【社民連解散】激進民主派、力尽きる

<赤いバラは社民連の党花…。寧化飛灰,不作浮塵(塵になるより灰になる)は、解散宣言文のタイトルでもあり、この日、最も言いたいことでもあった>


7月1日の回帰日(返還記念日)を目前に控えた6月29日、「民主派最後の砦」とも言うべき社會民主連線(社民連)が、正式に解散を発表した。陳寶瑩(チャン・ポーイン)主席は、強大な政治的圧力に直面し、メンバーへの影響など様々な要素を考慮した結果、解散を決断したなど、解散の理由を述べた。記者会見で陳主席は「他に道がない中での唯一の選択肢」と述べ、解散の具体的な理由や時期についてはこれ以上説明できないとした上で、後日警察に「社團註冊(団体登記)」の取り消しを報告する予定だと述べた。

解散を発表する陳寶瑩(チャン・ポーイン)主席。最初は笑顔をも交えていたが…

経済紙の『信報』が最初に伝え、それがスタートの合図かのように、各メディアが続々と「社民連解散か」と報じたのが、25日のこと。それからあっという間の正式発表だった。社民連ほどの闘争精神旺盛な集団でさえ、「強大な政治的圧力」の前には屈するしか道はなかったと言うのだから、どんなけの強大な圧力がかかったのか…。そしてその「圧力」は誰がかけてきたのか…。そこについて語るのは勘弁してほしいとまで言わしめる…。いやー、ほんと恐るべし、圧力の主…。

社民連はこの日、「寧化飛灰,不作浮塵(塵になるより灰になる)」と書かれた横断幕を掲げて記者会見を開いた。

「寧化飛灰,不作浮塵(塵になるより灰になる)」。灰の中には光と熱がある、ということらしい

解散声明で陳寶瑩主席は「社民連は設立以来、『旗幟鮮明な野党』を標榜し、一人一票による行政長官と立法会の普通選挙制度の実現を目指し、署名活動やデモ行進を呼びかけ、市民が自らの権利を積極的に主張するよう促し、様々な手段で社会保障政策の実現を目指してきた」と述べた。声明ではまた「組織は内部抗争も経験し、後には、ほぼすべての指導者が収監された」ことも指摘された。「香港も民主派系団体の解散など、大きな変化を経験しているが、社民連は依然として声を上げ続け、『最善を尽くす』姿勢を貫いている」と、現在も強い意志をもって活動していることを強調した。

こんなに大勢の記者が集まる…。ここに日本のメディはいたのだろうか。いないよな、きっと…

陳寶瑩主席は、「解散はいつ頃考え始めたか」、「具体的にどのような状況なのか」、「『強大な政治的圧力』とはどういう意味なのか」など、集まった記者たちから何度も質問された。彼女は「それ以上は説明できない」と前置きしたうえで、「(2月に)民主党が解散を宣言して以来、唯一活動を続けている民主派の政治団体であるがため、強い圧力に直面している」と述べた。彼女は2020年の「香港立法會選舉民主派初選(民主派による立法会予備選挙)=香港47人案」が原因で収監されている社民連の前主席で夫の長毛こと梁國雄に解散の決定を説明したことを明かし、長毛は解散について「打開策はないことを理解しており、党の関係者全員が無事であることを願っている」と語っていたのだとか。そっか…。長毛も「解散やむなし」との考えか…。繰り返すが、それほど「強大な政治的圧力」なのか…。

社民連は現在、銀行口座を持っていないものの、税金や債務の返済を迫られており、資金も底をついているという。さらに、社民連が「自主解散」を表明する最後の組織ではないと信じており、粘り強く活動を続けられなかったことを残念に思うと述べた。一方で、ここ数年、社民連は香港の民主化運動に貢献してきたと自負しているとも。解散を余儀なくされたことは「罪悪感」しかないが、今は他に選択肢がないと語った。

厳しい表情で会見を続けた彼女は、赤いバラを手に取り、「これは社民連の党花だ」と優しく語った。彼女は、「赤いバラは国際左派社会運動における人間の尊厳を象徴し、社民連の初志である『恐れを知らず』、『罪を恐れず』、『人間の尊厳、人間の自由、そして人権をより重視する』を明確に表している」と述べた。彼女は支援してくれた多くの香港市民に感謝し、「多くの市民が路上に設置したテーブルを訪れ、静かに支援してくれたり、サムズアップで応援してくれた。こうした静かな支援は、私たちがここ数年間、持ちこたえ続ける上で非常に重要な精神的な支えとなってきた」と感謝した。

周嘉發(ディクソン・チャウ)副主席

記者会見には、社民連の複数の幹部メンバーも出席した。周嘉發(ディクソン・チャウ)副主席と余煒彬副主席は4年前に幹部に加わった。両氏は、近年、組織が多くの困難に直面し、活動の余地が縮小していると考えている。周副主席はこれを「綱渡りのように難しい」と表現した。

かわいらしいメガネ男子だった黃浩銘(ラファエル・ウォン)も、ずいぶんとおっさんになったもんだ…

会見に臨んだ他のメンバーたちも、長年にわたる社民連への支援とボランティア仲間への感謝の意を表した。元副主席の黃浩銘(ラファエル・ウォン)は、現在服役中の創設メンバー、長毛・梁國雄に対し、特に感謝の意を表した。「長毛さんは、人への接し方、尋問への対応、法廷での弁護など、今私が知っていることの全てを教えてくれた」と述べた。そして「長毛さんが健康で、いつの日にか自由に集会を行えるようになることを願っている」と語った。

香港47人案による刑期を終え、先月末に釈放された元沙田區區議会議員で民間人權陣線(民陣)代表でもあった岑子杰(ジミー・シャム)は、まず「何と言っていいのか分からない。まだ怖くて不安だ」と答えた。続けて社民連結党当時、香港で初めて性的マイノリティへの理解促進を党綱領に掲げた政党であり、性的マイノリティと共に歩んできたと語った。長年社民連に所属してきたことについて、「大変誇りに思う。最後の道のりを社民連とともに歩んでいきたい」と述べた。

固い握手を交わす岑子杰(ジミー・シャム)㊧と曾健成(阿牛)。阿牛のこれほどの穏やかな表情を見たことがない…。しかし、年取ったなぁ…

創設メンバーの一人で、元東區區議員の阿牛(牛クン)こと曾健成は、10年以上にわたり香港の興亡を目の当たりにしてきたと述べた。香港は返還28年目を迎え、「統治から繁栄まで、完全な静寂が広がっている」と述べた。ここ数年は国際女性デーでさえ、申請しても街頭での活動ができないと付け加えた。「過去数10年、香港の産業は繁栄し、経済の衰退を招くことはなかったが、今では店は閉まり、デモや行進も行われていない。まるで深海のように静かで、音も何もない」と現在の香港をたとえた。

陳寶瑩主席は、アメリカの作家、ジャック・ロンドンの詩の一節「塵になるより灰となろう。燃え盛る炎のなかで光輝きながら燃え尽きるほうが、朽ち木と共に黙して塵となり果てるよりもよい」を引用して会見を締めくくった。「灰は塵のようにとても小さく、私たちの家と同じだ。しかし、灰の中には光と熱がある」と述べ、「誰もが灰の粒となり、どんなに小さくても光を放ち続けてほしい」と、市民に呼び掛けた。

「最後の」シュプレヒコールを上げる社民連主要メンバー

社民連の解散発表に関して、非建制中間派シンクタンク「民主思路(Path of Democracy)」の代表で、昨年解散した泛民主派政党「公民党」創設者だった湯家驊行政会議員が『明報』のインタビューに次のように答えた。「社民連の解散によって、民主派の生存圏が狭まるとは考えていない。しかしながら、社民連がこれまで議会で展開してきた「闘争文化」が、いかなる目標も達成できないことは証明された」と述べた。また、公民党、民主党、社民連など「伝統民主派」の離脱は、(民主化デモと言う名の暴力破壊行為が横行した)2019年以前の野党イデオロギーがもはや価値を失ったことを意味するとの考えを示した。

まあねえ、そういうことだわな。さっすが湯先生、そして『明報』。うまいことまとめはる。

以下の表は、「国安法」施行以降、解散した民主派系政党、団体一覧である。大小さまざまだが、代表者がきちんと清算手続きを踏んでいる政党もあれば、代表者は国安法施行前夜に、さっさと海外へトンズラした政党、団体もある。そういう意味では、今回の社民連の解散は、支持者や市民に対して最大限の誠意を見せたと言える。まずは19年間、お疲れさんでした。色々楽しませてもらったよ…。

しっかしまあ、映画「九龍城寨」関係、色々出てますなあ。

 


コメントを残す