【睇戲】『荒らし』(港題=老笠)<日本初上映>

第11回大阪アジアン映画祭
特集企画《Special Focus on Hong Kong 2016》

『荒らし』
(港題=老笠)<日本初上映>

いよいよ最終日となった第11回大阪アジアン映画祭。この日も3本観るよ!

その1本目。香港映画『荒らし』は、非常に期待度が高い。早くからFBを見ており、「これは楽しみ!」とこの日を待っていた。なんだかんだ言っても、香港映画は何でもありの娯楽性の高さがウリ。かと言って、旧正月映画のような、オールスターキャスト勢ぞろい!だけでは、いくら娯楽性に富んでいてもつまらない。その点、『荒らし』は主演者に派手なスーパースターはないが、なんかワクワク感がある。何だろう、この久々のワクワク感は…。

「睇戲」と書いて「たいへい」。広東語で、映画を見ること。

10436169_1046327712101136_8672857969645117068_n港題 『老笠』
英題 『Robbery』
邦題
 『荒らし』

現地公開年 2015年
製作地 香港
言語 広東語
香港電影分級制度本片屬於第Ⅲ級,18歲以上人士收看(=18禁)

評価 ★★★★★(★5つで満点 ☆は0.5点)

導演(監督):火火(ファイヤー・リー)

領銜主演
(主演):曾國祥(デレク・ツァン)、J. Arie(雷琛瑜)、林雪(ラム・シュー)、姜皓文(フィリップ・キョン)、馮淬帆(スタンリー・フォン)

演出(出演):崔碧珈(アニタ・チュイ)、郭偉亮(エリック・コック)、周祉君(アーロン・チョウ)、馬志威(エドワード・マー)

特別演出(特別出演):蘆恵光(ケン・ロー)

いやもう、期待していた以上の映画で大満足!
香港で公開される前に、大阪アジアン映画祭をはじめ、世界各地の映画祭で上映。いずれの地でも大絶賛された『荒らし』は、いよいよ3月29日、第40回香港電影節で香港初上映の日を迎える。4月2日上映分ともにチケットは早々に完売、全場満座。その後、ようやく香港での一般公開が封切られるという上手い運びである。

かくの如く、とにかく公開前からの「煽り」が上手かった。小生が早い段階で「お!」と目を付けたのは、何も香港映画をいつも気に留めているからではなかった。何のきっかけかすっかり失念したが、知らずのうちにこの作品のFBへと導かれていった。そしてまずポスターに一目惚れ。当時はまさに「煽り」の第一段階で、こんなド派手な図案でなく、まさに「公開前」という雰囲気のもの。

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主要な役者陣の表情は、作品の舞台となるコンビニのシャッターに隠れたままで、「一般公開までのお楽しみ!」ってところが中々憎い。ほどなく、大阪アジアン映画祭で上映決定となり、「こりゃ、絶対見逃せん!」とチケット前売り日の購入順位上位作品として星マーク点けたのは言うまでもないこと。

キャストの中に”FENG TSUI FAN”すなわち馮淬帆(スタンリー・フォン)の名を発見した時には、思わず「嘩~!(ぅわぁぁぁ!)」って香港人みたいな叫びをしてしまった(笑)。馮淬帆、なんと懐かしい俳優だろうか。80年代、日本でもヒットした『五福星』『大福星』『七福星』といった「福星シリーズ」に欠かせない顔。また周潤發が主演の『精裝追女仔(=男たちのバッカ野郎)』も忘れがたい。2000年代に入って台湾に活動拠点を移したこともあり、香港映画の出演頻度も少なくなったが、今回、『荒らし』のために香港での撮影に参加してくれたと、上映後の舞台挨拶で火火(ファイヤー・リー)が嬉しそうに語っていた。

12802988_963367827074620_9122183735845169872_nそしてこの次に公開されたポスターで、いよいよ映画の主演メンバー(領銜主演)の表情と中文名が明らかになる。これだけ見れば、ハードボイルドな作品と思ってしまうが、どうもFBのタイムラインを眺めているとそうでもないような気もする。と言うよりは、これはかなり笑えるんじゃないかと。よく見れば香港電影分級制度本片屬於第Ⅲ級,18歲以上人士收看のマークも入っており、ということはエロもあるのか?と思うのは男子の悲しき習性だが(笑)、実際にはやっぱり相当危ない流血シーンもあるということだろう(エロもあったけどねww)。
アジアン映画祭で使用されていたポスターは、最初に掲載した派手派手しいポスターだが、実は香港特区政府筋から色々と指摘が入ったらしく、了承が下りていなかった段階のもの。現在香港で掲出されているのはかなりトーンダウンしてるが、政府筋とは話はついたということかな?

こんな感じで盛り上げるだけ盛り上げた以上は、楽しくなけりゃ、拙ブログでこき下ろしてやる!と思っていたが(笑)、こんな楽しく、切なく、可笑しく、恐ろしい映画は久しく観ることがなかった。

一応、主演は曾國祥(デレク・ツァン)なのだけど、お客の観ようによってそれぞれ主役は変わる。曾國祥を主役として観れば、そのような物語になるし、林雪が主役だと思って観るとそうなるし、馮淬帆しかり、J. Arieしかり。その点について、「24時間営業でごく小さいい空間であるコンビニは、まさに香港そのもの。老人問題、役立たずの若者の増加、警察も市民から見放されていたり。香港人は今、満足していないということを表現したかった」とファイヤー・リー監督は言う。

小生は、馮淬帆(スタンリー・フォン)を主役として観ていたから、「老人vs役立たずの若者」という図式が当てはまるかな。3日前に同所で上映された『私たちが飛べる日』で来阪していた游學修 (ネオ・ヤウ)が自身のFBでこの映画を観た感想を的確に記している。このブログみたいに長ったらしくないのがいい(笑)。

「你細個個陣,劉華叫華仔,到你依家由哥哥俾人叫叔叔,華仔仲係華仔。我哋嘅香港就好似娛樂圈咁,一線繼續係一線,茄喱啡一世都係茄喱啡。」 這個世代之爭,就係曾國祥對馮粹凡,(…以下省略)

これは馮淬帆演じるコンビニ強盗の老人が、曾國祥演じるアルバイト店員に凄むシーンのことだと思われる。

「お前は子供の時誰のファンだった?」「劉徳華だ」「劉徳華をお前は何て呼んでいた?」「華仔」「今、劉徳華をお前は何と呼ぶ?」「華仔…」「だろう?お前はクソガキだった。そして今は役立たずだ。でも劉徳華は30年前も今も華仔だ」

これを游學修は、馮淬帆と曾國祥の「世代之爭=世代間闘争」とした。小生もこのシーンをそう思った。「いいね~、馮淬帆!さすがだね~、馮淬帆!よっ、千両役者!」と拍手したくなったほどだ。

プロデューサーの鄭振邦(ポール・チェン)は、「その30年前、すでに私は馮淬帆が出演していた『大福星』などでスタッフとしてやっていました」と笑う。

右から、主役の曾國祥(デレク・ツァン)、プロデューサーの鄭振邦(ポール・チェン)、火火(ファイヤー・リー)監督。このあと、3人からサインももらい、大満足の『荒らし』であった!

すっかり香港映画の顔となった林雪についてファイヤー・リー監督は「とても好きな役者。三枚目、殺人犯、ずる賢いヤツ、この3点を演じられる役者は彼しかいないと、出演依頼した」と言う。俺もそう思う。

さて、その火火監督だが、その「火火」という名前の由来については、「元々は役者。李家榮という名前だったが、映画の脚本を書くにあたってペンネームをどうするかとなって、榮の字に火が二つ並んでるから火火にしろって言われたから」とのことだ。繁体字の香港ならではの洒落である。

鮮血が飛び散り、銃弾でえげつない殺され方したり、エロあり、最後には爆発の末、みんなゾンビになってしまったりと、「無茶苦茶でござりまするがな」な内容だが、それこそが香港映画の魅力。こういうのが乱造されるのは好ましくないが、年に2本くらいはこんなのが観たい!

映画も「三級片」なら予告編も「三級片」(笑)!

(映画祭出品作品につき、甘口評、辛口評は割愛)

《老笠 Robbery》三級版預告片|4月14日 歡迎光臨

(平成28年3月13日 ABCホール)



 


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