【上方芸能な日々 歌舞伎】仁左衛門、闇の世界*旧ブログ

上方歌舞伎界の顔である片岡仁左衛門丈(いまだに孝夫さんと言ってしまう)が座頭を勤める、大阪松竹座の片岡仁左衛門 昼夜の仇討 二月大歌舞伎」夜の部を観てきました。

片岡仁左衛門 昼夜の仇討
二月大歌舞伎
松竹座
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宣伝物の写真、左側の仁左衛門丈が「盟三五大切」の主役、薩摩源五兵衛。この殺気と色気が3時間半、観客を圧倒し続けたのであります。小生は一番安い席(笑)で3階でしたが、そこで観ていてさえ、その殺気、色気はビシバシ伝わってきたので、かぶりつきのご夫人方は大変なことだったでしょう。
盟三五大切(かみかけて さんご たいせつ)
■初演 文政8(1825)年9月 江戸中村座
■昭和51年8月 国立小劇場で復活公演
■作 四世鶴屋南北
■主な配役
薩摩源五兵衛 仁左衛門
芸者小万 芝雀
笹野屋三五郎 愛之助
芸者菊野 松也
若党六七八右衛門 薪車
船頭お先の伊之助 猿弥
家主くり廻しの弥助 彌十郎
富森助右衛門 段四郎

『東海道四谷怪談』の続編、また『仮名手本忠臣蔵』の外伝としてさらには、『五大力恋緘』の大流行による「五大力」ブームの影響も受けながら著された四世鶴屋南北の作品で、初演以来186年目にして初の上方上演。
赤穂浪士の一人、不破数右衛門(=薩摩源五兵衛)が巻き起こす悲劇を描き、五人斬りなどの陰惨な場面を、南北独特の歌舞伎ならではの様式美で表す。仁左衛門が勤める源五兵衛の葛藤と悪の魅力が眼目となる、趣向に満ちた南北の傑作。

とにかく仁左衛門丈に圧倒されました、より一層惚れました
上述の通り、殺気、色気がもうそれはそれは大変なものでして、さらに妖気まで漂わせる、そんな役者は仁左衛門丈が当代一ではないですかね。
芸者小万にメロメロなダメ浪人が、復讐の鬼と化してゆく様は、満員の観客の目を釘付けに。

ナマ首転がる陰惨な五人切の場面は、それを「陰惨な」で片付けさせることは決してない。これが松嶋屋の、歌舞伎の、日本文化の様式美というものか、殺しすら美しい。時間の流れ、心の乱れなどをその動きから見てとることができるんですな…。美しい。
もう随分昔ですが、テレビ時代劇でこのお方が『眠狂四郎』やってて、めっちゃ好きやったんですよね。実にきれいな妖しさがねえ。思えばそれ以来、仁左衛門丈の妖気に魅かれているわけです。

仁左衛門丈とともに、この日お目当てがラブリン愛之助丈。
顔見世でとある御曹司(笑)の代演で見事な『外郎売』。その疲れか、いっとき体調不良が伝えられていましたが、がらっぱちな三五郎と武士らしい潔い最期となる三五郎、性根たっぷりの舞台。すっかり元気になったようで、なにより。

さらにお目当ては薪車丈。 この人も、いい役者になってきたなあ。
初めてのナマ薪車は、5年前の「浪花花形歌舞伎」。このときはなんだか初々しさが先立っていたけど、今公演は源五兵衛に仕える忠義者・若党六七八右衛門を好演。

場内、お客はほぼ満員。さすが、松嶋屋の本拠地・大阪ですね。
小生がいた3階席には、大向こうから声を掛ける達人が揃い、気分をいっそう高揚させてくれます。うらやましいです、こうやって「松嶋屋っ!」だの「音羽屋っ!」だのと、ここというところで声を掛けることができるなんてね。かなりの見巧者なんでしょうね。小生も歌舞伎鑑賞歴はなんだかんだで30年を超えますが、声を掛けるなんて勇気はまったくありません…。一生できません…。へたれです…。

歌舞伎は他の商業演劇と比べ、観劇料が非常に高く、どうしても二の足を踏んでしまいますが、行けば納得、そして大満足すること請け合いです。
とくにこの演目は義太夫が入らず、基本、会話で進むのでストーリーを追うのは難しくありませんから、入門編としてもいいかもわかりませんね。ぜひ一度。
2月25日(金)まで。

話は変わりますが、仁左衛門丈を見ていて、父上の13代目片岡仁左衛門を思い出しました。失礼ながら芸のことでなく、鉄道友の会会長としての13代目を。
昭和55年のある日。それは南海平野線(軌道線)が廃止される日、鉄おたや沿線住民で満員の電車に乗り込み、平野線との別れを惜しんでられた御姿を今もはっきりと覚えています。小生、高校2年生の秋のこと…。


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