【上方芸能な日々 落語】吉坊ノ会<26.Feb.2011>*旧ブログ

かつて米朝一門に桂吉朝という大好きな噺家さんがおられまして。
残念ながら、本当に残念ながら6年前の晩秋に世を去られました。
吉朝師匠は7人の門弟を残して旅立たれたわけですが、それぞれが、上方落語界の明日を担うべく精進されており、ファンとしても嬉しく、そしてこの人たちを応援してゆきたいと思うのであります。
その弟子さんたちの中で、小生の落語を聴くリズムにもっともハマるのが、2月26日、山本能楽堂で会を開いた吉坊君であります。

吉坊ノ会
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「世界一、山本能楽堂が似合う噺家」と、小生が勝手に言ってる吉坊君。
確かに、この会場で彼の落語を聴く機会が非常に多い。
というか、ここのところ、山本能楽堂へ行くのは彼の落語が目的となってる。能・狂言のみなさん、すんまへん。
ほいで、何か知らん、どういうわけかめっさ暑い時か、めっさ寒い時にあたってしまうという…。

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大阪のど真ん中、徳井町というところにある山本能楽堂

その吉坊君、今回は上方落語の大ネタの一つ「たちきり」をかけるという。これは見逃せませんわな。

<ネタ帳>
1.餅屋問答 桂吉の丞
2.初音の鼓 桂吉坊
3.たちきり 吉坊
中入
4.天狗裁き 桂千朝
5.小倉船 吉坊

久々に見た吉の丞君は、相変わらず勢いがあってよろしいな。ネタの選択もよく、「ニン」に合っているんでしょうな、開口一番の役目をきっちり果たしてました。
ゲスト出演の千朝師匠。このお師匠はんの会はいつもお着物姿のお上品な女性が目立ちます。師匠の落語もお上品というか、下衆なネタでも上品に仕上げられるので、聴いててとても心地がいいんです。
亡き吉朝師匠とは同期とかで、お二人のコンビでの「色もの芸」も懐かしく思い出されます。
大作「たちきり」をかけるということで、吉坊君もこのお師匠はんに、見ててもらいたかったんでしょう。なんかそういう背景を思うと、ウルウルしてしまいます…。

そして吉坊ご本人。
iPhoneを買ったはよいが何度か壊してしまい…という長いけど笑いの絶えないマクラから入ったのが「初音の鼓」。実は初めて聴きました。あまり上方でかからないネタかと思うのですが、そこは小生の経験不足なのかもわかりませんけど。軽快なネタです。

「たちきり」は大熱演でした。引き込まれました。
通常、「立ち切れ線香」と言われてますが、今回「たちきり」となっており、「これは何か趣向が?」などと思ってましたが、話自体には何ら違いはありませんでした。なぜに「たちきり」かについては、また吉坊君がこのネタをかけるときに、自分で確認してもらえればと思います。お楽しみということでw。

このネタは笑いの場面は全くと言っていいほどなく、わははと笑ってオチがつくという落とし方でもなく、敢えて言うなら、上方の「情」たっぷりの芸を浄瑠璃やなく落語で聴かせる、というネタでして、静寂が客席を覆い、高座に客の目が一気に集中したりもする、ほんに珍しいネタでありますが、こういう話が大作として、今の世も観客に愛されるあたり、大阪人も捨てたもんやないな~などと思ったり。
まだこの後、東京での会もあるので多くは書きませんが、小生は彼の引出の無尽蔵さとともに、ひとつ階段を上ったというプチ達成感を見てとりました。どうですか?ご本人は?

最後の「小倉船」は、ハメモノ(囃子)ふんだんでかつ、ネタが奇想天外に転がってゆくSF冒険活劇っぽさもあるネタです。芝居の所作なども入り、「古典芸能オタク」な彼には持って来いのネタ。
こういうネタはやってる本人が一番楽しんでたりするもんで(笑)。

午後6時半開演でサゲ囃子鳴ったのが9時半を裕に回ってました。
これを昼の部もやってたわけで、本人は出し切ったってところでしょうか。
いやいや、もっとやりなはれ。残りわずかではあるけど、まだ20代でっせ。

小生は最前列かぶりつきで見ようと、玉砂利が目の前のお座布の席に坐しましたが、椅子にしたらよかったかもと(笑)。足、冷えて…。
3月4日には東京でも「吉坊ノ会」がありますので、ぜひ行ってみてください。


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