【睇戲】『天空からの招待状』(台題=看見台灣)

『天空からの招待状』
(台題=看見台灣)

昨年の「大阪アジアン映画祭」で見逃した『空から見た台湾』が、『天空からの招待状』というタイトルで昨年末から全国で公開されている。

簡単に言えば、台湾を空撮したドキュメントだが、「こんなに素晴らしい台湾へ、どうぞいらっしゃい!」というタッチのものではなく、台湾という国に、そこに住む人たちに「ま、こういうことだけど、さあ、どうする?」という問いを投げかける「社会派作品」にもなっている。いや、どちらかと言うと、その要素の方が色濃いだろう。台湾のアカデミー賞と言うべき(こういう言い方は好きじゃないが、わかりやすいから使った)「第50回金馬獎」で、最優秀ドキュメンタリー賞を受賞したのもうなづける内容だった。

「睇戲」と書いて「たいへい」。広東語で、映画を見ること。

o5jK9Qn台題 『看見台灣』
英題
 『Beyond Beauty – TAIWAN FROM ABOVE』
邦題 『天空からの招待状』
制作年 2013年
制作地 台湾
言語 標準中国語、日本語吹き替え

評価 ★★★★★(★5つで満点 ☆は0.5点)

導演(監督):齊柏林(チー・ポーリン)
監制(制作総指揮):侯孝賢(ホウ・シャオシェン)

日本語版ナレーション:西島秀俊

前半は、雄大な台湾の大自然を空撮した場面が続く。観光で訪れる台北などの大都市とは全く違う、多分これが台湾の素顔なのだろうというような、息を飲む美しい空撮に引き込まれてゆく。

「わ~、きれい!」とうっとりしていたら、ナレーションのトーンが変わり、水害の空撮場面に。この水害を単なる「自然災害」で片づけてしまうことはできない、というメッセージだ。以降は「我欲」の犠牲になってゆく、母なる大地・台湾の悲鳴を訴える空撮が続く。信じられないような工場排水で、本来の色を失い生命を寄せ付けなくなってしまった河川や海。乱開発の結果、大きく切り崩されて、似つかわしくない高層マンションが立ち並ぶようになってしまった山の頂。そのツケとして起きる大規模な土砂災害などなど…。

天然資源に乏しく、四方を海に囲まれた山国、島国である台湾の実情は、実は日本の現実でもあるのだ。

監督の齊柏林は、台湾政府の「國道新建工程局」職員として、20年以上航空写真を撮り続けてきた。だからこそ、感じたものをドキュメンタリー映画と言う形で世に訴えたかったのだろう。その意気は、強く受け取った。もちろん、台湾国内でもエンタメ作品に匹敵する興行成績を上げている。そこんとこが、日本とはかなり「映画」に対する観客の態度が違うな…。

悲鳴を上げる大地の姿にため息をついてしまう一方で、収穫の笑顔の素晴らしさ、玉山山頂で歌う原住民とその歌声には感動し、心が震える思いだった。そこには、愛すべき台湾の姿が凝縮されていた。

西島秀俊の多くを語らず、画面に語らせるようなトーンのナレーションが全体を貫くが、それこそがドキュメンタリー映画の本筋と言うものなのだろう。言葉の一つ一つが、胸に響く。できれば、オリジナルのナレーションと中文字幕でも観てみたい。

香港在住中、香港に疲れたら一時帰国よりも、日帰りでもいいからと週末や連休に台湾へ飛んでいた。無理やり仕事を作って出張も度々。そんな「香港よりも好きな台湾」が、ますます好きになった。我愛臺灣!

《看見台灣》正式預告

(平成27年1月7日 シネマート心斎橋)



 


7件のコメント

  1. な、な、なあんと吳念真がナレーション担当じゃありまへんか~♪ 侯孝賢も監修ということで興味がつのる映画であります。

    1. そうなんですよ~。日本公開では、たしか1館くらいしかオリジナルのナレーションで上映していないみたいです。そちらでは公開されないんでしょうか?

  2. 公開されるとすればシネマテーク類似の上映館でしょうから見られる機会はぐっと減ります。しかもドイツの文化習慣として外国映画はほとんどが吹き替えされてしまうのです。DVDが販売されるのを待ちましょうかね凹凸(丸山光三)

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