<投票を呼び掛けるラッピングを施したトラムが中環(Central)のオフィス街を駆け抜ける ©選挙管理委員会>
第7期となる香港區議會選舉は12月10日に投票が行われた。
7月に発表のあった新しい選挙制度の下で、區議會は直接投票枠「地方選區」、間接枠の「地區委員會界別」、行政長官任命の「委任議席」、新界の鄉事委員會のスライド枠「當然議席」で構成され、合計470議席となる。地方選區(地方選挙区選挙)は「二議席一票制」を採用し、全港18区に44の区議会地域選挙区を設け、各選挙区に2議席、合計88議席が直接選挙で選出される。1人の候補者にのみ投票し、最も多くの票を獲得した2人の候補者が選出される仕組み。競馬じゃあるまいし(笑)。
この選挙に限らず、国安法施行以後の香港の選挙に、民主派あるいは反建制派が入り込む余地は全くなく、それこそ「建制派が建制派を選ぶ」、「建制派による建制派のため」の選挙ということである。まあ、市民はシラケるよな。結果、投票率は直接投票枠「區議會地方選區的選舉」で約119万人が投票し、投票率は27.54%にとどまった。せめて小生のような「親中派なんてとんでもない!民主派なんてもっとあり得ん!」と思ってるような層(これが案外と多い!)の受け皿となる政党なり候補者でもおれば、もう少しは投票率も伸びたかもしれないが、そういう人士はもともと香港では希少種なので、小生も在住中はとても困っていたのである。
大体、直接投票枠で71.2%という記録的な投票率となった前回2019年の区議会選も、これまた異常だった。吹き荒れる「暴力破壊活動」を目の当たりして、市民の多くが「反政府活動」に心酔していたからこその数字なんだが、国安法は当選した民主派を含む非建制派議員を議会から完全排除した。「騒乱の火種」は一切残さないという、特区政府と中央の徹底した方針の前には、息巻いていた連中も為す術もなかった。ま、今回の歴史に残るような低投票率は、そういう強硬姿勢の特区政府に対する市民のブーイングかもな。
低投票率のもう一つの原因は、投票用紙を発行する「電子選民登記冊系統(電子選挙人登録システム)」の障害だろう。
この不具合のため、投票所での投票は一時停止された。選挙管理委員会では急遽、紙の選挙人名簿に切り替えて、投票時間も午前0時まで1時間半延長する措置をとった。選管主席の陸啓康氏は「投票率を上げたいのか」との質問に対し、「我々は政治団体ではなく、投票率は要素ではない」と強調し、投票率を上げたいとの考えは否定し、選挙の確実な実施を目指していたと述べたが、時に声を詰まらせ3度謝罪した。選管は電子選挙人登録の失敗も含めて詳細に検討し、 3か月以内に行政長官に報告書を提出するらしい。
低投票率の原因はそれだけではない。この火は30万人を超す市民が本土へ遊びに出かけたのである。翌日は学校が休み(なぜか知らないw)ということもあって、特区政府では前日から大掛かりな娯楽イベントを催すなどして、なんとか市民を域内に留まらせようと躍起になっていたが、その甲斐もなく、市民は本土へと向かった。
入境事務處によると、前週の日曜(12月3日)よりも約5万7千人も多い30万人以上の市民が出境した。日曜日としては、今年の重陽節大型連休の10月22日の日曜日に次ぐ、過去二番目に多い出堺数だった。(↓下図参照↓)
COVID-19の規制も完全になくなり、すっかり以前の生活パターンに戻った香港。週末には大陸入りして買い物やグルメを楽しむという行動パターンも、当然ながら元に戻ったわけで、新民党の主席・葉劉淑儀(レジーナ・イップ)なんかは「大きな影響を与えた」と言う。一方で圧勝した民建連の主席・陳克勤(ゲーリー・チャン)は「低投票率の原因は様々な要素が重なった結果で、大陸に遊びに行った人が多かったということに特定されるわけでもない」と言う。
この低投票率の原因は、小生思うに、「エンタメ性の欠如」に他ならないと思う。要は「つまんない」のである。前回は暴力破壊地獄の真っ最中で、その暴力破壊集団に支持された候補者たちを当選させたらおもろいやん、建制派があいつらに負けたらおもろいやん、という明確な「エンタメ性」にあふれていたわけだが、今回は選挙制度ががらっと変わって前述の通り「建制派が建制派を選ぶ」だけなんで、なんの面白みもない。これじゃ市民は関心を示さない。政見放送や討論会だって全然面白くない。これ、次回の反省材料だな。もっと「エンタメ性」に富んだ選挙を行うべきだと思うね。あるいは、投票済みの人全員にお食事券HK$200(約3,800円)分贈呈!とか(笑)。軽く投票率60%くらいいくと思うけど(笑)。
さて、各党派の得票だが。12月12日には、179の委任議席と27の當然議席のリストを発表して、470全議席が決まった。
民主建港協進聯盟(民建連)が、直接選挙44選挙区で41議席獲得し、大勝。間接選挙で獲得した68議席と合わせ計109議席。2つの業界別で4割以上を占める。香港工會聯合會(工連会)は27議席を獲得し、新民黨(新民党)は15議席を獲得した。新民党は間接選挙で10議席を獲得したが、他の政党は間接選挙で一桁の議席にとどまり、工連会は21人を擁立しながら12人が落選。
民建連は44選挙区のうち、負けたのは観塘東南選挙区、南区東南選挙区、沙田南区の3人のみ。 民建連は間接選挙に77人を擁立し、68議席を獲得した。陳克勤主席は「44議席を獲得した直接選挙で48万6839票、得票率41.7%となり、結果は予想通り」と余裕の表情。今回の勝利について、他政党から強力にライバル視されることを懸念していないかとの問いには、「議会を独占しているからといって他党との協力をやめるつもりはない」と答えた。委任議席も含め、147議席を占める。
一方、工連会は25の直接選挙区で18議席を獲得し、合計 27 議席を獲得。間接選挙では 21 名を擁立したが12人が落選し、当選者はわずか9人と、案外振るわなかった。伝統左派(ガチの左派)の本家本元としては、苦い思いをしたことだろう。息子(民建連)が大きく育ちすぎたというところだ(笑)。委任議席は16議席で最終的には43議席で区議会第二党となる。
新民党はターゲットを中間層と知識層に絞り、直接選挙17人、間接選挙12人の計29人を擁立。ターゲット層が多い香港島8選挙区では全滅だったが、直接選挙5議席、間接選挙10議席を獲得。ほとんどが沙田区だったのは想定外だった。新葉劉淑儀主席は「我が党では区議会議員はこれまで1人だけだったが、今回、1,500%増の15議席を獲得できたのは大きな収穫。結果に非常に満足している」と、手応えを強調した。ま、前回のあの狂った選挙と比較しても、しゃーないが、この党は今後も着実に票を伸ばすんじゃないかと思う。「建制派は嫌、民主派はもっと嫌!」という層の受け皿になる可能性がある。そのためには、もっと「建制色」を薄める必要はあるけど。委任議席を含め、25議席を獲得。
新民党同様に、民建連など「伝統左派」とは一線を画す建制派政党の香港經濟民生聯盟(経民連)は、直接選挙4議席と振るわなかったが、間接選挙8議席と新設枠の委任議席10議席に救われる形で、24議席となる。「非ガチ親中派」では新民党に次ぐ勢力となる。その割に存在感薄いんよな、ここは。
なお、「非建制派」では、民主思路が委任議席で1議席を獲得。召集人の黃頴灝(アラン・ウォン)が元朗区議会議員となり、「非建制派ゼロの壁」を突破した。民主思路は2015年成立の新しい党派で、「温和民主」を標榜する中道路線。非建制派ではあるが、中央との対話を重視している。非建制派ではあっても、決して民主派でないのが好ましい。
すべての議席が揃ったことにつき、李家超行政長官は「特区政府は実力主義の原則に基づき委任区議員を任命した。地区の状況や地域のつながりなどの要素も考慮し、選挙で選出された区議員を対象に「地區治理培訓班(地区ガバナンス研修コース)」を開催する」と述べた。
選出された区議会議員は、来年1月1日に就任する。まあ、とにもかくにも、地域の民生に尽力してくれたまえ!
エレクション(選挙)はエレクションでも、こちらの映画は「黒社会」の会長選挙をめぐる血で血を洗う抗争を描く、杜琪峯(ジョニー・トー)監督らしい作品。任達華(サイモン・ヤム)、梁家輝(レオン・カーフェイ)がすごくいい!! |
在大阪香港永久居民。
頑張らなくていい日々を模索して生きています。