生きてるうちに全54巻読みきれるかどうか、ちょっと怪しい「平成の大ベストセラー」としておなじみの『居眠り磐音』シリーズ。ここらでちょっと一休みということで、『読本』を読んでみた。シリーズも折り返し点ということで、ファンブック的な存在。
『「居眠り磐音江戸双紙」読本』 佐伯泰英
双葉文庫 品切れ重版未定
「ちょっと一息」的な一冊にしては、盛りだくさんの内容で充実の一冊。ファンサービスとして上々出来。
シリーズでは磐音と婚礼を挙げたばかりの、今津屋奥女中おこんだが、今津屋の番頭だった時代の由蔵とめぐり逢ったのは、14、15歳の頃。そんな幼き日のおこんが今津屋奉公に至った経緯と、今では江戸600軒の両替商を束ね、武家の経済を影で支える今津屋吉右衛門の若き日のちょいとした「火遊び」が招いた事件を描いた小編『跡継ぎ』。「おお、そうやったんか」というストーリー。ただ、磐音が出てこないと、ちょっと物足りないね(笑)。ちなみに、シリーズ中の由蔵の「老分」という、番頭の最高位の職称は、上方の商家にならったものという。上方の人間やのに、これは知りませなんだ。と、こういう「用語集」もあって便利。
その磐音が第1巻から23巻まで、どれだけの人を斬ってきたかがわかる【『居眠り磐音江戸双紙』年表】は、各巻のエピソードが散りばめれていて、「そうそう、そういうことがあった!」とあれこれ思い出しながら、読むというよりは「追っかける」。
作者の佐伯泰英が読者の質問に答えるコーナーや、佐伯泰英が「文庫書下ろし時代小説」作家に転身する経緯を語るエッセイも、面白く読んだ。
「居眠り磐音が暮らした深川・本所地図」は、使い勝手がよい。今の主要スポットも記載されているので、あちら方面に行ったときに「お、ここに金兵衛長屋があったんだ」って具合に、思わず居眠り散策してしまいそう(笑)。
そのほか、磐音シリーズにとどまらず、江戸を舞台にした時代小説を読む際の「字引」みたいな感じなので、手元に置いておきたくなる内容。
ちなみに、この一冊は<決定版>の文春文庫版にはない、双葉文庫版のオリジナル。版元も品切れなので、今となっては古書店でしか手に入らない。まあ、価格的にはブックオフの110円コーナーに、わんさかと並んでいるから、お安く手に入る(笑)。Amazonで見たら、状態のエエ中古本、1円!で出てましたわ(笑)。
(令和5年12月17日読了)
『おこん春暦 新・居眠り磐音』(文春文庫) 佐伯泰英 ¥803
(amazon.co.jp)
〝今小町〟と呼ばれ、「居眠り磐音」シリーズの中でも屈指の人気キャラクター、おこんの若き日。十四歳の江戸っ娘が、自らの道を切りひらく。
←文春文庫版で『跡継ぎ』を読むならこれで。
在大阪香港永久居民。
頑張らなくていい日々を模索して生きています。