【睇戲】『狂舞派』(港題=狂舞派)<関西地区初上映>

第9回大阪アジアン映画祭
『狂舞派』(港題=狂舞派)

「睇戲」と書いて「たいへい」。広東語で、映画を見ること。

この日、2本目。
ABCホールから大急ぎで、次の会場となる梅田スカイビルの「シネ・リーブル梅田」へGo!

「狂舞派」だって。英語タイトル「The Way We Dance」だとよ。

「へッ!」ってな具合で、悪いけど最初はナメテてかかっていた。「まあ、とりあえず香港モノだから観ておこうかな」程度だった。

出演者も監督も知らないメンバーばかりだし、香港映画とHip Hop Danceというのが、まったくピンとこないし、「でも、これ、福岡国際映画祭で去年、観客賞受賞してるんやよな。なんかあるんやろな…」と、若干の期待も持ちながら観ていたら…。あらららら、俺、最後には涙ぐんでたよ…。単純だやな、大概おれも(笑)。

そんなナメてかかっていた「狂舞派」だが、実は香港では大変な評価なのである。

さきごろ発表された「第33屆香港電影金像獎」の各賞6項目で「狂舞派」がノミネートされているのである。

最佳電影:狂舞派(最優秀作品賞)
最佳女主角:顏卓靈(最優優秀主演女優賞)
最佳新演員:蔡瀚億(最優秀新人賞)
最佳電影原創配樂:戴偉、阿佛(最優秀映画音楽賞)
最佳電影原創歌曲:狂舞吧(曲:戴偉、詞:陳心遙、唱:DoughBoy、黃宇希)(最優秀オリジナルソング賞)
新晉導演獎:黃修平(新人監督賞)

いや~、大したもんだ、立派立派!!

ストーリーそのものは、青春映画である。「今どきの」学園ドラマとでも言うべきか。でも、こういうバリバリの青春モノって、意外にも香港映画では少ない。その点がまず斬新だった。そして彼ら彼女らが、その青春をかけ、自らの生きざまの象徴としているのが、ダンスというのも、これまた「今どき」の香港青春群像とでも言いますか。

たとえば『武士道シックスティーン』シリーズで、ボロボロ泣いちゃうような叔叔(おじちゃん)だから、こういうのストーリーには弱いのよね(笑)。

dance01港題 『狂舞派』
英題 The Way We Dance

邦題 『狂舞派』
製作年 2013年
製作地 香港
言語 広東語

評価 ★★★☆(★5つで満点 ☆は0.5点)

導演(監督): 黃修平(アダム・ウォン)

領銜主演(出演):顏卓靈(チェリー・ガン)、蔡瀚億(ベビージョン・チョイ)、楊樂文(ロックマン・ヨン)、范穎兒(ジャニス・ファン)、Tommy “Guns” Ly
特別演出(特別出演):黃貫中(ポール・ウォン)
友情演出(友情出演):葉蘊儀(グロリア・イップ)、陳榮照、林盛斌、糖兄・糖妹

豆腐屋の娘で名前が「花(ファー)」だから、あだ名も当然「豆腐花」。あ、豆腐花って中華スイーツの一種で、文字通り豆腐のスイーツ。アタシは結構「嫌い」ですョ(笑)。

その豆腐花、見事大学に合格し、女子大生ライフを送るにあたって、あこがれのダンサー「デイヴ」がいるダンスチーム「BombA」にめでたく入部。で、もひとつめでたく、ダンスコンテストで優勝して、恋も成就…。と、いかないのは当然のことで、そこから始まるあれやこれやに「今どきの香港の若者」って、こんな感じなんかな~、それにしても香港の若い衆もおしゃれになったもんよな、なんてのを思いながら映画を観つつ、若い監督だけに、アラ探ししてやろうと意地悪な気持ちも忘れずに(笑)。

【甘口評】
とにかく、出てくる子たちがみんな超級のダンスを見せてくれるのには感心する。カンフー映画では当たり前の「ワイヤーワーク」なんぞは一切ない。恋の物語は上述の如く「お決まり」のパターンだし、恋のライバルの意地悪っぷりも「お決まり」だし、とにかく青春モノによくある「イーーーーーーッ」となる王道の展開が非常に素直。一方でそんな青春モノの「お決まり」のパターンを変にオブラートに包むようなことをせず、ダンスでもって真っ向から見せている点に好感が持てた。主役の顏卓靈(チェリー・ガン)や、ダンスチームメートの劉敬雯(リディア・ラウ)は、とてもベタだけど、この手の作品なら、むしろこういう子がおもしろい。刑務所の教官で、実は太極拳の大師匠でもあるBeyondのポールがいい味出していた。太極拳クラブの変人・柒良の蔡瀚億(ベビージョン・チョイ)も印象深い演技。ダンス、恋愛、学園を扱う中で、終盤に障害者としての生きざまにスポットが当たったのは、唐突に感じはしたけど、実際に右足が義足ながら素晴らしいダンスを見せてくれるTommy “Guns” Lyを見ると、そこに文句をつけるのも愚というものかもしれない。

【辛口評】
実は言い出したらキリがない(笑)。「で、ウォン監督、何をしたかったの?」みたいな。それでも小生が最後にウルウルしてしまったのは、多分、いや間違いなく、売れっ子の俳優ではないのに、ここまでの演技やダンスを見せてくれたキャストの頑張りに対するウルウルだったのだろう。そこは、「キャストに助けられたね、監督さん」という気がする。で、「キャストの頑張り」に観客がウルウルしているようでは、まだまだですぜ、ウォンさん、ちゃんと映画の中身でウルウルさせないと…。

「手作り感」というものがあるけど、それは「駄作」という評価と表裏一体で、今回は高いレベルのダンスや、キャストの頑張り、熱意に助けられて、その「手作り感」が高評価を得ることになったと思われるが、今後のウォン監督に期待するのは、たとえば今回特別出演した葉蘊儀(グロリア・イップ)のようなトップクラスの出演陣を揃えた作品で、その「手作り感」がどこまで通用するかを見せてほしいということ。そういう映画を香港に根付かせてほしい。
キャストの中で小生が知っているのは、ポールとグロリア・イップだけ。それでも「香港電影金像獎」の6項目でノミネートされたという事実。香港の観客や映画人から高い評価を受けたことには間違いない。長編はこれが3作目。若い監督の成長を見て行きたい。

《狂舞派》終極預告片 8月8日 香港主場 全城鼓舞(香港現地最終予告版)

(平成26年3月13日 シネ・リーブル梅田にて)



 


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