【睇戲】大阪アジアン映画祭(短編2編)

今年も「大阪アジアン映画祭」の季節となった。短編、長編いずれもアジア各国・地域の選りすぐりの作品51作が10日間にわたって上映される。いつものように、「世界初上映」「海外初上映」「国内初上映」などお初の作品がずらりと並ぶ。今年は4年ぶりに、作品の関係者が舞台挨拶のため、大阪入りする。ナマゆえに、時間の制約があるとは言え、監督や俳優の声を直に聞くことができるのは、いいものだ。話の内容は、外に出たらほとんど忘れてしまっているけど(笑)。

正月に香港映画『一秒拳王』を観て、「今年はいっぱい映画を観るで!」と誓ったものの、まあまあ意気込みは良いとして、実際には、なかなかそうはいかない(笑)。ということで、2本目を観るのが3月も半ばになってしまったという、いつものパターン(笑)。

まずは、例年「本数を観る!」を課題としている「短編」からスタートした。美術館で映画を観るという、初めての体験。せっかく美術館に行ったのに、映画だけ観て、肝心の「美術」は見ないという…(笑)。しかし、毎年、短編はここで上映されることが多いけど、なんでやろねぇ…。まあ、ええけど。

「睇戲」と書いて「たいへい」。広東語で、映画を見ること。

インディ・フォーラム部門
世界 英題:Sekai <アジアプレミア上映>

邦題『世界』 英題『Sekai』
公開年:2023年 製作地:日本 言語:日本語
評価:★★★(★5つで満点 ☆は0.5点)

監督:塚田万理奈

出演:涌井秋、玉井夕海、山本剛史、池田良

吃音の娘と、人生に焦りを感じている母の日常を描く。何か小さな希望を感じさせてくれるラストがいい。38分という短い時間、さらには吃音の娘と、寝たきりで言葉が発せられない祖母と言う具合に、「会話」が限られる中でのストーリーだが、映像が会話しているような空気を感じる。なかなか上手い監督だなと感じた。

《作品概要》

中学生の秋は吃音を抱えており、授業中に発言を求められるが言葉が出ない。担任とも言葉のやり取りはない。本が好きな秋は、図書館で世界地図や社会問題の本をよく借りる。ススキが実る秋の川沿いの帰り道を洋楽を聴きながら帰る。家では母親がいつもピリピリしており、寝たきりで話せないおばあちゃんがいる。おばあちゃんの隣に座り込み借りてきた本を読む秋。
ゆうみは音楽を人生にしてきた。好きで始めたはずなのに、焦りが生まれるようになっている。バイト先のバーではサラリーマンに好きな事を人生にしていてすごいと言われるが、何も言い返せない。夜の帰り道、目をつぶりながら自転車をこぐゆうみ。<引用:大阪アジアン映画祭2023 作品紹介ページ

↑↑↑予告映像と塚田万理奈監督舞台挨拶映像が、上記の作品紹介ページにリンクされています。

インディ・フォーラム部門
有了?! 邦題:できちゃった?! <海外初上映>

台題『有了?!』 英題『Daddy-To-Be』
邦題『できちゃった?!』
公開年:2022年 製作地:台湾
言語:標準中国語、台湾語
評価:★★★★★(★5つで満点 ☆は0.5点)

導演(監督):潘客印(パン・カーイン)

主演(出演):曾皓澤(ツェン・ハオザー)、嚴藝文(イェン・イーウン)、游珈瑄(ヨウ・ジャーシュアン)
特別演出(特別出演):鄭有傑(チェン・ヨウチェ)

いきなり、「今年の最高作品とちゃうの?」ってくらいの面白い映画に出会った。人生の幸福を感じる(笑)。ポスターからすでに「これは!」というものを感じ取っていた。ハズレではなかった(笑)。

《作品概要》

まもなく兵役に就くアーチュン。ある日、彼女のシャオアンから「生理が遅れている」と告げられ動揺する。妊娠検査薬でも陽性反応が出て、ますます動揺するアーチュン。しかし、幼い頃に父を亡くしているアーチュンは、「父」というものに対してピンと来ず、自分が父親になるという自覚も全くない。そんな時、事情を何も知らない母から渡された亡き父の腕時計のアラームが夜中に鳴り響いた。<引用:大阪アジアン映画祭2023 作品紹介ページ

↑↑↑予告映像が上記の作品紹介ページにリンクされています。

これほどまでに原題のタイトルと邦題のタイトルが、ばっちしと合致しているのも珍しい。もうこれ以外ないでしょ、ってところ。そう、要するに結婚前の(彼氏は結婚すべきかどうか優柔不断状態w)彼女さんに、できちゃったというハナシなんだが、彼氏は入隊数日前で、そんな時に何という事態に!ってかんじでチョチョ舞うばかり。実家で母親が営む女性下着店で家業を手伝っていても、気が気でない。彼が繰り広げる様々なドタバタに「まあ、落ち着け!」と声を掛けてやりたくなる。この彼氏、アーチュンを演じた曾皓澤(ツェン・ハオザー)という俳優が、憎めないいい演技を見せる。これは彼の「地」ではないかというくらいに。アーチュンとは、きっといい友達になれそうな気がする(笑)。

いよいよ入隊日が迫り、頭もきれいに丸めたアーチュン、彼女のシャオアン(演:游珈瑄/ヨウ・ジャーシュアン)とともに産婦人科へ。まるで終末期を迎えた人類のような冴えない表情のアーチュンがとてもいい(笑)。可哀そうではあるけど、覚悟を決めなさい!ってところなんだが、さあ、これが……。

重い十字架を背負ったまま彼は入隊するのか、はたまた、晴れ晴れとした気分で入隊するのか…。それは観てのお楽しみ、と言うところだが、こういう短編は、こうした「なんちゃら映画祭」でしか観る機会はないだろうから、今回、この作品を観よう!とチョイスした俺、ちょっと得したかな(笑)。

アーチュンの母親を演じた嚴藝文(イェン・イーウン)が、典型的な台湾のおばちゃんっぷりを発揮していて、これまた愉快。

余りの楽しさとラストの「おおお、おえーー!」で、いきなり★5つの最高評価を出してしまった(笑)。映画に娯楽を求める小生のために生まれてきてくれた映画みたいで、こういうの、大好きですわ~~、ホンマに(笑)。

(令和5年3月11日 大阪中之島美術館)





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