さて、香港の新しい選挙制度だが、全人代常務委員会が3月30日、香港基本法附件一及び附件二の修正を全会一致で可決したことで、色々と様変わりすることが決定した。住民に身近なところでは、年内のどこかで実施される立法会選挙で、それを実感することになる。なんか今から楽しみだね~。
ところで、基本法にはやたらとこの「附件」という付属文書があって、なんかある度に香港政府は「附件」の解釈をめぐって、全人代に判断を求めてきたような気がするが…。要は、「ミニ憲法」とか言われてはいるけど、そこまでご大層なもんでもなく、決まってないこともいっぱいあるんやろな~、と素人というか一般の香港市民は思うわけで、そこを香港の民主派人士や西側諸国やらが「抜け穴」とか言うて突いている、そんな印象。
修正は賛成167票で通過し、習近平国家主席が主席令に署名して、さっそく翌日に31日から発効と相成る。
では、修正された行政長官選挙委員会と立法会について詳細を見てゆこう。
行政長官選挙委員会の新たな構成~香港基本法附件一の修正
修正案が可決された「香港基本法附件一」は、行政長官選挙委員会による行政長官の選出方法を定めたもので、今回、以下のように修正された。
<1> 選挙委員会委員は計1500人。以下の各界関係者で構成。(下表参照)
・第1界別:工商・金融界300人
・第2界別:専業界300人
・第3界別:低所得層・労働・宗教界など300人
・第4界別:立法会議員・地域組織代表界など300人
・第5界別:香港特区全国人民代表大会(全人代)代表・香港特区全国政協委員・全国的団体香港メンバーの代表界300人。
選挙委員会委員は香港特区の永住者でなければならない。任期は1期5年。
<2>行政長官候補は、選挙委員会委員の少なくとも188人から指名を得なければならず、かつ5つの界別でそれぞれ15人以上の指名を得なければならない。
<3>選挙委員会は、指名リストに基づき1人1票で無記名投票。750票超を獲得した候補が当選。
どうでもええねんけどな…。ややこしいねん。香港の選挙で悩ましいのが選挙委員会。いまだにようわからん。英領時代の置き土産なわけなんだが、最後の香港総督、クリス・パッテンが当時の立法局(現・立法会)における、それまでの総督任命議員を間接選挙に移行するために設置したのが始まり。当時とは随分中身は変わってしまい、今や建制派(親中派、親香港政府派)の影響力を高めるためのシステムになっている。パッテンのおっさんもとんだ置き土産残して行ったもんやな(笑)。
で、その選挙委員会には新たに愛国愛港団体、全国政協委員、全国的組織の代表が加わる。各業界別では、民主派が多かった社会福祉界、教育界、医学・衛生サービス界の議席は半減され、自ずと民主派の影響力が大幅に削減されることに。
全人代常務委員で香港の全人代代表でもある譚耀宗(タム・イウチュン)氏は、「此度の修正では、候補者資格審査委員会を設置し、区議会議員は行政長官選挙委員会に含まれないことが明記された」と言う。要は、「区議会の政治化を防ぎ、反中乱港分子が政府を麻痺させ、一国両制度を破壊するプラットホームとなることを避けられる」ということだと。
ほらな、こうなるやん。2019年の区議会選挙の時に記したけど、区議会はあくまで隣組、町会の役員さんの寄り合いみたいなもんで、ひたすらに地域への奉仕を勤める場であって、「香港の民主ガーー、自由ガーー!」を語る場ではないと。とにかく、まともじゃなかったからね、あの選挙は…。
立法会議席数拡大も、直接選挙枠は減少~香港基本法附件二の修正
一方の「香港基本法附件二」は、立法会議員の選出方法と採決プロセスを定めたもの。議席数は90議席に拡大されるも、40議席が選挙委員選出枠、30議席が職能別(業界別)選出枠、20議席が直接選挙枠となり、直選枠が15議席減ることになった。主な修正内容は以下の如し。
<1>立法会議員は1期90人、構成内容は以下の通り。(下図参照)
・選挙委員会:40人(新増枠)
・業界別団体:30人(5議席減)
・地区別直接選挙:20人(15議席減)
<2>選挙委員会から選出される議員の候補者は、10~20人の選挙委員会委員の指名が必要で、かつ各グループから2~4人の委員の指名が必要。選挙委員会は指名されたリストに基づき無記名投票を行い、獲得票の多い40人が当選する。
<3>業界別団体選挙は28グループに分けて行われ、区議会第2枠は廃止、新たに全人代・全国政協・全国的団体代表界が設けられた。労働界で3人の議員が選出される以外は、各グループから1人が選出される。
<4>地区別直接選挙では10区の選挙区が設けられ、各区で2人ずつ議員を選出。
<5>政府が提出した法案は、出席議員の過半数の票が得られれば可決。議員が提出した議案・法案、政府の法案に対する修正案は、選挙委員会選出枠、職能別選出枠、直接選挙枠のうち2つの部分の出席した議員の過半数の票が得られれば可決。
これもまた、なんともわかりにくい(笑)。能書きだけ見てても「それで?」ってところだが、上の『明報』がこしらえた図がわかりやすい。そこはさすが『明報』である。ようできた図である。つまりは、「選挙委員会枠ちゅうのんが新しくできました、これが40議席あります」「職能団体(=業界別団体)枠は、5議席減の30議席です」「一般市民による直接選出は15議席減らして20議席です」「そやけど、全体で20議席も増やしましたで」と。
我々一般の有権者の関心事は、やっぱり直選枠。これまでは「全港18区*」を5選挙区に分けての名簿式比例代表制だったものを、今度は10選挙区に分けた中選挙区制で各選挙区から2人が選出されるという形式に変わる。どういう区分をするんだろう、10選挙区って。まあそのうち発表されるんだろうけど。
「民主派排除や!」「一国両制度の崩壊や!」と、西側諸国やメディアはうるさいが、別に「民主派は立候補したらアカン!」とは一言も言ってないんだから、参戦すればよろしい。ただし「愛国者であり愛港者である」というのが最低条件にはなるが。愛国と愛港が両立してこその一国両制度。一国両制度を崩壊させようとしてるのはどっちや?って話だ。実際、うまくいけば民主派は最多で16議席確保できるという見方もあるわけで、決してゼロになるわけではない。もっとも、伝統的民主派や民主派の皮をかぶった香港独立を目論む連中が、選挙に参画するかどうかはわからないが…。
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全港18区*
日本のように●●区と住所表示はないが、1982年の区議会設置が区分の最初。「全港十八區歌謡大会」などのように日本の「全国47都道府県」的な使われ方をする場合も多い。区割り数は何度か増減があり区域の線引きも変遷があったが、現在は下記の18の区域に分けられている。
【香港島】中西區、灣仔區、東區、南區
【九龍】深水埗區、油尖旺區、九龍城區、黃大仙區 、觀塘區
【新界】 葵青區、荃灣區、屯門區、元朗區、北區、大埔區、沙田區、西貢區、離島區
祖国復帰以降、立法会選挙では、この18区を「香港島」「九龍西」「九龍東」「新界西」「新界東」の5つの選區に分け、2016年の立法会選挙ではそれぞれ、6,6,5,9,9の議席が直接選挙で選出された。新しい制度では、これが10選區となって各選區から2人ずつ選出されることになる。
在大阪香港永久居民。
頑張らなくていい日々を模索して生きています。