<珍しく夜の文楽劇場。桜の枝はまだ寒々としている。冬はこれからが本番だが、次の公演では『義経千本桜』の「ほぼ通し上演」となる。満開の桜が出迎えてくれることだろう>
例によりまして、初芝居は文楽劇場で。
まずは、新春ムードあふれる文楽劇場の点描から。
立派な門松が、正月の陽を浴びてまことに目出度い。もっとも、正月と言っても、すでに残り福の11日。よって、十日戎の宝恵駕行列は昨日終わってるから、駕篭の展示もない。COVID-19禍で中止が続いていた宝恵駕行列は、今年4年ぶりに再開された。この行列、今宮戎神社が行ってると思われがちだが、実は宝恵駕行列振興会が行っており、「宝恵駕に乗って今宮戎神社へ参拝する」という民間の行事であり、今宮戎神社が行う神事ではない。
正面玄関には大きな三段重ねの鏡餅。そして今年の干支「巳」の書。『仮名手本忠臣蔵』上演にちなみ、赤穂大石神社飯尾義明宮司の揮毫。大石神社は明治天皇の宣旨を契機として明治33年神社創立が公許せられ、大正元年11月、四十七義士命を祀る神社としてご鎮座となる。ご祭神は大石内蔵助良雄以下四十七義士命と中折の烈士萱野三平命を主神とし、浅野長直・長友・長矩の三代の城主と、その後の藩主森家の先祖で本能寺の変に散った森蘭丸ら七代の武将を合祀している。『仮名手本忠臣蔵』で言うなら、大星由良助と四十七士、そして早野勘平が主神ということになるか。
劇場の目の前の黒門市場と大阪市南水産組合から寄贈された「にらみ鯛」。これもCOVID-19の関係で一旦途絶えていたが、5年ぶりに復活。え?その間も展示はされていたよな…。で、昨年の写真を見たら、おお、なるほど「寄贈~」の部分が無い! こういう細かいところを、やたらチェックしたがる性格(笑)。友達少ないはずや(笑)。
これもおなじみ、舞台の上の大凧とでっかいにらみ鯛。大凧には先ほどの赤穂大石神社宮司さんの「巳」の文字がそのまま転写されている。ご見物衆のほぼ全員が写真を撮る。インスタやXでもよく見かける。皆さん、納得いく絵柄を探してうろうろしながら撮影しておられるが、小生は面倒なので、自分の席から座ったままで撮影。一度座ったら、立つのが面倒なんよ。
上演前の床には鏡餅。最初の演目が「並びもの」の場合は、ぐるっと回転して見台やお座布の準備が始まるが、そうでない場合は開演ぎりぎりまでこの状態。そしてぐるっと回ると、太夫と三味線さんが並んでいるという塩梅。
床の真上、御簾にも注連縄。いわゆる「簾内」の場合、太夫&三味線はこの中で演奏するわけで、大事な場所。誰が座ってるか、時々透けて見える(笑)。
さて、こちらは正月とは関係ないのだが、二階ロビーには三匹の狐のツメ人形が展示されていた。今公演第三部の『本朝廿四孝』では、八重垣姫の周りで狐たちが躍動するという幕切れとなるが、それに関連してということらしい。狐の出てくる演目は多い。説明書きによれば、展示されている3匹は『雪狐々姿湖』に登場する狐たちとのこと。白いのが「白蘭尼(びゃくらんに)」で主人公・白百合の祖母。灰色が年寄り狐の「コン蔵」。黄色いのが白百合の弟で「右コン(うこん)」。右耳が折れていることからそう呼ばれている。双子の「左コン(さこん)」は左耳が折れている。『雪狐々姿湖』、夏休み公演の定番だが、しばらく観ていないような…。「もふもふ」がちょっとしたブームの今、やるべき演目だと思いますがね…。
(令和7年1月11日 国立文楽劇場)
越路師匠が出てはるくらいなんでかなり前の映像ですが、それゆえに価値もまたあるというもんです。ええ時代の文楽を味わってみてはどうでしょう。 |
在大阪香港永久居民。
頑張らなくていい日々を模索して生きています。