【睇戲】贖夢<日本プレミア上映>

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2022年に始まり、これまで世界20都市以上で開催されてきた「香港映画祭 Making Waves – Navigators of Hong Kong Cinema」 は香港特區政府文創産業發展處(CCIDAHK)の財政支援を受け、香港国際映画祭協会が主催する巡回プログラム。昨年までは、日本の開催地は東京だけだったが、今年は大阪と福岡でも開催されることになった。来年のことはわからないが、大阪は大盛況だったので、恒例化していただきたい。

今年の目玉は何と言っても『九龍城寨之圍城(邦:トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦)』だが、残念なことに東京のみの上映。来年の全国公開が待ち遠しい。もう一つの目玉は『破・地獄(邦:ラスト・ダンス)』。黄子華(ダヨ・ウォン)、許冠文(マイケル・ホイ)の新旧コメディアンのダブル主演の話題作。こちらは大阪でも上映があるものの、平日の真昼間とあっては涙を呑むしかない。全国公開されることを祈るしかない。

そんな状況ながら、観たいと思っていた作品2作と、とりあえず香港映画だから観る、みたいなもう1本、都合3作品を2日間で鑑賞した。まずはその「とりあえず…」の作品から。

「睇戲」と書いて「たいへい」。広東語で、映画を見ること。

贖夢 邦題:贖罪の悪夢 <日本プレミア上映>

港題『贖夢』
英題『Peg O’ My Heart』 邦題『贖罪の悪夢』
公開年:2024年 製作地 香港
言語:広東語 上映時間:97分
評価 ★☆(★5つで満点 ☆は0.5点)

導演(監督):張家輝(ニック・チョン)
編劇(脚本):張家輝、凌偉駿(ライアン・ワイ)
監製(製作):鍾珍(クラウディ・ジャン)
攝影(撮影):關智耀(ジェイソン・クワン)
配樂(音楽):陳光榮(コンフォート・チャン)

領銜主演(主演):張家輝、陳法拉(ファラ・チャン)、劉俊謙(テレンス・ラウ)
主演(出演):袁富華(ベン・ユエン)、朱晨麗(レベッカ・チュウ)、李凱賢(ジュリアス・ブライアン・シスウォジョ)、袁綺雯(イエム・ユエン)
特別演出(特別出演):許恩怡(ナタリー・スー)

《作品概要》

精神科医の文思豪(=マン 演:劉俊謙/テレンス・ラウ)のもとにやってくる患者は、自身の不安やトラウマからくる悪夢に苛まれていた。患者の一人、不眠症で事故を起こしたタクシー運転手の沈卓仁(=チョイ 演:張家輝/ニック・チョン)をカウンセリングしたマンは、チョイの悪夢は、金融危機時代、友を裏切った罪悪感によるものだと分析する。“怖い夢”を視覚化したショッキングな映像の数々が強烈な印象を残すスリラー。俳優として数多くの香港映画に出演するニック・チョン監督・主演作。<引用:「香港映画祭 Making Waves – Navigators of Hong Kong Cinema」公式サイト

香港特区政府が出資する電影發展基金の「電影製作融資計劃」からHK$900万の融資を受けて製作された作品。おなじみ「首部劇情電影計劃」の一連である。

絶賛売り出し中というか、引っ張りだこの劉俊謙(テレンス・ラウ)が主演の一人ということで、期待もしたが…

評価の「★☆」がすべてを語っている。お察しください(笑)。★は監督と主演で奮闘した張家輝(ニック・チョン)へのもの。それがなかったら、拙ブログ【睇戲】始まって以来の☆一つになるところだった。今年4月30日にイタリアの「ウーディネ極東映画祭」と韓国の「富川国際ファンタスティック映画祭」で上映された以外、香港現地でも公開されていない、というのがすべてを物語っている、そんな作品。完全に「映画祭狙い」な作品って、時にあるもんやけど、それにしてもなぁ…。

最初は、このちょっとキ●ガイなタクシー運転手が張家輝だとは気づかず、「誰?この俳優。なんか怪奇ムードのある渋い俳優やね」なんて長閑に観ていたんだが(笑)。まあ、それほどに役に入り込んではいたよな。熱演と言うか怪演。

この日のゲスト、李凱賢(ジュリアス・ブライアン・シスウォジョ)とは友人だったが、金融危機時代に彼を裏切ってしまう…。そもそも、タクシー運転手の沈卓仁はバリバリの証券アナリストだったが、金融危機と友人を裏切ったことが彼と妻の紀慧玲(演:陳法拉/ファラ・チャン)を精神的に追い詰めてしまい、以来、統合失調症を患ってしまっているようだ。旦那の沈卓仁も悪夢に悩まされる。

沈卓仁の精神状態に興味を持った文思豪は、彼の過去の経歴にまで踏み込んでゆく

で、陳法拉もこれまた怪演で、「あなた、よくこの役を引き受けたね」と驚く役どころである。バブリーな時代に住んでいた広い庭のある高級戸建て住宅から、古いアパートメントの一室への転落人生。ただ、汚部屋、ゴミ屋敷と化した部屋にも、かつてのバブリーな生活の一端が垣間見えるのが悲しい…。

香港映画は久方ぶりかな、陳法拉。役者魂を感じさせる「瘋婦=狂った女」を演じた

ちなみにだ、銀縁眼鏡に高そうなスーツをビシッと着込んでいた、証券アナリスト当時のタクシー運転手・沈卓仁の回顧シーンで、初めて「あ、こいつは張家輝だったのか!」と気づいた次第で、かなりのボンヤリぶりを発揮する小生(笑)。TVBのドラマでもこういう役が多かったような…。ええ者が悪者かわからんような役(笑)。

怪演と言えば、劉俊謙(テレンス・ラウ)演じる精神科医、文思豪の父親を演じた袁富華(ベン・ユエン)が凄まじかった。文思豪が精神科医の道を歩んだのは、幼いころの父親による母親へのDVがトラウマとなっていることが、多分に影響している。彼もまた、悪夢に苛まれているのだ。

文思豪は医療行為を逸脱する程、患者のプライベートにまで入り込んで治療する傾向がある。徹底的に根本原因を突き詰めるタイプなんだろうけど、「いい加減にしろ」と、病院から注意され、その都度、同僚がかばってくれるが、同僚も「もうこれで最後だから」みたいな感じ。

そんな文思豪の患者の一人の女子中学生(演:許恩怡/ナタリー・スー)。この子の夢もまた恐ろしい。これはもはや「地獄図絵」そのもの。こんな怖い夢、絶対見たくないし、やはり夢のために精神がぶっ壊れてしまうだろう。

怖い夢のシーンの撮影を頑張った許恩怡。トラウマにならないことを祈る!

そう言えば、「四代天王」の中のおひとりさんが、「他人の夢に入り込む技でカウンセリングする」という、怪しい雲散臭いカウンセラーが何度か登場するんだが、出演ラインナップに名前が無いことから、いわゆる「カメオ出演」ってやつ? カメオの割には、随分登場してましたな(笑)。

意欲作だとは思うけど、もう少し整理整頓すれば、面白さもおどろおどろしさも増したと考えるのは、小生だけではないと思うが…。ま、張家輝はテレビドラマのチョイ役時代から見てるので、頑張ってほしい一人なんで、これからも観ていくけどな。

この日は、スキンヘッドで出演し、劇中では李凱賢(ジュリアス・ブライアン・シスウォジョ)が登場。以前、日本語学習のために東京にいたことがあるらしく、時折、日本語も交えながらおしゃべり。話の内容は、いつものごとく、席を立った瞬間に忘れているので、どうか他の方の鑑賞記をお読みくださいな(笑)。

(令和6年11月9日 テアトル梅田)

張家輝(ニック・チョン)では、これが好きですなぁ


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