【ひとり旅なら大和路/ようこそお参り】久米寺、そして…。

「調べてから行くべきでしたね…」
小生がFBでこの日の出来事をぼやいたら、ある御仁から届いたコメントである。
もうねえ、まさにおっしゃる通りでぐうの音も出ません。
ま、それについてはあとでさらっと触れるけど…。

神武天皇ゆかりの橿原神宮にはこれまで数えきれないくらい詣でているが、近鉄南大阪線の線路を挟んで、ほぼお隣の「久米寺」は一度も参詣したことがない。その存在は以前より知っているし、橿原神宮参拝の度に「久米寺も行っておかねば」と思いつつ、既に齢は50をとっくに越えてしまった。今回、「あるきっかけ」で初めてのお参りが実現した。

IMG_2310阿部野橋駅から橿原神宮前駅へは、吉野線直通吉野行き特急で40分弱。この日乗車したのは、16600系。「喫煙車がいいですか?」と聞かれたのでもちろん喫煙車でと答えたのだが、実は、喫煙室があるのだが、座席では吸えないという仕組みで、こいつはやられたという感じ。まあ、40分弱なら辛抱するか…。ちなみに、帰りも同じ車両、編成に乗車したので、吉野から折り返してきたものに偶然乗ったということだろう。

IMG_2324橿原神宮駅から橿原神宮へ向かうと、「久米寺0.2㎞」という道路標識がある。その方向へ曲がり、少しだけ大阪方面へ線路沿いに歩くと、この石柱が立つ踏切がある。この踏切の向こうが目指す久米寺。ちょうど吉野行き「さくらライナー」26000系が橿原神宮前駅へ入線するところ。
この石碑に記されているように、また寺の名称から察せられるように、久米寺はかの「久米仙人」ゆかりの古刹である。久米仙人の伝説は『扶桑略記』、『七大寺巡礼私記』、『今昔物語集(巻十二本朝仏法部)』、さらには『徒然草』でも見られるので、比較的世に知れた話である。

久米仙人は仙人だから空中を自由に飛ぶことができるんだが、川で洗濯していた美女のふくらはぎに目がくらみ墜落したというなかなか憎めない仙人である。
本来は、なんて言うと久米仙人に失礼だが(笑)、もともとここは久米部(くめべ)の武人の住んだ地と言われ、推古天皇2年の時に聖徳太子の弟だった「来目皇子(くめのおうじ)」の創建と伝えらる。来目皇子が幼少の頃眼病を患い両目を失明するも、聖徳太子のお告げにより薬師如来に祈願したところ平癒に至る。これにより皇子は、自らを来目皇子と称するようになったのだとか。

DSC01101こんな具合に、踏切を渡ればそこが久米寺。

DSC01086仙人には申し訳ないが、アップで御真影を撮影するのをうっかり忘れたので、なんとか写っていた写真を思いっきりトリミングして、ようやくお姿が確認できるまでにした。このお足もとにお賽銭置いてきたのにね、俺。何をしてるやら。失礼しました(笑)。
その久米仙人のお足もとには、多くの絵馬も。言い伝えの通り、川で洗濯する女人を眺めてにっこりな久米仙人の絵馬もあって楽しい。

DSC01084DSC01083こちらは本堂。 寛文3年(1663)の建立。本尊は「天得薬師瑠璃光如来坐像(てんとくやくしるりこうにょらいざぞう)」である。
また、久米寺は真言宗の寺院であることから、空海との縁もまた深いものがある。空海が大日経を感得し密教の妙義に接した後、入唐して密教を伝授され真言宗の開祖となる。次の写真が大師堂。

DSC01088空海が大日経を感得したと言うくらいだから、当然、大日如来も鎮座。

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DSC01085鐘楼も雰囲気がある。多分、本堂と同時期の建立かな~と。

境内の一角には巨石群が。かつてここに五重塔あるいは多宝塔がが建っていたのかは不明だが、これだけの大きな礎である。相当大きな建造物があったのは間違いない。巨石群のそばには「大塔礎石」の立て札があるだけで説明がないのがなんとも残念だが、これくらい不親切と言うかそっけない方が逆に想像力を掻き立てられるので、それはそれで楽しい。

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DSC01094現在の多宝塔は、大塔礎石の上に建っていたであろう塔が焼失したため、万治2年(1659)に京都・仁和寺より移築されたというもの。重要文化財である。奈良の主要寺院の塔、たとえば当麻寺だの薬師寺だの法隆寺だのに比べれば、非常にコンパクトではあるけど、そのフォルムは優美な桃山様式で、白鳳文化とは違った美しさの重要文化財である。本尊は大日如来像。

大塔礎石の前には山門があって、阿吽の仁王像が構えているらしいのだが、鉄おたの悲しい習性で、踏切側の入り口ばかりに気を取られて、その存在をすっかり見逃していたというこの悲劇(笑)。まあそこは、小学生が遠足で行くくらい近場なので、またの機会にということで…。

久米寺は「あじさい寺」としても有名。いや、そっちの方が有名だろう。花を愛する老若男女があじさいの季節には多く訪れる。たしかに近鉄電車に乗れば、駅貼ポスターや車内吊り広告をよく目にする。残念ながら、あまり興味はないので拙ブログで紹介することは恐らくないだろう。

◇◆◇

さて。
冒頭で「調べてから行くべきでしたね…」って言われたことを紹介したけど。
実はこの日の本来の目的は橿原神宮参拝であった。来年は神武天皇が崩御されてから2600年目にあたることから、4月3日に橿原神宮では「神武天皇二千六百年大祭」が斎行される。その記念事業のひとつとして、「御本殿特別参拝」が10月5日から始まった(11月30日まで)。御本殿へ神職以外が立ち入りを許されたことはこれまで一度もなく、今後もこのような機会はないだろうとのことなので、「これは見逃すな!」と駆けつけたわけだが…。

運悪く、この日は公開なし。どうやら旧明治節の文化の日ということで、「明治祭」が執り行われていたらしい。そりゃ、一般公開はできますまい…。日を改めて、ってことに。

すっかり香港人気質なもんで、やたらとこういうポカが多いんで困ってしまう(笑)。近鉄電車内に中吊り広告出てるのに確認しないんだな、これが。毎日乗ってるのに、ねぇ(笑)。

IMG_2320七五三の季節。お子達が喜ぶようにと、ついに橿原神宮にもゆるキャラが登場!えらい時代になったもんやと、神武天皇も感慨深いものがおありになるのでは…。

DSC01073紅葉にはまだ早いが、深田池はすでに晩秋の雰囲気が。

1970年まで現在の橿原神宮前駅は「橿原神宮駅」駅だったことや、かつて久米寺駅が存在したことなど、いろいろ鉄おた話もあるけど、それはいずれまた…。

(平成27年文化の日 久米寺、橿原神宮)


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