【上方芸能な日々 文楽】うめだ文楽2016

人形浄瑠璃文楽
UMEDA BUNRAKU 2016

昨年開催されて、初心者からベテランまで大好評だった「UMEDA BUNRAKU」が、今年も無事に(笑)開催された。

poster_14「UMEDA BUNRAKU」は、在阪民放テレビ局5局(MBS、ABC、TVO、KTV、YTV)が足並みそろえて文楽を応援してゆこうという催し。こうして2回目が開催されたのは、その意志にはまだ揺らぎがないという証とみてよいだろう…かな?

昨年は2月の初旬開催だったが、今年は春の本公演を1週間後に控えた3月25日~27日で全5公演。それぞれに文楽を愛する著名人がトークコーナーに出演。各局アナウンサーが司会進行を務める。ゲストの顔触れは多彩で、「え?この人も文楽ファンやったの?」って人もいる。その顔触れは、

笹岡隆甫(華道「未生流笹岡」家元)、兵動大樹(漫才師・矢野兵動)、桂南光(落語家)、コシノヒロコ(ファッションデザイナー)、わかぎゑふ(劇作家・演出家)、三浦しをん(作家)

行きやすい時間帯の公演を選ぶもよし、ゲストで選ぶもよし。これなら初心者も門をくぐりやすい。

小生は公演中日の3月26日第1部(11時開演)に。ゲストは南光師。南光ちゃん目当てだったわけでない。実は、南光ちゃんには内緒だが(笑)、間違ってこの時間をクリックしてしまったのだ。

自身も浄瑠璃を英大夫はんからお稽古してもらっている南光師。会場のナレッジシアターが、「文楽公演にちょうどよい規模」だと言う。これは小生も激しく同感。可動式の客席で、このような演劇系の配置なら381席と同所の資料にある。まことにもって理想的。およそ900席の国立文楽劇場、施設としては申し分ないが、こと文楽公演に関しては、「文楽劇場」と名乗る割には、文楽公演にふさわしいとは思えない。要するに「広すぎる」のである。特に客席の奥行。歌舞伎公演時でさえ、非常に遠く感じるのだから、人形が動く文楽ならなおさらのこと。「(文楽劇場設計者の)黒川紀章に文句言いたいわ!」と南光師。2階席のあった懐かしの朝日座のことも触れてくれたが、朝日座も大概な作りやったけどね(笑)。あの頃の閑散とした客席を思うと、今はもう、大盛況よ。小生なんかは「ようここまでお客増やしたもんや!」と感心しているが、元市長のナントカいう御仁はそれでもあかんと言う。ほな、どないせえと言うねんってところだ、実際正味の話が。そんなネタもちらほらさせながら、「わたしが石油王なら(大スポンサーになって)…」を枕詞にして、何度も笑いを取っていた南光師。テレビ大阪の庄野アナウンサーもそれによく食らいついてましたな(笑)。上出来であります。

床を務める小住大夫と寛太郎も登場。あと40年ほどすると、間違いなくこの二人で切場をやる時代が来ていると思う。もちろん小生は生きていない(泣)。昨年のこの会では、希大夫が壺坂を1時間、疲労困憊の色を隠せないながらも、たっぷりと語りぬいた。一方の寛太郎は、そんな希の疲労感なんか知ったこっちゃないとばかりに、バシバシと実に気持ちよさげに撥を当てていた。すごいのよ、この子は。だけどそれは同年代の太夫泣かせとも言えるかもな。今年の小住も寛太郎の「餌食」になってしまうのか、はたまた太夫の逆襲あるのか? 聴きどころだな、これは。

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『傾城阿波の鳴門』
「十郎兵衛住家の段」

この公演のよい点の一つが、「小割」が紹介されていること。会場ロビーにも500円と割高なパンフにも紹介されているので、主遣いの人形遣いだけでなく、頭巾で顔が隠れている左遣い、足遣いもだれかというのがわかる。三人遣いなのだから、本当はこうあるべきだと思うのだが、本公演ではこれはお客には知らされない。

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★太夫:小住大夫、三味線:寛太郎
★口上:玉彦
★人形
お弓:幸助(左・紋吉<前半>、蓑次<後半> 足・玉路)
おつる:蓑之(左・蓑次<前>、紋吉<後> 足・玉延)
十郎兵衛:玉勢(左・玉誉 足・玉彦)
★ツケ、幕柝:蓑之 ★介錯:あき手
★囃子:望月太明藏社中

注目点その1は、上述の通り、手が良く回る寛太郎に小住大夫はどこまで対応できるか? その2は、力強い立役を遣うことがもっぱらの幸助が珍しく女形を遣う この二点かな、小生的には。

果たして、小住は語りぬいた。約1時間の長丁場を一人でやりぬいた。声が抜けてしまったり裏返ったりした場面は何度かあったけど、そこはまだ若さゆえのこと。気にする必要はないだろう。今はこの長丁場を「太夫泣かせ」の弾き手、寛太郎相手にやりきったことの充実感を味わってほしい。これを3日間5公演やったというのは、かけがえのない貴重な経験であり、今後の大きな糧になったのは間違いない。常々、「太夫チームの奮闘を!」と言ってきた小生としては、非常に頼もしく感じた次第。そして、寛太郎も弾ききった。これも拍手喝さいもの。こうして彼はまたしても、大物への階段を上って行く。やっぱり末恐ろしい若き三味線弾き。

人形では、やっぱり幸助のお弓に注目してしまう。まあ仕方ない。なにせ「立役専科」みたいな存在だから女形を遣うのなんて場面は、そうそう観られるものでもない。どんな具合かなと興味を持つのが当たり前。師匠で実父の玉幸師も立役のイメージが強かったけど、たまに女形も遣ってはったことを思うと、幅を広げるためにも、どんどんやってもらいたいところ。「興味を持って」観たけど、やっぱりそこはこのメンバーの中では年齢、キャリアともにダントツの存在。何の違和感もなくやっていた。拍子抜けするくらいに(笑)。

蓑之のおつるは、もう彼もこれくらいの役は余裕で見せてほしいところだし、彼は2014年11月の「十色会」でもおつるを遣っているので大丈夫でしょう(笑)。もうねえ、若い芸人さんたち、息子をハラハラしながら見るような目で観てしまう。実際にはアタシは子供がいませんし、向こうさんにすれば「はぁ? このおっさん、何言うとんねん?」ってなところだろうけど(笑)。

この話、何回か観てるけど、普通は「順礼歌の段」としてお弓とおつるの「母と名乗られぬ」再会から再びの別れ、でも娘愛おしさに後を追ってゆくお弓…。というところで幕引きというケースが多かったと思うし、実際、小生は最後の悲劇的なシーンを観た記憶がない…。いや、多分、忘却の彼方なのだと思うが(笑)。

改めてその悲劇的結末を観て、「やっぱり、この話はここまでやってしまうのは、『ととさんの名は~、かかさんの名は~』のおつるちゃんがあんまりにも可哀そうすぎるよなぁ」と、落ち込んでしまうのだ。トークで南光師も「ルンルン気分で家に帰れない話」と言っていたが、そういうことだわな。そこは芸の伝承と兼ね合いで難しいところかな。

そんなこんなで、今年も大盛況だった「うめだ文楽」。普段は民放はほぼ見ない小生だけど、来年も開催できるよう、よろしく頼みますわな、在阪民放5局のみなさん!(笑)。

(平成28年3月26日 グランフロント大阪 ナレッジシアター)




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