【睇戲】『るろうに剣心 京都大火編』

るろうに剣心 京都大火編

久々に邦画を観たでござるよ。『ノルウェーの森』以来かな?多分。

「おろ? お前は広東語映画専門ではないのか?」

と、尋ねられるかもわからんが、まあ、たまには邦画も観させてくれ、ってか、俺の勝手でしょ、何を観ようと(笑)。

「睇戲」と書いて「たいへい」。広東語で、映画を見ること。

poster2邦題『るろうに剣心 京都大火編』
英題
RUROUNI KENSHIN Kyoto Inferno』 

公開年:2014年8月1日
制作:日本(ワーナー・ブラザース映画)
言語:日本語

評価:★★★★

監督:大友啓史
脚本藤井清美、大友啓史
原作: 和月伸宏『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-』
アクション監督:谷垣健治

主な出演: 佐藤健、武井咲、伊勢谷友介、青木崇高、蒼井優、神木隆之介、土屋太鳳、田中泯、宮沢和史、滝藤賢一、三浦涼介、丸山智己、高橋メアリージュン、福山雅治、江口洋介、藤原竜也

今回観たのは、邦画では今夏最大のヒットとなっている(らしい)『るろうに剣心 京都大火編』

いや~、おもしろかったねえ。

「子供だましのチャンバラもどきでおもしろいなんて、お主も相当、映画を観る目がないのぉ」

なんて言うアナタ、まあ、いっぺん観てごらんよ。続編で間もなく封切りとなる『るろうに剣心 伝説の最期編』を明日にでも観たくなること、請け合いでござるよ。

『るろうに剣心』は、香港在住中に何気に日曜の夕方とか深夜とかに、あっちのテレビで広東語吹き替え(もしかしたら中文字幕&オリジナル音声)で見ていた。中文タイトルは『浪客劍心』。うまくつけたネーミングやなあと感心したもんだ。日本では味のある中文題を、「はぁ?なんでこんなタイトルにするの?」みたいにしてしまうことが多いから、余計にそう感じた。

で、その『浪客劍心』だけど、そんなに熱心に見ていたわけでなく、どちらかと言えば「BGV」的な扱いだったから、たいして筋書きを知っているわけでなく、もちろん原作も読んだこともなく、実写版第一弾も観ていないから、ほぼ真っ白な状態でのこの日の鑑賞。まあ、緋村剣心くらいは知っていたけど、その程度だ。あ、それとアニメの主題歌。JUDY AND MARYの『そばかす』。

じゃ今回、なぜ観たのか?

主演の佐藤健が好きなわけでもなく、敵の藤原竜也のファンでもなく、武井咲や蒼井優にぞっこんなワケでもなく、最後の最後でおいしいとこもっていく福山雅治が目当てでもない。

大友啓史監督が撮影にあたって、「日本の『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ』を一緒に撮らないか」と声をかけたのが、『るろうに』シリーズのアクション監督である谷垣健治。あえて彼を「谷垣くん」と呼ぼう。理由は後で書くとして、その谷垣くんが絶大な評価を得ている『るろうに』のアクションシーンが観たかったのだ。

ちなみに、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ』は、香港題『黄飛鴻』。清朝末期に実在したカンフーマスター・黄飛鴻を題材に、過去に何度も映画化されてきたが、最も有名なのが李連杰(ジェット・リー)が主役を演じた『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ』シリーズ。日本でもヒットした痛快カンフーアクション。小生も大好きなシリーズで、劇中で見せる李連杰ら出演陣のアクションがただならぬ迫力で、「ほぇ~」とよだれを垂らしながら画面にくぎ付けになってしまう。

さて。果たして、谷垣くんの仕事っぷりは、予想をはるかに上回るもので、幕末から明治初期が舞台であるにもかかわらず、いい意味で完全に「香港映画」していたのだ。なるほど『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ』だ、これは。

成龍(ジャッキー・チェン)や甄子丹(ドニー・イェン)らが信頼を寄せる谷垣くんがアクション監督やってる以上、ハズレは絶対ない。恐らく『るろうに』を従来の時代劇での立ち回りや型で撮ってしまおうとすると、こんなヒット作にはならなかったろうし、そもそもそれ自体が無理な話だし、ヒットメーカーである大友監督がそんな発想をするはずもない。谷垣健治に白羽の矢が立ったのは、当然すぎるほどの成り行きだったと言える。

色んな場面に香港映画マニアは「ふふふ」とほくそ笑みながら、あるいは「おお!そこまでやっちゃいますか!!」と驚きながら、映像をずっと追いかけるわけだが、意外にも小生が印象深かったのは、剣心と志々雄が率いる「十本刀」の一人、宗次郎が対決するシーン。宗次郎役の神木隆之介自身のアイデアも取り入れられたというこの対決場面は、そのアイデアの成果もあってか、剣心同様に観客の心も「イラっ」となったんじゃないか? 少なくとも小生はそうだった。って言うか、こいつ終始「イラっ」と来る存在だったけど(笑)。ま、そのへんはこれから観る人のために詳細は避けるけど。

さて、このアクション監督の谷垣くんがいかなる人物かについては、『産経ニュースWEST』で戸津井康之記者が、谷垣くん自身のコメントも交えて記事を書いておられるのでそっちをご参照いただくとして。
「帰れ」と言われたジャッキー・チェンから認められた日本人アクション監督が繰り広げる『るろうに剣心』前例なき斬新な殺陣

1995年、小生は香港へ。同地での生活の第一歩となった職場に、彼はよく現れていた。だから、時々はおしゃべりしたり冗談も交わしたりしていた。その頃から、彼のことを「谷垣くん」とか「健ちゃん」とか呼んでいたと記憶する。

3年後、小生はその職場を去ることになった。あ、円満退社ですからね(笑)。ただ、社内にはいろんな問題が噴出していて、とても「送別会」という空気ではなかった。香港人スタッフは「送別会」やってくれたけど、まあ連中のことだから明けても暮れても何から何まで「飲茶」で済ませる。だから印象に残ってない(笑)。

会社を辞めてしばらくは、その後の中国奥地探検の準備などモラトリアム期間を過ごしていた小生を、彼と日本人向け不動産会社に勤務していた青年とその妹が、カラオケに誘ってくれた。本人たちはすっかり忘れているに違いないが、「Leslieさんの送別会として」と催してくれたのが、とても嬉しかった。長かった香港生活で、トップ3に入る嬉しい出来事だった。今も忘れていない。

そんな思い出のある谷垣くん、いやいや、谷垣健治アクション監督、ますますのご活躍、期待しています!

さて映画の話に戻ると…。

好感が持てたと言うか、「お、時代考証ちゃんとしてるな」と思ったのは、芝居小屋のシーン。観客が拍手をしていないのがよかった。あの時代はまだ、西洋の観劇スタイルが持ち込まれてなかっただろうから、芝居小屋や相撲場などで拍手は起きないのが当たり前。「わーわ!」という歓声や役者の名前を呼び掛けたりする、まさに「大向こうからの掛け声」なんかで、観客は芝居の評価を役者に伝えていた時代。極端に言うと「拍手という動作を知らなかった」時代なのだ。

そしてそして。「香港映画」してたのは、アクションシーンだけじゃなかった。「それは、お前のこじつけだ!」と言われるかもしれないが、ラストシーンの福山雅治の現れ方(あ、言っちゃったww)、『阿飛正傳(=欲望の翼)』のラストで、唐突に梁朝偉(トニー・レオン)が現れるあの場面と同じものを感じたな…。ってか、そのものを感じた。もっとも、『欲望の翼』はそれっきりだったが、『るろうに』はまもなくその続きが公開される。楽しみでござるよ。

「るろうに剣心 京都大火編」5分間バージョン

(平成26年9月5日 あべのアポロシネマ)


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