【睇戲】『欠けてる一族』(台題=缼角一族)<日本初上映>

第11回大阪アジアン映画祭
《台湾:電影ルネッサンス2016》

『欠けてる一族』
(台題=缼角一族)<日本初上映>

例年は日程及び時間的都合、そして何よりも財政的事情(涙)により、観たいけど涙を呑んでスルーしてきた台湾作品の数々だが、やっぱり後で後悔することしきり…。そこで日程も時間も財政も思い切って都合をつけて、6作品中4作品を観ることにした台湾映画。観れなかった2作品のうち一本は即完売、もう一本はやっぱり時間がどうしても合わなかったってことで、いずれその機会に巡り合えれば幸いということに。そしていよいよ台湾作品最後の一本となったのが、この『欠けてる一族』。とにかくポスターがきれいなので、きっといい作品に違いないと、相変わらずの見た目第一印象重視の軽い電影迷(映画ファン)である(笑)。
で、この日は3本観るわけだが、果たして気力体力を維持できるのかどうか。自分との闘いの一日となりそうだ…。

「睇戲」と書いて「たいへい」。広東語で、映画を見ること。

550988d6b0e69台題 『缼角一族』
英題
 『The Missing Piece』
邦題
 『欠けてる一族』

現地公開年 2015年
製作地 台湾
言語 標準中国語、台湾語

評価 ★★★★☆(★5つで満点 ☆は0.5点)

導演(監督): 江豐宏(ジャン・フォンホン)

領銜主演(主演):陳嘉樺(ELLA)、林柏宏(オースティン・リン)、蔡振南(ツァイ・シンナン)、林美照(リン・メイジャオ)、應蔚民(イン・ウェイミン)

客串演員(ゲスト出演):周詠軒(チョウ・ヨンシュアン)、劉璟瑩(アビー・リュウ)

台湾。またの名を「美麗島」と言う。その名の通り、非常に風光明媚な国である。台湾島の南部を北回帰線が通り、全島亜熱帯に属するが、かつて新高山と呼ばれていた玉山などの高地では降雪や積雪も見られるなど、様々な顔を見せる。特に、それほど日本人の訪問者が多くない東部の太平洋岸は、熱帯の雰囲気を漂わせ、高鐵(台湾新幹線)が走る台湾海峡側の西部とは、まったく趣を異にする。この『欠けてる一族』では、東部海岸の抜けるような青空と吸い込まれるような真っ青な太平洋の雄大な風景を存分に見ることができる。ポスターのイメージからも、そんな大自然を背景に繰り広げられるストーリーが想像に難くない。監督の江豐宏は、こうした台湾の美しさを堪能してほしいと言う。

大阪アジアン映画祭のサイトではこの作品のストーリーを次のように解説している。

質問されると5秒間硬直してしまう青年が、その“病気”を克服するためヒッチハイクの旅に出る。いろいろな人に出会って、人生の“欠けたピース”を探す青春ヒューマンドラマ。

確かに「ヒューマンドラマ」と言うにふさわしい内容だった。「号泣してハンカチが手放せない」というものではなく、笑いも散りばめられてはいるが、ここというところでじわーっと目じりの湿り気が増加していくのがわかる、そんな展開。多分これなら、たとえ日本語字幕がなくても、あるいは英語字幕がなくても万人がこの湿り気を感じることができるだろう。良質な映画、人の「情」というものはそういう具合に簡単に国境を越えるものなのだというのが、よくわかる。

主役の林柏宏(オースティン・リン)が、その「質問されると5秒間硬直してしまう青年」を好演した。歌にドラマに映画にと引っ張りだこの売れっ子だが、役作りをきっちりこなした跡が見受けられて好感が持てる。そう遠くない将来、台湾を代表する俳優の一人になっているのは間違いないと思う。陳嘉樺(ELLA)が演じた、もう一人の主人公、檳榔売り娘に「笑いなさいよ、笑うとかわいいんだから!」って言われるシーンが印象深い。そのときの林柏宏の笑顔が、屏東の素晴らしい風景に溶け込んで、見事なシーンを生み出していたと思う。

監督作としては、2009年のヒット作『初戀風暴』以来の2作目となる江豐宏だが、この作品が大きなステップになるのでは…。そんな予感もした、とても良い作品だった。改めて台湾映画の底力を感じた。そして台湾映画には美しい自然という大きな武器があるということも、再確認した。

(映画祭出品作に付き、甘口評、辛口評は割愛)

缺角一族 The missing piece 主預告

(東日本大震災から5年目の日 ABCホール)



 


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