若干の戸惑いとも照れとも取れる表情で答えていた蔡明亮(ツァイ・ミンリャン)監督の『愛情萬歳』あたりまでが含まれるんじゃないかと思う。人によっては、『看見台湾』、『KANO』、『灣生回家』などまで含まれるんじゃないかと言う意見もあるだろうが、さすがにそこまで含んでしまうのは無理があるのだが、こうした作品が普通に台湾で作られ、観客に受け入れられ、国際的に高い評価を得ているという事実を見るに、「台湾ニューシネマ」の流れを汲む作品群が現在の台湾映画を代表する分野を確立しているということに、その計り知れない影響力を思い知る次第である。
[電影預告]《光陰的故事:台灣新電影》
(平成29年2月2日 神戸・元町映画館)
在大阪香港永久居民。
頑張らなくていい日々を模索して生きています。
「台湾電影新浪潮」について実は魏徳聖監督にたずねたことがあります。魏監督が答えるに、エドワード楊との関係があまりに密接なのでニューウエーヴがどうこうと考えたことはない、とのことでした。エドワード楊監督の96年の作品でありますが魏氏が副監督をなされ実質的に魏徳聖作品である『麻将』を新浪潮に数えるとするなら魏徳聖もニューウエーヴになってしまいます。しかしどうもそれはちがうだろうという気がします。現実的には中影にいた呉念真が仕掛け侯孝賢と楊德昌を両動輪とする「運動」が「新浪潮」だったと捉えていいのではないか、と個人的には思います。ちなみにこの映画、ただいまDVDを香港から取り寄せ中で未見です。
魏徳聖監督といえば、3月に開催される「大阪アジアン映画祭」で『52Hz, I LOVE YOU』が日本初上映されます。これは激しいチケット争奪戦が予想されますので、明日の発売開始午前10時には、PCがかたまったりしないことを願うばかりです(笑)。
台湾ニューシネマのとらえ方については、ご説の通りだと思います。
さすがの大阪アジアン映画祭ですね、で、チケットをゲットできましたか?♪ いい曲ぞろいなんですが、余韻を楽しむまもなく次の曲へと続いてしまうので、見た後でどれも印象に残らない、というのがミュージカル映画としての欠点といえばいえるかも。それでも「十年」や「大世界小世界」という曲(後でYouTubeにて曲名を知りました。映画の中ではとくにタイトルは示されません。)が後味として残りました。台湾での公開に伴いOSTのCDが発売されたので香港から取り寄せ中です。DVDはまだのようです。
おかげさまで、チケットは見たい作品を全部取ることができました。10時ジャストにいきなりアクセス殺到でつながらなかった時は、うろたえましたが(笑)。
すいません。ログインしないままコメント送信してしまいました。上のコメントはわたしのものでした。