【立場新聞消滅】

毎年のことだが、「とにかくここまでは年内に最低でも片付けるんや!」ってところまではやって、ようやく28日中に仕事納め。そして29日から1週間の年末年始休暇に入るという小生のパターン。てなわけで、ここ2か月ほどは帰宅が23時前後だったもんで、今日は泥のように寝てしまい、目覚めは午後1時(笑)。その間に、香港はまた大きな動きがあったらしく、Twitterが騒然としている。寝ている間も世界は動いている。「おお、ついに…。」

6月に『蘋果日報(Apple Daily)』が廃刊となったとき「この媒体も今後の活動は厳しくなるだろう」と貼り付けた画像のキャプションに記したが、その日が来たというわけだ。蘋果亡き後、もっとも民主派寄りなメディアだったネットメディアの『立場新聞(Stand News)』の現・元幹部6名と関係者1名が早朝から香港警察國安處に逮捕された。蘋果のすぐ後に間髪入れずにやるのかなと思っていたが、案外ゆっくりやったなあという感じ。

捜査員に連行され『立場新聞』のオフィスへ向かう署任總編輯(編集長代行)の林紹桐容疑者=現地29日午前8時ごろ by “香港01”

今回逮捕されたのは次の7人の人士。

元立法会議員で民主派の長老の一人、呉靄儀(マーガレット・ウー)や雨傘以降、民主活動や暴力破壊活動の前線に立ってきた女人気歌手の何韻詩(デニス・ホー)、さらには元蘋果日報副社長の陳沛敏も収容先の大欖徴教所(国安法違反容疑)で逮捕された。

容疑は「串謀發布及複製煽動刊物罪=扇動的な出版物の発行を共謀した罪」。この「串謀發布及複製煽動刊物罪」は、英領香港時代に制定された「1938年煽動條例」にまでさかのぼる。この条例は、1967年の左派暴動以降は適用されることがなかったが、昨年の国安法成立後は「再利用」されるケースが急増している。

ネットメディアの『端傳媒』が解説するところでは、刑事犯罪条例第9条による「扇動的意図」には、<香港政府と香港の正義に対する憎悪を引き起こす意図>、<他人に暴力を振るうように扇動する意図>、<他人に法律に違反するよう説得する意図>が含まれまれる。また第10条は、<扇動的行為>、<煽動的文章の印刷、公開、販売、販売の申し出、配布、表示、複製、輸入およびこれらの行為の共謀>を犯罪と規定しており、初犯でも懲役2年とHK$5,000の罰金を科される可能性があるとのこと。

最近では、「港獨」組織の一つ「學生動源」召集人の鍾翰林を含む数人が国安處から「扇動的な出版物を出版する陰謀」で起訴され、11月23日の公判で罪状を認めたことで、3年7か月の懲役を言い渡されている。

回帰以前、すなわち英領植民地だった時代から法律も「50年不変」で、中国にすれば「いやいや、香港に昔からある法律をそのまま使ってるだけですやん」ってところだ。「だから文句言うなら、これを作った英国に言うてね」って話だわな。

『立場新聞』のオフィスから次々と運び出される押収されたパソコンや制作機材 by “端傳媒”

『立場新聞』はこの日午後には、即時運営停止と全職員の即時解雇を発表した。なにせおよそHK$6,100万の資産が凍結され、パソコンなどもすべて押収されたとあっては、業務なんぞ継続できるはずもない。このHK$HK$6,100万ってのは、国安法施行以降、最高の凍結額らしい。見たことある人はわかると思うが、広告なんてほとんどない。いやゼロだったかもわからない。基本的には読者からのクラウドファンディングによって運営を維持しているということだったが、「なんか怪しいな~」とは思っていた。警察も、限られた収入で出所不明の巨額の資金を擁しており、英国に支社を設立したことから外国勢力との結託を疑っていた。そう言えば、この英国支社も29日の内にさっさと店仕舞しているしなぁ…。ま、「外国勢力」の窓口だったんだろな、とはその辺の小朋友でも推測できるだろう。

最後の晩餐?を終え、オフィスに戻ってきた『立場新聞』の記者たち。しかし、みんな若いな…

『立場新聞』自体には、小生は何の思い入れもない。前身の『主場新聞』のころから目を通してはいるが、情報源としての信頼度は『蘋果日報』よりも低い。小生の勝手な分析だが、『蘋果日報』が紙媒体らしく幅広い読者層を持っていた一方で、ネットメディアの『立場新聞』は、最初から読者層は若年層中心だっだと思う。記事の傾向も民主派寄りと言うよりも、どっちか言うと、本土派の傾向が強い、すなわち香港至上主義。まあ『蘋果日報』のような「大香港主義、小中華思想」まではいかないが、ルサンチマンにあふれている点では共通していたかな。

小生的には画像がホイホイとDLできるので、いつもブログに使わせてもらっていたんで、画像供給元がひとつ消えるのは辛いなあってところ。

日が変わるころ、『立場新聞』のサイトはこうなっていた…。いきさつがどうあれ、媒体勤務の長かった小生としては、こういうのはあまり見たくないってのが正直なところ…

『蘋果日報』廃刊の後、過去記事や読者投稿を全部削除し、経営陣6人も一斉退陣するなどして、なんとか国安法下で事業を継続してはいたけど、まあ遅かれ早かれこの日は来るだろうなってことで、それが2021年も押し迫った12月29日だったと。

こうして半年の内に二つのメディアが消え去った。蘋果、立場、小生はどちらの主義主張も受け入れられないけど、こういうのは香港にとってはあまりいいことではない。そもそも、こういう事態になった背景を考えてほしい。何でもかんでも中国のせいではない。2年前のあの日々、破壊と暴力が香港の「大正義」だった日々。燃料投下し続けた「外国勢力」にとっては極めて望ましい結果だろう。これで益々中国を叩けるから、「手足諸君、ご苦労さん。後は獄中でよろしく過ごしてくれ」ってところじゃないか?うまいもんだね…。

さて、次なる標的はどこか?多分ネットメディアの『眾新聞(CitizenNews)』じゃないかなと思うが、果たして…。


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