1989年の天安門事件以来、香港の民主化活動をリードしてきた民主党も、返還後はいまひとつパッとしません。世の中が中国とうまくやっていったほうが商売上、何かと都合が良いと感づいたからでしょう。市民感情としては、「原則、反共だけど、そうは言っても中央と波風立てても香港にとってはよくないからうまく渡り合って行こう」というところでしょう。
そんな社会風潮の変化についてゆけず、混迷を続けるのが民主党。長らく、創始者の李柱銘(マーチン・リー)氏が党首の座に就いていましたが、2000年に退き、後は楊森、李永達と党首は引き継がれましたが、リー氏のような求心力はなく、ここ数年は中共との向き合い方の見解の相違などで、内部の統制も乱れがちです。また、弁護士グループが立ち上げた「公民党」が最近、株をあげており、ますます存在感が薄くなっています。そんな中、週末のラジオ番組に出演したリー氏が、来年に実施される立法会議員選挙に出馬せず、引退することを示唆しました。来年、古希を迎えるに当たり、「70歳で政界にとどまるのはよくない」との理由で決意したとのこと。
これに大慌てなのが、当然、民主党。香港でナンバーワンとでも言うべき「政界大スター」の引退は、長嶋茂雄引退よりもインパクトは強く、議会第一党を堅持してきた民主党にとっては大きな痛手。ただでさえ、市民の民主党離れが進んでいるのに、ダメ押しのようにリー氏が引退してしまうことにかつてない危機を迎えています。
返還の頃、メディアのインタビューでリー氏は「リーさん、もういいよ、と言われるまで、民主活動を続ける」と語っていました。ここで言う「もういいよ」は当然、香港の民主化が実現したことを指すわけですが、返還から10年、全面的な普通選挙の導入はいつのことかわからず、香港だけの力ではなんともならない香港の政治。常に西側諸国にこの「窮状」を訴え続けたリー氏が議会から退くことで、香港の完全民主化が一歩後退したように思います。そうしたリー氏の努力も中共の前では実を結ばなかったということでしょうか。一皮向けば、筋金入りの反日人士でもある民主派を応援する気にはなれませんが、それでも香港に住まう者としては、この現実にむなしさを感じます…。
ただし、市民は民主化にそれほど期待はしていません。デモがあれば参加するけど、それは一応反共の姿勢は示しておいて、まあそれでも中共側とうまくやっていけるなら、民主化は後回しでいいか、です。西側メディアが伝えるほど深刻じゃありません、ここの人たち、そういう面ではかなりしたたかです。
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COMMENT:
AUTHOR: 丸山光三
DATE: 01/08/2007 20:35:59
はじめまして。香港は大好きな街でした。返還後足を踏み入れておりません。貴重なリポート大いに期待しております。
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COMMENT:
AUTHOR: leslieyoshi
DATE: 01/08/2007 21:32:55
>マルコおいちゃん さん
コメントありがとうございます。
つたない英語力と中国語力を駆使して、在住日本人の目で香港を観察してまいりますので、よろしくお願いします。
在大阪香港永久居民。
頑張らなくていい日々を模索して生きています。