歌舞伎
中村歌之助改め 八代目中村芝翫襲名披露
中村国生改め四代目中村橋之助
中村宗生改め三代目中村福之助 襲名披露
中村宜生改め四代目中村歌之助
大阪松竹座新築開場二十周年記念 壽初春大歌舞伎
「またしても松竹の襲名ビジネスにのせられて」と、文句ばっかり言ってるわりには、ここんところの襲名披露興行には欠かさず参戦しているわけで、のせられることを結構喜んでいるのかもしれないな、俺(笑)。
今回の襲名は前代未聞、一家そろって4人いっぺんの襲名である。
父)橋之助改め芝翫
息子たち)国生改め橋之助、宗生改め福之助、宜生改め歌之助
「やるならいっぺんにやっちまえ」ってことでもないだろうが、大きいことが好きそうなこの一家ならではの「壮挙」とでも言っておこうか。
狂言としては昼の部のほうが断然好みだが、口上を見たいので夜の部を選択した。
「芝翫襲名だから芝翫香から口上幕」は洒落でもなんでもなく、この両者の関係は200年以上前から続くもの。番付で同社の木下社長が一文を寄せているが、三世中村歌右衛門が心斎橋でびんつけ油を「芝翫香」として売り出したことに始まる。芝翫香創業の祖、三世歌右衛門こそが初世中村芝翫。その縁が今日まで続いているというわけで、そりゃもう芝翫香以外にここ松竹座での襲名披露に口上幕を贈るにふさわしいところがあろうかというもの。
なかなか斬新なデザイン。USJで派手なお練りをやっちゃうこのファミリーにふさわしい(笑)。で、お席は前から二列目で花道脇。と言っても、ここでは弁慶や四天王のお尻しか見えないけど(笑)。顔見世でよいお席の魔力にはまってしまい、今回も大枚はたいてしまった…。こうして赤貧洗うが如し生活はますます困窮を極めていくのである。嗚呼、南無阿弥陀仏…。
鶴亀
藤十郎丈をシンにして、襲名する成駒屋三兄弟が舞う。新年と襲名を寿ぐにふさわしい祝儀もの。まあ当たり前だけど、山城屋さんは立ってるだけでも絵になるし貫録も十分。三兄弟はまだまだだけど、小生としては歌之助がよく舞えていたとの印象を受けたが、どうかな?
襲名披露口上
舞台下手より、
我當、魁春、児太郎、歌之助、福之助、橋之助、芝翫、藤十郎、秀太郎、鴈治郎、孝太郎、進之介、彌十郎、東蔵、仁左衛門
が居並ぶ。また列外にはこの度、幹部俳優に加わった芝喜松改め梅花(京扇屋)が加わり、芝翫よりその旨紹介があった。
口上役はもちろん藤十郎。それぞれが先代との思い出や当代との「実はこういう仲でして」みたいなエピソードを交えつつ、同時襲名の息子たちへの期待なども語りながら予定調和で「隅から隅までずず~~~~ぃっと」と。襲名披露口上で毎度思うが、幹部俳優、大看板ということで我當丈が列座しているが、この日などは真正面に座っていたのでよくわかったが、いかにもつらそうなお顔があって、見ているこっちまで苦しくなってくる。もういいではないか、堪忍したげなさいよと思うのだが…。
歌舞伎十八番の内 勧進帳
弁慶—芝翫
富樫—仁左衛門
義経—魁春
四天王—橋之助、福之助、歌之助、橘三郎
と、襲名披露興行ならではの豪華ラインナップ。まあ、小生はもっぱら仁左衛門さまの富樫に釘付けなわけだけど(笑)。だから、山伏問答の迫力は仁左衛門の富樫だからこそと、なんて勝手に思ったりするわけで、襲名した芝翫には申し訳ない限り(笑)。
小生の「お座席運」というのはよくしたもんだというエピソードだが…。秋の文楽でもやはり『勧進帳』が上演され、久々に花道での飛び六方での引っ込みが演じられ話題になったが、その時も花道脇のお席を取れたものの下手側だったために、弁慶のお尻しか見えなかった。で、今回もほぼ同様の席だったのでそれは同じこと。ただ、六方踏んでの引っ込み関して言えば、やはり『勧進帳』は歌舞伎でやってこそだなと思った。生身の役者が松羽目物用の一段高くなった花道を、いい音鳴らしながら引っ込むのは歌舞伎ならではの演出でかっこいい。これこそ歌舞伎見物の醍醐味と深くため息をついたのは言うまでもない。
休憩から席に戻ると、ちょうど勧進帳用に花道を一段上げていた台が撤収されているところ。こういう「仕組み」のひとつひとつに積み重ねられてきた工夫、伝統を感じることができるのも、古典芸能を見物する楽しみのひとつ。
雁のたより
■初演:文政13年(天保1)正月、大坂角の芝居
*『けいせい雪月花(せつげつか)』の内の一幕を独立させたもの
■作者:金沢竜玉(かなざわりゅうぎょく)(三世中村歌右衛門)
上方情緒あふれる、松竹新喜劇に連なるような楽しい狂言。
大道具に主役の髪結三二五郎七を勤める鴈治郎の定紋「イ菱」が入り、下座音楽には
♪あれに見えるは~鴈治郎さ、さ、さ、さ、ぇえ~~~
と入るサービス精神も上方芝居らしく、客をウキウキさせてくれる。
ご祝儀出演の芝翫と鴈治郎の入れ事満載の会話の場面も、これまたサービス精神にあふれておりご見物衆の爆笑を誘う。
ラストシーンは、それこそ松竹新喜劇っぽくて、小生はこういう展開が大好きである。
さて、大看板連中に交じって、上方歌舞伎期待の部屋子、中村未輝がちょっとばかり長いセリフ付きで登場。この子には、松竹芸能所属の子役時代からずっと注目している。そのころから映画に朝ドラに五木ひろしショーに歌舞伎にと大活躍していた。弟も歌舞伎入りして兄弟で頑張っている。以前も記したが、愛之助も部屋子からスタートして、いまや上方を代表する大看板の一人になっている。身近にいいお手本がいる。目指してほしい。おじちゃんは、芝翫や鴈治郎はんではなく、あんたばっかり見てたんやで(笑)。「全力支持、中村未輝、中村祥馬!」
しかしまああれだ。何の後ろ盾もなく入門した人は名題昇進まで何年もかかって、昇進試験に合格してようやく名題になれるのに、部屋子で入門するといきなり名題扱いですぜ。このシステムたるや…。
★☆★
こうして新年早々、見事に「襲名ビジネス」にのせられたわけだが、多分、七月大歌舞伎は右團次襲名でしょうから、またもやね(笑)。
あ、文楽も4月は呂太夫襲名披露やった…。まあ、どちらさんも景気がよろしいことで何より、何より(笑)。などと考えながら、芝翫夫人の三田寛子に見送られて(別に小生を見送るために立っていたわけではないww)家路についたという次第。
(平成29年1月9日 道頓堀大阪松竹座)
在大阪香港永久居民。
頑張らなくていい日々を模索して生きています。
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